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1998年春以来の甲子園目指す高鍋(宮崎) 古豪復活へのキーワードは“挑戦者”

2020.02.24

 これまで計10回の甲子園出場を果たしており、プロ野球選手も12名を輩出している高鍋。今年のチームは、2018年の1年生大会で優勝を飾った実力のある選手が残っており、例年になく大きな期待を背負う中でスタートした。

 だが、最初の公式戦である宮崎県高等学校新人野球大会で初戦敗退を喫すると、続く秋季宮崎県大会も1回戦敗退。期待が大きかっただけに、敗退のショックも非常に大きなものとなった。

 秋の敗戦から、チームはどのような課題を掲げて練習に取り組んでいるのか。宮崎の古豪の冬に迫った。

秋は「個」が強すぎてチームとして戦えていなかった

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シートノックの様子

 宮崎県児湯郡高鍋町に所在する宮崎県立高鍋高等学校。卒業生の今井美樹の存在感にまず目が行くが、野球部も昭和29年に夏の甲子園に初出場を果たして以来、夏6回、春4回の計10回の甲子園出場を果たしている。

 練習を行う[stadium]MASUDAスタジアム[/stadium]は公式戦でも使用される球場で、冬には社会人野球チームもキャンプで使用する。甲子園と同じ広さであることも特徴で、公立高校の中では非常に整った練習環境と言えるだろう。

 「この2年生は、1年生の時に一年生大会を44年ぶりに優勝させてもらい、周囲の期待、OBの期待が大きい中でスタートした代です。『この学年で必ず甲子園に行くぞ』という気持ちが大きかっただけに、新人戦の初戦敗退、秋の初戦敗退は相当ショックが大きかったですね」

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主将の岩切航平

 そう語るのは、高鍋を率いる山本一夫監督だ。
 現在の2年生は、主将の岩切航平や主砲の清水翔平など能力の高い選手が揃っており、入学時から期待をしていた選手たちだった。だが、雨の中の戦いとなった、宮崎県高等学校新人野球県央大会2回戦の宮崎北戦では、打線が上手く繋がらずに守備でもミスが出てしまう。4対5で競り負けて出鼻をくじかれると、そのショックを引きずるように、秋季宮崎県大会1回戦でも都城泉ヶ丘に2対4で敗戦。

 自信を持ってスタートしたチームだっただけに、選手たちのショックは大きなものだった。

 秋の敗戦から山本監督が感じたのは、「個」が強すぎてチームとして戦えていないことだった。我こそはと意気込む選手が多く、チームとしての結束が全くできいなかったため、打線に繋がりが生まれず、士気もなかなか上がってこない状況だったのだ。

 「スローガンの一つに“挑戦者”という言葉がありますが、もう一度原点に返って泥臭く、がむしゃらに、全員野球をやっていきたいと思っています。その辺りをしっかりやれば、力自体はついてきているので、結果にも出るのではないかなと思います」

[page_break:グランドの環境整備や日常生活の声掛けで変化の兆し]

グランドの環境整備や日常生活の声掛けで変化の兆し

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岩切航平

 山本監督の助言を受け、選手たちもチームとして戦っていくことを意識していくようになった。
 主将の岩切は、これまでのチームを「個性が強すぎて上手くまとまっていなかった」と振り返り、現在は「チームで戦っていくため」の取り組みを行っていると語る。

 「特に私生活に力を入れています。野球をする以前の問題だったんじゃないかなと思い、グランドの環境整備や日常生活でしっかり声掛けを行っています。
 チームが変わってきてる感じもあり、細かいところまで気付けるようになってきて、色んな面で視野が広くなったと思います」

 またチームの士気を高めていくため、測定機材を使った取り組みも始めた。
 フリーバッティングが行われている横で、選手たちは順番にスイングスピードを測定していき、一球ごとに選手は声に出して結果を大きな声で申告していく。良い記録が出ると周りの選手も盛り上がり、結果が良くないと叱咤激励の声が飛び、練習の士気が高まるのだ。

 「ずっと測定はやっていたのですが、今年になって毎日の練習の中で行うようになりました。『マックスが出ました!』と言えば盛り上がるし、普段よりも低いとサボってんじゃないよとなり、結構盛り上がるんですよ」(山本監督)

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高鍋が使用するスイングスピード測定器

 最終的な目標はもちろん夏の甲子園だが、そのために大事なことはまず春季大会で結果を残すことだ。山本監督は、春季大会を夏甲子園出場への大きな布石にしていきたいと意気込みを語る。

 「選手にいつも話すのが、春をないがしろにすると夏は勝てないよと。夏を勝つために、まずは春を絶対勝つんだという気持ちを強く持ってやらないと夏は勝てません。夏を勝つために春も勝つということでやっています」

 また主将の岩切も、目標をしっかりと見据える。投手や打線の調子はもちろんのこと、チームワークの面でも状態を上げていき、ベストな状態で春季大会を迎えたいと力強く語った。

 「目標は県大会で優勝して九州大会に行くことです。 良い状態で春に入りたいですが、春を勝つためにはチームワークが大事です。『個』の力で勝つのではなくて、チームとして勝っていきたいと思います」

 古豪とあってオールドファンも多く、甲子園出場を待ち望む声は根強い。1998年の春以来の甲子園出場となるか注目だ。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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