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強豪校続々撃破の関東大会ベスト8の西武台(埼玉)を一変させた打撃改革【前編】

2020.01.21

 昨秋の埼玉県大会を準優勝し、関東大会では神宮大会準優勝を果たした健大高崎と善戦。9回まで同点の熱戦を演じたのは西武台だ。

 県大会では豆田泰志を擁する浦和実や、タレント揃う昌平、関東大会でも栃木1位の青藍泰斗を破るなど、快進撃を見せて、今春以降も注目が集まる実力校だ。そんな西武台の最大のストロングポイントは、10試合で66得点を記録した打撃力だ。「打ち勝つ」チームを旗印に取り組んだ西武台の打撃改革の軌跡を振り返る。

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選手たちの想いにスタイルを変えることを決めた

強豪校続々撃破の関東大会ベスト8の西武台(埼玉)を一変させた打撃改革【前編】 | 高校野球ドットコム
バッティングの順番を待つ西武台の選手たち

 取材日当日はバッティングを中心としたメニューをこなしていた西武台。選手たちにも覇気があり、雰囲気からも結果を残した強豪校というオーラを感じさせる。この雰囲気について「結果が出ていなければ、こんなことはなかったと思います。ベスト8が自信になったと思います」と監督の河野創太氏は語る。

 就任6年目となる指揮官は、練習中でも選手たちに自ら発破をかけるような声掛けや指導が目立った。選手だけではなく、指導者も一緒になって良い雰囲気を作り出しているのがすぐに分かった。しかし、「福喜多(繁尊)コーチが秋の大会中に指揮を執ってくれたのがチームに影響を与えてくれました」と河野監督は振り返る。

 河野監督は夏の大会前から秋季大会期間中まで謹慎となっており、チームの指揮を執れなかった。その間を代役として勤めたのが2018年の春からコーチとしてやってきた福喜多コーチなのだ。

 元々大学時代の先輩、後輩の関係であった河野監督と福喜多コーチ。河野監督の誘いで西武台に来たが、最初にコーチとして福喜多氏が指導してきたのがバッティングだった。
 「来た当初は守備と走塁がメインのチームでしたが、その年の秋は聖望学園さんに打てずに負けたんです。そこから『スイングの数を増やしましょう』ということで、冬場にかけて強化するようにしました」

 ただ河野監督が機動力重視目指すスタイルに合わせる形で、細かな部分までは指導をしてこなかった。しかし、夏から急遽指揮を執り、秋の大会も継続して監督をすることとなった。そこで福喜多コーチはチーム作りをする前に、選手たちにチーム方針を決めさせた。

 すると選手から返ってきたのは「打ち勝ちたい」という回答が出てきた。
 「選手たちの中ではおそらく大阪桐蔭さんや東海大相模さんのような豪快なモノだったと思うのですが、そうではないと。しっかりとした投手力をベースに、頭の準備が必要だったり、時には進塁打も必要だったり。求めるものは高いことは伝えました」

[page_break:実践の中で理想の軌道とポイントに近づいていった]

実践の中で理想の軌道とポイントに近づいていった

強豪校続々撃破の関東大会ベスト8の西武台(埼玉)を一変させた打撃改革【前編】 | 高校野球ドットコム
トレーニングをする西武台の選手たち

 それでも選手たちは「大丈夫です」と応えた。それで福喜多コーチは本格的にチームの打撃強化に着手し始めたのだ。

 新チームスタート時「個性が強い代でまとめることが重要なポイントでしたが、上手くスタートが切れた」という主将・小松大空を中心に、「打ち勝つ」野球を体現すべく、福喜多コーチと西武台の選手たちはシートバッティングなどの実戦形式を多くこなした。

 キャッチャーを務める伊澤走に練習において何を考えてきたのか聞いてみると、「自分たちはまだ力がないので、フライを打ち上げても飛ばせない。ですので、センター方向にライナーで打ち返してヒットを増やすことを大事にしました」と語る。

 では指導してきた福喜多コーチはどんなことを考えて選手たちに指導をしたのか。
 「技術面はどんどん改良しながらですが、とにかく打つポイントとバットの軌道です。エンドランの時は打つポイントをこうして欲しいとか、バットとボールの接地時間を長くできるようにレベルスイングを心がけようとかを伝えました」

 福喜多コーチとしては「感覚としては普通」だという指導で、選手たちの打撃を向上してきた。実際に、守備に自信があった横江諒も指導を受けて、「細かな部分まで指導してくれて、苦手だったバッティングでも結果が出るようになってきた」と手ごたえを感じている。

 また「元々バッティングが持ち味でしたが、福喜多コーチにさらにポイントを教わって成長することが出来た」と4番に座る松木光は感じている。

 前編はここまで。後編では福喜多コーチが技術だけではなく、選手たちの頭を整理するためにしてきた取り組みなども紹介していきます。後編もお楽しみに!⇒(後編を読む)

(文・田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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