Column

「復活を目指す兵庫の伝統校」育英(兵庫)野球部訪問【前編】

2020.01.09

 春13回、夏6回の甲子園出場経験があり、1993年夏には全国制覇を成し遂げた育英。兵庫県の高校野球を代表する名門校だったが、2005年春を最後に甲子園から遠ざかっている。それでも昨夏は2年生主体でベスト4と躍進。今後に期待を抱かせる結果となった。

 本気でセンバツを狙いに行った秋は3回戦で報徳学園に0対1で敗退。甲子園で戦うことを目標にしていたこともあり、落胆は大きかったが、下を向くわけにもいかない。20年ぶりに夏の甲子園を目指す伝統校の現在地に迫った。

「甲子園に行かないのが当たり前となってしまっている」

「復活を目指す兵庫の伝統校」育英(兵庫)野球部訪問【前編】 | 高校野球ドットコム
安田聖寛監督

 チームを率いるのは甲子園優勝時の主将だった安田聖寛監督。甲子園決勝で試合中に負傷退場して病院に搬送され、治療からベンチへ戻った直後にスクイズで劇的決勝点を奪ったのは高校野球ファンの間で語り草になっている。

 その後は明治大、デュプロで現役を続け、引退後は第一経済大(現日本経済大)、福岡第一で監督を務めた。2012年春に母校に復帰し、同年夏の大会後から監督に就任している。就任当初は2年連続で夏の兵庫大会初戦敗退という苦しい時期だった。安田監督は当時をこう振り返る。

「甲子園から遠ざかっていたので、どの大会でもまずはベスト8に顔を出せるようにという形でスタートしていきました。捕ること、打つこともそうですけど、野球に取り組む姿勢や学校生活も雑だったので、そういうところを見直して野球に繋げていこうということを口酸っぱく言っていましたね。時代も生徒も変わって、甲子園に行かないのが当たり前になってしまっているので、そこを何とかと思ってずっとやっています」

 手応えを掴み始めたのは「土台ができてきた」という就任5年目の2016年。兵庫大会3位で5年ぶりに秋の近畿大会出場を果たした。この時は初戦で敗れて甲子園出場とはならなかったが、その後もコンスタントに上位へと顔を出すようになり、有力校として存在感を示している。

 昨夏はレギュラーの過半数が1、2年生という若いチームで準決勝進出。19年ぶりの夏の甲子園出場が現実味を帯びてきたが、神戸国際大附を相手に0対7の7回コールド負け。「若いメンバーの中では最低限のことができたと思いますが、息切れでしたね」(安田監督)と力尽きた。

 能力の高い選手が揃ったと指揮官が認める新チームでは遊撃手の多田優斗(2年)がキャプテンシーを持っていると見られていた。しかし、安田監督は1年夏からレギュラーとなり、2年春から4番を打つ西川凱斗(2年)を主将に任命した。

「このチームはどちらかというと大人しめな西川が変わらないといけない。西川が本気に変わると、このチームの爆発力は秘めていると思ったので、キャプテンを西川、副キャプテンを多田にしました。西川は1年夏から出ているので、経験も引き継いでいかないといけませんし、彼自身がもう一皮も二皮も剥けないといけないと思っています」

 西川は現時点で通算20本塁打を放っている長距離砲だ。打線の核となる彼に責任感を持たせることで実力だけでなく、言動や行動でチームを引っ張ることを安田監督は求めた。これまでに主将の経験がなかった西川は指揮官からの指名に「とてもビックリしました」と困惑した。それでも「自分が変わらないといけない」と腹を決めて、懸命にチームを引っ張っている。

(文・馬場 遼

 前編はここまで!後編では昨秋からの取り組みなどに迫っていきます!⇒(後編を読む)

関連記事
他の野球部訪問の記事はこちら
「今春の選抜の顔・来田涼斗(明石商)!今、明かされる小・中学時代の伝説!【前編】
兵庫県選抜vs関西国際大 2019年 練習試合(交流試合)・秋 強化試合

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.11

【茨城】水戸商、茨城キリストなどが県大会切符<春季県大会地区予選>

2024.04.11

【千葉】中央学院は成田と磯辺の勝者と対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.11

【埼玉】所沢、熊谷商、草加西などが初戦を突破<春季県大会地区予選>

2024.04.12

春季県大会を制した長崎日大の監督は「まだまだチームは未熟」、14年ぶりの夏甲子園へのカギは化学変化

2024.04.12

【青森】春季の4ブロック大会の組み合わせが決まる

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.06

甲子園のアイドルと騒がれた元・超高校級左腕がプロで味わった蹉跌「ピッチャーとしての課題は…すべてだった」、クラブチームで再出発を決めたワケ

2024.04.10

【沖縄】エナジックが初優勝<春季大会の結果>

2024.04.07

法政大が新入生全30名を公開!一般組では楽天・三木肇二軍監督の長男・翔太郎(法政二)も入部!

2024.04.06

【春季愛媛大会】松山商が攻守につなぐ野球で66年ぶり秋春連覇! 第1シードの夏23年ぶり制覇へ「時は来た!」

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.02

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?