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ブームが起きそうな大阪桐蔭の効率的ボール回し、体幹トレーニングを特別公開!

2019.12.29

 2018年、史上初の二度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭。しかし2019年は春、夏ともに甲子園出場ができず、悔しい1年となった。3季連続甲子園出場なしは避けなければならないという思いからスタートした今年のチームは近畿大会決勝まで勝ち進み、2年ぶりの選抜出場が近づいている。

 今回は2020年、オリンピックイヤーでの飛躍が期待される大阪桐蔭特集を半年ぶりに再開します!3回目はトレーニング編です。

鉄壁誇る大阪桐蔭の守備の神髄は体幹にあった

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ボール回し中の大阪桐蔭の選手たち

 大阪桐蔭の選手は一気に冬の間に伸びるが、それはトレーニング内容、練習内容から見ても感じ取れる。

 まず捕球練習。ここから見ても意識の高さを感じられる。キャッチボールは徐々に広げて遠投を行って、中間距離でクイックスローの練習。そこから送球練習に入る。

 短い距離でのキャッチボールは3種類行っていた。まず半身体型から股関節を動かすことを意識したキャッチボール。続いて、アンダースロー気味のスローイングで体幹部を意識し、さらに正座の体勢から投げるキャッチボール。ただ腕だけの意識では投げられない。体幹部分を意識してコントロールよく投げる意識が見られる。

 

 ここまでは下記動画の2分28秒~5分02秒あたりをみていただくと、イメージがつかめるはずだ。

 続いてボール回しに入るが、ただのボール回しだけではなく、ランダンプレーが織り交ぜたボール回しがある。ただのランニングスローではなく、たとえば、ホーム側がいる選手は一塁を向かう途中で、一塁から二塁へ向かう途中の選手へ投げる。

 二塁へ向かう選手は後方からボールを受け取るため、胸元に投げないといけない。多くの野球経験者にこの動画を見せたところ、非常に難しいと話をしていた。

 しかもこれは時計回りだけではなく、反時計回りを行う。当日の練習ではノーエラーを30本を行っていた。そして短い距離のボール回しを行う。半身の態勢から素早く投げる。

 これをノーエラー100本行う。大阪桐蔭の選手たちは、西谷監督のユーモアたっぷりのプレッシャーも跳ね除け、しっかりとやり切った。文字にすると簡単なように見えるが、繰り返すが、野球経験者からすると難しいという声が多く届いた。

 抜け目がない練習が、大阪桐蔭鉄壁の守備を築き上げているのだろう。

[page_break:大阪桐蔭が実践するトレーニングの数々を紹介!]

大阪桐蔭が実践するトレーニングの数々を紹介!

 そして大阪桐蔭は体幹のトレーニングを重要視していることだ。もちろんウエイトトレーニングを行っており、西谷監督によると上半身のウエイトと下半身のウエイトの間に中1日休みおいて、計4回行っている。投手は上半身のウエイトトレーニングは少なめ、下半身メニューが中心となっている。ウエイトトレーニングの様子の動画は2018年で取材した動画(動画はこちら)を見ていただきたい。

 当日の取材日では体幹を鍛える3種類のトレーニングを行っていた。
・TRXトレーニング
・ロープトレーニング
・メディシンボール投げ

 この3種類について、説明能力が高い146キロ右腕・関戸康介(1年)に詳しく目的を解説していただいた。どのようにトレーニングしているかは動画をご覧いただくと幸いだ。

・TRXトレーニング

 天井からつるされたロープに両足をかけて行うトレーニング。取材日は体幹を中心としたメニューが組まれたが、ロープに両足をかけることで安定性が失われ、バランスが崩れやすい。

 その状況の中で体を安定させるために体幹、特に石田コーチが口にしていた「おなかの中心」に意識を置くことで力が体の中心に集まりやすくなる。

 その結果バランスが保たれるようになり、実際のプレーの中でも簡単に体勢が崩れないボディーバランスが手に入るのだ。

 この4月から取り入れたというトレーニング。大阪桐蔭グラウンドの一塁側上部にあるテントにトレーニングセットがある。関戸はこのトレーニングの効果についてこう語る。
 「体幹、股関節、柔軟性をバランスよくとても効率の良いトレーニングだと思います。僕もこのトレーニングで股関節周りが広がりましたし、ピッチング前に行うとよくほぐれます」

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3種目のトレーニングについて語る関戸康介(大阪桐蔭)

・ロープトレーニング

 2人1組になって1人は前へ進み、もう1人が後ろからついていく形。捕球態勢の高さまで腰を落として前向き、横向きになって進んだり、時にはジャンプをしたり。そしてダッシュをするといったメニューを消化していく。

 ただし、ロープはしっかりと張ってある状況からスタートし、後ろの人間は前の人間に引っ張られるような形で進んでいく。つまり前の人間はただ進むのではなく、もう1人分の体重を引っ張る必要があり、下半身の強さが求められる内容だ。

 関戸はこう語る。
 「バネ、体の粘りがついて、とても投球動作につながる良いトレーニングです」と語る

・メディシンボール投げ

 メディシンボール投げはいわゆるただ遠くへ投げるのではなく、ネットを超えるように投げる。そのため全体を使って投げないと超えられない。

 関戸は「とてもきついですが、体幹と軸を上手く使って正しい投げ方で投げないと意味がないと思うので遠くに飛ばすというより正しいフォームで投げることでピッチングにもつながっていきます」

 このトレーニングは多くの選手がきついと感じており、146キロ左腕・松浦慶斗(1年)は「ウエイトトレーニングとは別のところが筋肉痛になります」と悲鳴を上げていた。

 全体を鍛える大阪桐蔭のトレーニング。こうした取り組みが驚異的なパフォーマンスを生んでいるのだろう。またピッチング練習を見ると石田コーチが1人1人の投球フォームの欠点に沿って指導している。

 ある投手には軸足をあらかじめプレートから押さえつけて投げたり、30メートルの距離から投げたり、長い棒を使って投球動作を修正したり、少し歩いてから投げたりと多種多様だった。

 まさに無駄がなく、いろいろな取り組みを行う大阪桐蔭。多くの選手を伸ばす仕組みができており、長年、強さを維持できる理由もうかがえるトレーニングだった。難しいものはなく、参考にできそうなばかり。ブームが起きそうなトレーニング内容だった。

(文・河嶋 宗一

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★26日~31日まで、年内はまだまだ大阪桐蔭のインタビューや野球部訪問を公開するよ!

1月3日(金)
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★1月もまだまだインタビューや野球部訪問を公開するよ!お楽しみに!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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