目次

[1]肝心なのは「やらされる」練習ではなく「自ら考えてやる」練習
[2]女子野球の魅力とは何か…模索は続く

 創部から10年あまりで全国優勝9回。これは草創期の老舗の「貯金のようなもの」(橋本監督)。勝てなかったその後の10年間で「貯金」は使い果たした。選手獲得が難しい時代だからこそ「今いる選手たちを育てることを大事にしたい。ここ1、2年で結果を出せるかどうか、真価が問われる」と橋本監督は気合を入れる。

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揺らがぬ「日本一」の志 自ら考え、行動する人間になれ! 神村学園女子硬式野球部【前編】

肝心なのは「やらされる」練習ではなく「自ら考えてやる」練習


 グラウンドは長方形のいびつな形をしている。内野はダイヤモンドの広さは確保できるが、セカンドの定位置をとることができない。「練習見学に来ても、このグラウンドを見て躊躇される親御さんがいられます」と橋本監督は苦笑する。「これ以上、狭くなることはない。やれることをやるだけ」と発想を前向きに切り替える。

 内野ノックや連携プレー、走塁練習、バント練習…やれる練習をみっちりやる。体を鍛えるトレーニングはこの広さがあれば十分だ。打撃練習や、外野ノック、実戦形式などは近くの運動公園や、もう少し待てば改修が終わる野球場を借りればいい。

 肝心なのは「やらされる」練習ではなく「自ら考えてやる」練習だ。取材に訪れた日はランナー一三塁の内野守備と走塁の実戦練習を何度も繰り返していた。一走がディレードで走る。捕手が投げる。三走がホームへ走る。一連のプレーの中に、走者は点を取るためにどのタイミングで走るのか? 止まるのか? 挟殺で挟まれて粘って囮になっている間に味方を生かすにはどうすればいいか?…守備は失点を防ぐために、捕手のボールはどこに投げればいいか? 二塁手、遊撃手はカットに入るか否か? 入るとすればどちらか? 挟殺になったら一走をケアしつつ、どのタイミングでバックホームするか?…状況に応じて考え、瞬時に判断し様々なことに対応していかなければいけない。

 「今までそんなことを考えて野球をやったことがなかった。難しいです」と捕手・長嶺伶奈(2年)は苦笑する。小6で捕手経験はあるが、中学時代は内野手だった。本格的に捕手をやったのは高校に入ってから。ただ打って、走って、投げてのプレーが楽しくて野球をやっていたが、初めて頭を使うことを学んで戸惑うと同時に「野球をやっているなぁ」という実感があるという。 

佐賀出身の藤田優美主将(2年)、奄美大島出身の左腕・泰美勝(2年)、沖縄出身の長嶺…県内外を問わずここにやってきた部員たちは「日本一を目指す」目標を持っている。

 

 現在1、2年生は12人。飛び抜けた実力者はいないが「1つ1つのプレーをコツコツとやることができ、派手ではないけれども要所、要所をしっかりと締めて粘り強い野球ができる」チームだと藤田主将は言う。

 目指すのは「守り勝つ野球。1点取ってくれれば抑える自信はある」(泰)。人数は12人と決して多くはないが「春、クラーク仙台は11人で勝った。人数は少なくても勝てるチームはある」(長嶺)と考えている。

大所帯の関西、関東の強豪を倒して優勝するためには「もっと言い合える関係になる」ことが大事だと藤田主将は感じている。人数が少ないからこそ、お互いに本音をぶつけ合って理解し合い、お互いがやろうとしていることが分かり合えるようになれば1+1の力が3、4、5、6…と増えて高いチーム力で戦えるのではないか?

 長嶺は「みんな仲は良い」と思う。ただ本音を言い合えているかと問えば、「言った後どう思われるか?」を気にして言わずに済ませていることも多い気がする。女子特有の難しさはあるが、そのあたりをどう乗り越えていくかが今後のカギになりそうである。