人数少ない3年生が奮起した夏の戦い 福知山成美女子硬式野球部【前編】
2009年創部と近畿地区の女子野球部としては最も古い歴史を持つ福知山成美。今年の全国高等学校女子硬式野球選手権大会ではベスト4という成績を残している。今回は1年間の振り返りと3月に迫った全国高等学校女子硬式野球選抜大会初優勝に向けての取り組みに迫った。
12人で下の学年をまとめる難しさ
アップをする福知山成美ナイン
チームを率いるのは長野恵利子監督。中学から社会人まではソフトボール選手として活躍し、26歳の時に野球に転向。2008年には第3回女子野球ワールドカップで主将として、日本代表の初優勝に貢献した。引退した翌年から福知山成美で女子野球部の立ち上げに尽力。2014年には選手権で初優勝に導いており、選手、指導者の両面で女子野球の発展に多大なる功績を残してきた人物だ。
3年生の代は先日、女子プロ野球を引退した奥村奈未の妹である奥村咲花(3年)が務めていた。春の選抜では初戦の横浜隼人で3対5の逆転負け。長野監督は地に足がついていないことが春の時点での課題だったと振り返る。
「3年生は元気のある学年で乗ったらいけるけど、スキを突かれると慌ててしまうチームでした。逆転されると、気持ちが引いてしまって、自分に打ち克てないチームでした」
春の段階では自分たちのペースに持ち込まないと、力を発揮できない面があった。また、1、2年生がそれぞれ20人以上いるのに対して、3年生は12人。比較的人数の少ない学年で、苦労したこともあったそうだ。
「12人で下の学年をまとめる難しさを、負けたことによってたくさん気づかされたことがありました。悔しい思いをして、自分たちが何かを変えないといけないということで、3年生が何回も自分たちでミーティングを重ねていましたね」
悔いなく戦えたと夏を振り返る
走塁練習をする福知山成美ナイン
負けた悔しさが彼女たちを強くした。夏の選手権では初戦で再び横浜隼人と対戦。序盤から投手戦が続いたが、4回裏に3点を先制すると、そのまま3対0で逃げ切った。「リベンジして、春と違うところを見せつけられたのではないかなと思います」と長野監督。これでチームは勢いに乗った。
2回戦では選抜覇者の神戸弘陵との試合になったが、長野監督は「自信を持って戦えていた」と堂々たる戦いを見せる。1回表に先制を許したが、「みんなしっかり地に足がついて、1点を取られてもしっかり戦えていました」とその裏にすかさず追いつく。3回裏に6番・神野百花(1年)の適時打で勝ち越すと、エースの左川楓(3年)が相手の反撃を振り切って、3対1で勝利を収めた。
準々決勝の神村学園戦も2対1と接戦を制して、全国の頂点が見えてきた。しかし、準決勝の履正社戦では延長戦の末に2対3で敗北。4試合を1人で投げぬいた左川が最後に力尽きた。それでも長野監督は悔いなく戦えたと夏を振り返る。
「3年生が一つになって大人数をまとめてくれて、完全燃焼してくれました。左川もよく投げたと思います。私も悔いはないですし、この子たちが持っている現状の力で戦えました。試合に出ている子、ベンチにいる子がしている子だけで試合をしているのではなく、スタンドで応援している全員が主役の『成美全員野球』は代々引き継がれているんですけど、今年の3年生もそれをやってくれた学年だと思います」
(取材・馬場 遼)
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