Column

気持ちの強さと科学的なアプローチで春の飛躍へ 岩倉(東京)

2019.11.18

 東京都内の実力校として、毎年上位進出を狙える位置につけている岩倉。今夏の第101回選手権東東京大会でも、147キロ右腕の宮里優吾や強打の捕手である荻野魁也を擁してベスト16まで進出した。

 だが7月の下旬からスタートした新チームは、ここまで思うような成績が残せていない。秋季東京都大会では1回戦で都立国立に敗れ、早々に選抜甲子園の道を断たれたのだ。
 チームの現状や春に向けての立て直しは、一体どのように進めていくのか。チームを率いる豊田浩之監督に伺った。

経験不足から1回戦敗退を喫した秋季大会

気持ちの強さと科学的なアプローチで春の飛躍へ 岩倉(東京) | 高校野球ドットコム
この日は体力測定が行われた(写真は三段跳びの様子)

 投打共に力を持った選手が並び、夏は優勝候補の一角にも挙がっていたが、5回戦で都立高島に4対1で敗れて甲子園出場は果たせなかった岩倉。そして当時のメンバーは3年生が中心だったため、新チームは試合経験のある選手が少なく前チームのような柱がいない中でのスタートだった。

 「3年生のチームは投手力も良く、打線も遠くに飛ばせるタイプの選手が多かったです。やっぱり選手は打球が飛ぶようになったり、バットが振れるようになったら野球が面白くなるので、そこは継続しながらやってきました。
 ですがやはり1年生なんかはバットがなかなか触れずに、点が取れないなと感じるところがありましたね」

 また投手陣も、2年生投手がなかなか整備できない中で運用してきた。
 本来であれば、投手陣の中心としてマウンドに登ってるはずの栁澤欣栄藤田匠がコンディション不足から登板が出来ずに、この秋は外野手である西野隼斗、そして1年生の古坂虎汰朗と勝村奏太が中心となった。

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スイングスピードの測定の様子

 「藤田は故障がなければ夏もベンチ入って投げるくらいの力はあって、柳澤もまだ背が伸びている影響で膝や腰が痛いようで。
 1年生の古坂と勝村は、ちゃんと伸びていけば1年後に試合でしっかり投げれるピッチャーになるなと思っていますが、夏休みはまだヘロヘロで。そんな状態の中で、秋を迎えた感じですね」

 投打共にチームが仕上がらないまま、秋季大会に突入した岩倉
 1回戦の都立国立戦では序盤からペースをつかめずに失点を重ねて、一時はコールド負けの淵まで追いやられる。終盤の猛攻で何とかコールド負けは避け、最終回には1点差まで詰め寄る粘りを見せたが、最後は及ばずに8対7で惜しくも敗れた。

 都内の実力校らしからぬ試合で、早々に選抜甲子園への道を断たれた岩倉だが、それでも豊田監督は「夏に向けて期待が持てるチーム」であることを力強く口にする。試合経験が無いがために秋は苦戦を強いられたが、その経験の無さをカバーできるだけの「気持ちの強さ」を持った選手が多くいるためだ。

[page_break:秋季大会で2年生が見せた意地]

秋季大会で2年生が見せた意地

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筋力の測定の様子

 「旧チームから試合に出ていたキャプテンの島崎陵馬がキャプテンシーを持ったいい選手で、上手いことチームをまとめています。技術的なところよりもメンタル的なところで、田の選手をフォローしたり、時にはガツンと言ったりできる選手です」

 豊田監督は都大会の1回戦で敗れはしたものの、キャプテンで3番を務める島崎を中心にチームとしてのまとまりは決して悪いものではないと評価する。精神的支柱である島崎を中心に、他の2年生も気持ちの強さを見せるシーンが随所に感じられ、夏に向けて期待が出来るチームだと豊田監督は話す。

 「秋季大会も始めは1年生中心でオーダーを組んだのですが、(リードされた後に)途中から2年生を使ったら結局その選手たちが意地を見せて追い上げることが出来ました。あまり普段は自己表現をしない2年生ですが、そういった部分が日常から出てくれば面白いチームになるなと思いますね」

 豊田監督には、印象深いエピソードがある。
 ある日、寮内を歩いていると、1年生で4番に座る久保田真梧が目を真っ赤にして泣いていた。どうしたんだと慌てて声を掛けると、久保田はキャプテンの島崎と話をして泣いているのだと答えたのだ。

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主将の島崎陵馬(岩倉)

 「初めは島崎が厳しく説教でもしたのかなと思ったのですが、そうではないと。諭すように話をしてくれて、感動して泣いてしまったのだと久保田は言ったんです。
 この子たちにはこんな一面があるのだなと思って、キャプテンを中心に一冬しっかり鍛えれば、来年は(上位まで)行ってくれるんじゃないかなと思いましたね」

 またトレーニングにおいても、今年からはピッチャーのオフシーズンの過ごし方を例年よりも少し変えることを考えている。岩倉では年間を通してトレーニングと実践練習を平行して行っているのだが、春先にピッチャーがコンディション落とすことが多かった。
 そこでスポーツ医療の関係者にの方に相談をしたところ、オフシーズンは投げ込み減らすことを勧められたのだ。

 「練習やトレーニングが(パフォーマンスに)現れるようになるのは、だいたい半年後とのことでした。なので逆算していくと、6月7月に良いパフォーマンスしようと思ったら、1月頃は強度を上げたらダメだと言われました。なので投げることに関しては、今年は丸々一ヶ月くらいピッチャーも投げさせないでおこうかなと思ってるんです」

 岩倉では秋と春に体力測定も行い、その結果で冬場のトレーニングの成果をチェックスなど体力作りやコンディショニングの面でも、キメの細かいチェックを行っている。こうした地道な取り組みも、堅実な強さを語る上で欠かせない項目だ。

 強い気持ちを持った選手たちと、科学的なアプローチで逆襲を期す岩倉。まずは2020年の最初の公式戦である春季東京都大会で、どこまで成長を見せることが出来るか注目だ。

(取材・栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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