徹底した体作りで選手を鍛え上げる日大二(東京) 打撃力の「一点突破」で夏に飛躍を
秋季東京都大会でベスト8進出を果たした日大二。準々決勝では惜しくも創価の前に屈したが、毎年、都大会では虎視眈々と上位を狙える位置につけており、その存在感を示し続けている。
だが日大二にはそもそも野球推薦の枠はなく、一般受験や中等部から上がってきた選手のみでチームは構成されている。そんな中でも、強豪がひしめく東京都で毎年実績を残し続ける秘訣はどこにあるのか。
チームを率いる田中吉樹監督にお話を伺い、新チームの状況についてもお話を伺った。
体作りを最も重視した練習方針
日大二の集合写真
東京都杉並区天沼にある校舎から、1時間弱の場所にあるグランドがある日大二。野球推薦の枠がないだけでなく、進学校であることから勉学も厳しく練習時間は十分に確保できない。そんな中で、日大二はいかにして選手の実力を伸ばしているのか。
その疑問に対して、田中監督は徹底した「体作り」にあると断言する。
「体つくりを一番重視し始めたのは、3、4年前くらいからです。体つきが良くなると、パワーもついて足も速くなり、柔軟性も上がります。時間もないので、選手の体を大きくして打撃型のチームを作らないと勝てないと思ったのがきっかけです」
日大二ではトレーニングはもちろんのこと、練習中の補食や練習後のプロテインを徹底して摂らせて体つくりを推し進めている。
プロテインは栄養素をカスタマイズした「オーダープロテイン」を採用しており、また定期的に筋力や柔軟性、瞬発力の測定も行ことで成長が可視化できるようにもしている。
プロテインは大きな瓶に入れて選手たちが各々で飲んでいる
「プロテインは、体を大きくしたいのでタンパク質の含有量を多くしてもらいました。最近では、選手たちが自らプロテインを研究するようになり、自分で調合して飲む奴まで現れました。体力測定も行ってるので、自分たちで課題を自覚できているのだと思います」
選手たちだけでは行き届かないような体作りのサポートを継続したことにより、一般受験で入学してきた選手でも、3年生になる頃には強豪校の選手も負けない体つきに成長。そして成長した選手と共に、打撃中心のチームを作り上げることで日大二は毎年実績を残しているのだ。
「うちは実績のない選手が多いのですが、入学してから力がついて実績を残す選手が多いです。入ったときは本当に力の無かった選手が、大学まで野球を続けることができたケースもあるくらいです」
[page_break:秋以降も「打撃力」の一点突破の構え]秋以降も「打撃力」の一点突破の構え
打撃練習の様子
そんな中で、今年の新チームも打撃中心のチームカラーで秋季東京都大会準々決勝まで進出した日大二。例年以上に高い打撃力持ったチームであったが、田中監督は意外にもここまで勝ち進むことは予想してなかったと振り返る。
「力はあるチームだと思っていましたが、ここまで勝つと思っていなかったです。勝てないだろうなと思っても、不思議と勝ってしまう。今年は意外性のチームなんですよ」
力はあると認識していながら、準々決勝まで勝ち進むと田中監督が思っていなかったのには理由がある。試合経験のある選手が少なく、「試合のポイントを得ていない」ところがあると感じていたからだ。
「『ポイントを得てない』というのは、要領が悪いところがあるということです。試合でもそう感じることが多かったのですが、でも試合になるとココというポイントで打ったりするんですよね。本当に意外性です」
投打の柱である折笠利矩(日大二)
そんな「意外性」のチームの中で、田中監督も中心選手として期待を寄せているのが、エースで4番の折笠利矩だ。中学野球の名門・武蔵府中シニア出身の折笠は、打撃では「しぶとい」バッティングを持ち味とし、またピッチングでは抜群のコマンド能力で打者を打ち取るなど、高い技術の高さを見せる選手だ。
田中吉樹監督も「ほとんど高めに浮かない」と信頼を寄せており、折笠の浮沈がチームの鍵を握っていると言ってよい。
秋季大会準々決勝では、終盤の集中打で創価に力負けのような形で逆転負けを喫したが、課題が明確であるだけに冬場のトレーニングに向けても力が入る。
田中監督が「バッティングを中心に、守備力が表に出る試合にはしないようにする」と話せば、折笠も「これからは相手もどんどん強くなっていくので、今年は打撃のチームなのでしっかり点を取って、そして自分が投げてギリギリでも勝てるようにしたい」と今後も打撃力をさらに伸ばしていく構えを見せる。
推薦枠や練習時間といったウィークポイントを逆手に取り、打撃力の「一点突破」で大会に挑み続ける日大二。春以降、チームがどこまで「打撃力」を極めているか注目だ。
(記事=栗崎祐太朗)