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脱玉村と部員確保 夏準優勝・丹生(福井)におかれた課題 【後編】

2019.10.30

 今夏の福井大会で広島からドラフト6位指名された玉村昇悟を擁して創部初の準優勝という快挙を成し遂げた丹生。公立校が次々と強豪校を倒していく姿は多くの人にインパクトを与えた。

 秋は初戦で敗れたが、力のある選手は残っており、上位進出のチャンスは十分にある。福井の高校野球を盛り上げた丹生のこの1年間の軌跡と同校の取り組みについて迫った。

 後編では圧倒的な存在だった玉村昇悟が抜けたあと、新チームにおかれた課題に迫る。

自信を持てずに敗れた秋

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丹生・春木竜一監督

 自信を持って秋の福井大会に挑んだが、公立の雄である坂井に1対8でコールド負け。指揮官にとっては予想外の大敗で丹生の秋は早くも幕を閉じた。

「普通にやればベスト4はいけるかな」と思っていた春木監督にとっては悔やまれる結果となった。その原因の一つに選手の自信のなさがあったのではないかと春木監督は分析する。

「玉村神話じゃないけど、玉村くらいのピッチャーじゃないと勝てないとか勝負にならないという幻覚を持っているのではないかと思っているんです。こっちは客観的に勝てると思うんですけど。自分たちの力を発揮することができていないので、残念ではあります」

 夏に神がかり的な躍進を見せた背景には玉村の存在があったのは間違いない。それ故に玉村クラスの投手がいないと、勝ち進めないと思ってしまったのだ。春以降に結果を出すために最も必要なのは自信なのかもしれない。春木監督はエースの伊藤には大きく期待を寄せている。

「夏の大会中も彼を使わないといけない時が来ると思っていたけど、本人は消極的だったところがありました。玉村を見に来たスカウトの方たちも伊藤を見て。『良いじゃないか」、『その先、上に行って面白いですよ』と言ってくれています。彼もそういう評価を自分で聞くので、自信をつけてくれたら良いなと思います。伊藤だけを見ると凄いけど、玉村が隣で投げると、『やっぱり玉村は凄い』となる。玉村を見すぎて自信がつかないというのはありますね」

 今後は戦力的な面よりも精神的な面で「脱玉村」をできるかどうかが大きなポイントとなりそうだ。

[page_break:全員が戦力として活躍できるように]

全員が戦力として活躍できるように

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丹生高校野球部

 そして、チームとして取り組んでいるのがストロングポイントの発掘と基礎の徹底だ。丹生は地元の中学校で軟式野球をしていた選手が多い。そうした選手を鍛え上げるために基本的な動作からみっちり教えているという。

「極端に言うと玉村と受けてくれるキャッチャーがいて、内野がある程度守れたら何とかなる。ヒットであっても玉村が次に三振を取ればいいんですよね。テキトーにやるメンバーがいても成り立ってしまうスポーツだし、打線も一人が三振しても誰かが取り返せば良いじゃないですか。他人に頼ってきた子が多くいるので、投げ方と捕り方とかバットの振り方などを身につけてほしいなと思って、一から教えています」

 中学の軟式野球は硬式に比べて点が入りにくいため、好投手がいて、最低限の守りができれば大量失点することはあまりない。実際に玉村の中学時代も失点の大半はパスボールや延長タイブレークによるものだったそうだ。だが、打者の打力が上がる硬式の高校野球ではそうはいかない。そのため、全員が戦力として活躍できるようにコツコツと練習を積み重ねている。

 さらに練習試合では春木監督はベンチに入らず、選手にサインを出させているという。試合前に戦術の方針だけを伝えて、自身は主審を務める。状況によって何のサインを選択するかを考えることで監督と選手の目指す野球を一致させる狙いがあると春木監督は話す。

「これができるようになると、監督のやりたい野球と自分たちのやりたい野球があってくるのではないかと思うんです。能力はあるので、考える力をつけてあげればもう少し余裕をもって戦えるのではないかなと思います」

 群雄割拠の福井県において上位を狙うだけの力を持つ丹生だが、1年生が5人しかいないため、来年の新入部員の人数によっては予断を許さない状況となる。春木監督の中で連合チームを組む考えはないため、1年後には公式戦出場が叶わない可能性も否定できない。

 だが、この夏で相当な影響力は与えたはず。来年には少しでも多くの選手が入部することを祈りたい。

(取材・馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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