第645回 伝統の男子に負けない高い意識と目標で全国制覇を果たす 作新学院女子硬式野球部2019年10月28日

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【目次】
[1]恵まれているとは言えない練習環境
[2]女子の指導で大事なこと

 甲子園で史上初の春夏連覇を達成したのが作新学院だ。

 1962(昭和37)年のことである。それから54年後に、再び全国制覇を果たした作新学院野球部。その快挙に地元は大いに沸いたが、そんな伝統ある作新学院に2013(平成25)年、女子硬式野球部も創部した。そして、この夏わずか6年目でついに悲願の全国制覇を果たした。そんな作新学院女子野球部を訪ねてみた。

恵まれているとは言えない練習環境



狭い距離から始めるキャッチボール

 創部して6年というまだまだ歴史の浅い女子硬式野球部。しかし、その実績は素晴らしい。ユニフォームも、あの甲子園で全国制覇を果たしたものと同じデザインだ。男子が全国制覇を果たして3年後の快挙である。その間にも14年夏、17年春に4強進出するなど実績を積んできていた。

 とはいえ彼女たちの練習環境は、必ずしも恵まれているとは言い難いものがある。というのも、マンモス校でスポーツの盛んな作新学院である。野球部も硬式と軟式があり、いずれもが全国トップレベルの位置しており、専用球場を有する。さらにはラグビー部、バレーボール部も全国レベル。そして、オリンピックの金メダリストの萩野公介や飛び込みの榎本遥香などを輩出した水泳部に体操競技部も強豪である。そんなスポーツ強豪校でもあるため、歴史の新しい女子野球部の施設まではなかなか環境整備が回ってこないという現実もある。

 そんなこともあって、日々の練習場は軟式野球部のグラウンド後方にある室内練習場が主な場所となっている。元々は全国制覇を果たしている男子野球部の室内練習場だったところである。だから、3人が同時に投げられるブルペンも併設されている。そこが今は、野球女子たちのグラウンドとなっている。

 平日練習は19時過ぎくらいまで。広大なキャンパス内を1周するとおおよそ1キロになるが、そのランニングから始まる。その後に入念なストレッチとアップを終えてボールを握る練習となる。日々の練習は室内練習場がメインなので、出来る練習は限られている。ボールを使った練習はトスバッティングから始まり、キャッチボールからシートノックへと流れていく。かつては、未経験の生徒も入部したことがあったが、今は中学時代かそれ以前から何らかの野球経験がある選手ばかりだ。

 指導するのは男子コーチも務めていたOBの田代恭規監督(1983年卒)で創部時から外部指導員として指揮を執っている。チームとしては大学社会人も参加するヴィーナスリーグには2チームで参加している。こうして、少しでも多く実戦を経験していくということは、特にグラウンドを保有していない作新学院女子野球部の場合は非常に大きな要素となっている。

 普段の練習では、専用のグラウンドがないので実戦形式での練習というのはほとんど出来ないというのが現実だ。だから、全体練習としてチーム練習となるのは授業後集まって1時間半から2時間くらいである。「この時間というのは、ちょうど1試合分の時間と同じです。全体練習での集中時間としては、ちょうどいい時間ではないかと思っています」田代監督はそう言うが、その時間をまずはしっかりと連携しながらやっていこうという考えだ。

 そのメニューとしては、アップ、ストレッチから始まってトスバッティング、キャッチボールと進んですぐにシートノック。これも、外野ノックはなかなか難しいので、外野手も内野の中に混じって捕球や送球練習などを行っていく。本塁送球などは、意図的にやや高めに投げていくようにという指示もしている。つまり、限られたスペースだけれども、その中で何をどのようにしていけば、より実戦練習に近づけられるのかということを、選手たちも常に意識しているのだ。

 その後に、10カ所ほどでのティバッティングとマシンを使ったフリー打撃。これでおおよそ予定していた時間が終わる。ただ、実は田代監督はその後が大事だという。「その後に自主練習ということにしているのですけれども、そこで何をどうしていくのかということですね。今年の3年生たちは、主将の生井(美桜)を中心として、この自主練習を工夫して非常に熱心にやっていました。それが、結果としてそれぞれの自信にもなり、いい結果に結びついていったのではないでしょうか」

 自主練習で、どれだけテーマをしっかり持って行かれるのか、それが大事だということを強調していた。ここでは、選手たちが週末試合での自らのもとに、取り組んでいく。作新学院としては、田代監督の考え方でもあるのだが、「女子野球であっても、打っていかなければ勝ち切れない」ということで、ことに打撃強化を課題としている。

 その背景には、「こんな環境ですけれどもね、今年の大会でも案外守りのミスというのは少なかったんですよ。守りで崩れなければ、やはり打って勝っていくということになりますよ」ということがあるようだ。

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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