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「興南に来て、本当に良かった」人生のスコアボードは、まだまだ続く 興南高校三年生座談会【後編】

2019.09.05

  興南高校に入って間もない一年生の夏。宮城大弥が決勝で美来工科高校を抑えて優勝。それから一年後の夏も連覇し、6名ほどが甲子園メンバーとなった。三連覇を狙った最後の夏は、残念ながら沖縄尚学高校の前に敗れてしまったが、興南高校野球部として彩りを見せてきた彼らの足跡は、これから先も決して色褪せるものではない。

U-18選出の宮城大弥とともに、高校野球に情熱を傾けてきた4人の三年生に話を伺い、彼らの思い出話しを聞いてきた。

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「色褪せない3年間の記憶」一番良いゲームだった沖縄尚学戦 興南高校三年生座談会

<メンバー>
金城英佑(一塁手)
主将としてチームをまとめた。秋の県大会、三塁打1本、二塁打2本で打率4割ちょうど。決勝では先制タイムリー。秋の九州大会、熊本国府戦で6回にレフト線への二塁打を放った。

遠矢大雅(捕手)
宮城大弥をはじめ、又吉航遥西江悠の投手陣を支えてきた。秋の県では全6試合でヒットをマーク。打率5割に加え、三塁打2本、二塁打1本と長打力も披露した。

勝連大稀(遊撃手)
主に3番でクリーンアップを務めてきた好打者。秋の県大会では6試合中5試合でヒットをマークし三塁打2本。九州大会の熊本国府戦では、第1打席で二塁打を放った。

新垣和哉(外野手)
秋の県大会で4番ライトとして19打数8安打、打率.421。九州大会でも5番を務めた。熊本国府戦では5回、一死満塁でキッチリと犠牲フライで打点を挙げた

春の大会で優勝。九州でも準優勝

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笑顔の勝連大稀

―― 春の大会で優勝。九州でも準優勝!という立派な成績を収めました

金城 「投手陣が宮城一人ではどうにもならないぞということで、又吉と西江が成長した春。打撃陣も、低くて速い打球で抜いて行く場面が作れた。」

遠矢 「自分的にはバッティングを崩していた春。チームとしては沖縄水産にも勝ったし、九州2位。でも個人的には満足出来ない春だった。」

勝連 「遠矢と同じで全く打てず。オレ、夏まで野球続けていられるのか?と思うくらい落ち込んだ。」

金城 「あのときの勝連は、こっちも見ていて痛々しかったよ。」

遠矢 「自分、秋は5番打ったのに春は8番だったり。準決勝の北山戦。延長で自分に回ってきて。」

全員 「そうそう。覚えている。」

遠矢 「一死二・三塁。あの試合始めての良い当たりでヨッシャー!って思ったら、なんでそんなところにいるの?ってくらい、相手のセンターがキャッチして。結局二塁の大弥も戻れず併殺。勝てたから良かったけど、本当に最悪な春だった(遠矢はこの試合6打数無安打)。」

―― 決勝戦を制して優勝後の遠矢くんが「リベンジの春!」と語ったのが印象的

遠矢 「一年生大会で負けた北山、秋に負けた沖縄水産に勝った。それじゃ筑陽学園にもリベンジします!と、決勝の試合後に言ったけど、まさか筑陽学園と二回戦で当たるとは(笑)。向こうは選抜ベスト8まで進んだし、正直ダメかなぁって思った。」

勝連 「しぶとい野球をした神村学園に勝てたのが、波に乗れたんじゃない?」

遠矢 「当たったら飛ぶというキャラの金城啓太が名前を連ねて。そしたら神村学園でいきなり弾丸ライナーのホームラン。啓太が走者を全部返してくれての打席だったから、自分としては楽だった(笑)。」

金城 「逆転勝ちが多かったのが九州大会。相手にリードされていても平常心を保っていられたな。」

遠矢 「決勝戦だけは、自分たちの悪い課題が出ちゃった負けだったな。」

 選抜高等学校野球大会ベスト8の筑陽学園に勝ったことで、夏は興南圧倒的優位という説が固まりはじめた。そして迎えた夏。開幕カードだった興南。しかし雨が降り、試合は約一週間スライド。だがこの雨こそ、興南にとって実は、恵みの雨だった。

―― 夏の大会。1回戦から一人ずつに語ってもらいたいと思います。

―― 1回戦 宮古総実戦

勝連 「一回戦の直前、実はチームはインフルエンザで流行っていて。このまま負けるんじゃないか?と思うくらい。雨で流れたことは凄く助かった。気が抜けないか心配だったけど、結果コールド勝ちで良かった。」

  2回まで無得点の興南は3回、根路銘のヒットを足掛かりに、遠矢のタイムリーを含む5打者連続タイムリーで大量5点を奪う。だがインフルエンザの影響か、3,4,5回はヒットを打てず。しかし6回、勝連のタイムリーなどで7点目を挙げコールド勝ちを収めた。

―― 2回戦 前原戦

金城 「前原戦も雨で流れて中止になったんだけど、あのままゲームが進んでいたら落としていたかも知れなかった。そのくらい前原ペースで。仕切り直しという運も、自分たちにあったのかな。大弥が抑えて勝てたけど、夏の怖さを感じたゲームだった。」

 3回まで進んだゲームだったが雨が降り中止になる。翌日、仕切り直しの再試合は1回、ヒットの西里、勝連のヒットと宮城の四球で満塁とする。ここで知念の犠牲フライで先制すると、新垣のタイムリーで2点を先制。それ以降得点することがなかったため、新垣のタイムリーがチームにとって大きかった。

―― 3回戦 具志川商業戦

遠矢 「練習試合でも負けていた相手。打撃力があってウチにとって相性が良くないのが具志川商。でも西里にホームランが出るなど、みんなが打ててコールド勝ち。心の中で自信に変わったゲームだった。」

 2回、このイニング先頭打者の遠矢がヒットで出塁。根路銘が返したあと、西里のレフトスタンドイン3ランホームランが飛び出して流れが一気に興南へ。5回には遠矢のタイムリー、6回にも勝連のタイムリーが出て7-0でコールド勝ちを収めた。

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興南に来て、本当に良かったな

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遠矢大雅

―― 準々決勝 宜野湾戦

新垣 「一番戦いたかった宜野湾。遠矢、勝連と自分、そして宮城は宜野湾出身。小学校からの馴染みが多い宜野湾。こっちは大弥が投げたけど6回までにまさかの0-2。でも勝連のヒットがチームに勇気を与えた。」

 1回にはタイムリー、6回には犠牲フライを共に宜野湾の宮平に打たれ2点を失った興南は、5回までその宮平に僅か2安打に抑えられていた。しかし6回裏、一死から勝連にセンター前ヒットが出ると、チームに勢いが生まれる。3連打で得点を重ねると、遠矢にもタイムリー二塁打が飛び出し一挙4点。7回以降、宮城が二塁を踏ませず4-2で逆転勝ちを収めた。

準決勝、先制された興南だったが3回、勝連の犠牲フライで同点とすると宮城のタイムリーで逆転。6回にも遠矢の2点タイムリー二塁打が生まれ4-2で勝利を収め、3年連続の決勝進出を決めた。

―― 決勝戦 沖縄尚学高校戦

金城 「沖縄尚学とは一年生大会も含めて初めての対戦。練習試合もしたことない。そしたら4点取られて。でも大弥も『これが決勝(という舞台)だろうよ』と。誰も4点も取られるとは思ってなかったけど、大弥の一言で焦りが無くなった。」

遠矢 「そのあとの、根路銘のフェンス直撃の2点打も大きかったな。」

 0-4の2回、一死から知念がヒットを放つと金城啓、新垣が四球を選んで満塁。ここで回ってきた金城英が主将の意地でセンターへの犠飛。トップに返って根路銘がライトへの2点タイムリー二塁打を放ち1点差に詰め寄った興南。3回には遠矢の同点タイムリー二塁打に続き金城啓の逆転タイムリーで試合をひっくり返した。

しかし6回、同点にされると規定の9回を終えても決着つかず。選手権沖縄大会の「決勝」では2007年以来、12年振りの延長へ。12回表、熱投していた宮城が捕まり2点を奪われた。

遠矢 「大弥もフラフラで。ずっとゼロゲームが続いた中で、沖縄尚学の吉里くんに打たれた2点。その裏西里が出塁したけど、それでも2点を追いつくにはまだ遠いと感じていた。そこにチャンスで自分に打席が回ってきた。初球の真っ直ぐ一本に絞った。その一球で仕留められた嬉しい同点打だった。興南はガッツポーズ禁止だけど、あの時は思わず出ちゃったな(笑)。」

 12回裏、西里と宮城のヒットで一・二塁とした興南は遠矢が初球攻撃。センターの横を破るタイムリーで一塁走者の宮城まで生還し同点とした。その後、マウンドへ上がった比嘉大智に抑えられサヨナラとはいかなかったが、土壇場で2点を追いつく勝利への執念は観る者全てを魅了する素晴らしいものだった。

13回、力尽きた宮城が1点を許す。その裏興南も必死にすがるが、沖縄尚学高校マウンド比嘉の前に屈し、夏の三連覇はあと一歩で逃した。

宮城は試合後、「甲子園がこんなに遠いと始めて感じた。」と語った。でも甲子園だけが全てじゃない。宮城はU-18JAPANとして出発。興南戦士たちも、それぞれの進路先を見据えながら、大好きな野球を続ける道を探っている。最後に4人が声を揃えて答えた。

興南に来て、本当に良かったな。」

高校野球はやり切った。悔いはない。次なるステージを見据える彼らの人生のスコアボードは、まだまだ続いていく。

(取材・写真・文/當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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