Column

「色褪せない3年間の記憶」一番良いゲームだった沖縄尚学戦 興南高校三年生座談会

2019.09.01

  興南高校に入って間もない一年生の夏。宮城大弥が決勝で美来工科高校を抑えて優勝。それから一年後の夏も連覇し、6名ほどが甲子園メンバーとなった。三連覇を狙った最後の夏は、残念ながら沖縄尚学高校の前に敗れてしまったが、興南高校野球部として彩りを見せてきた彼らの足跡は、これから先も決して色褪せるものではない。

U-18選出の宮城大弥とともに、高校野球に情熱を傾けてきた4人の三年生に話を伺い、彼らの思い出話しを聞いてきた。

<メンバー>
金城英佑(一塁手)
主将としてチームをまとめた。秋の県大会、三塁打1本、二塁打2本で打率4割ちょうど。決勝では先制タイムリー。秋の九州大会、熊本国府戦で6回にレフト線への二塁打を放った。

遠矢大雅(捕手)
宮城大弥をはじめ、又吉航遥西江悠の投手陣を支えてきた。秋の県では全6試合でヒットをマーク。打率5割に加え、三塁打2本、二塁打1本と長打力も披露した。

勝連大稀(遊撃手)
主に3番でクリーンアップを務めてきた好打者。秋の県大会では6試合中5試合でヒットをマークし三塁打2本。九州大会の熊本国府戦では、第1打席で二塁打を放った。

新垣和哉(外野手)
秋の県大会で4番ライトとして19打数8安打、打率.421。九州大会でも5番を務めた。熊本国府戦では5回、一死満塁でキッチリと犠牲フライで打点を挙げた

一番良いゲームだった沖縄尚学戦

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主将としてチームをまとめた金城英佑

- 今日はお集まり頂きありがとうございます。まず、最後の夏を終えて今の感想を聞いてみたいと思います。

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沖縄尚学vs興南

勝連 「決勝で死球(7回)をもらって。その後交代で、最後まで立てなかったことで悔しさはあります。しかし、みんなとここまでキツイ練習をやってきたことは間違いないわけで。ここで、これで終わりじゃない。先に繋がっていく。何よりこのメンバーとやれて楽しかった。」

金城 「決勝のあと、知人がDVDに焼いて渡してくれてそれを見た。これで終わったのかと涙を流している場面を見て、もう少し自分に力があったらなと振り返る思いがありました。キャプテンとしてやってきたけど結果、選抜大会も選手権大会もあと一つというところで行けなかった。もう少し自分に力があれば、まとまりも早くチーム力ももう一段上がっていたのかなと。
個人的にはキャプテンを続けてきたことが、これからの人生の糧になると思うし、興南で学んで培ってきたものを役立てていきたいです。」

遠矢 「興南ってどこかで危ない試合、接戦になる試合が常にあったなぁって。一つ上の代から試合に出させてもらっているけど、その夏は那覇高校との試合(4-3で勝利)、そして今年が宜野湾高校戦。
自分たち(遠矢、勝連、新垣は宜野湾市出身)地元を出て興南に来て。ましてや大弥が投げている中で6回も点を取られて(この時点で0-2)。ヒットも2本しか出てなかったし正直内心ヤバイと思っていた。でも、俺たちの方が絶対苦しい練習を積んできたはずだと!その思いがあの逆転に繋がった。
決勝では負けたけど、勝連が言ったようにやり切った感はあって。でもどこかで、英佑が言ったようにもっとまとまることが出来たんじゃないかなぁと思います。
あとは甲子園。テレビで沖縄尚学高校の奮闘を見ていて。自分たちがあそこにいたらなと。」

金城 「練習試合で勝った仙台育英高校が甲子園ベスト8。あそこにいたらな。」

遠矢 「そこも含めて、運も無かったのかなと。それでも自分としては、決勝は良い負け方だったなと思う。」

新垣 「自分もDVDを見たけど、沖縄尚学ナインよりも興南がヘトヘトで。一番辛そうだったのが大弥。追い付いて、最後に負けた。でも3人が言ったように、楽しかった。今夏の甲子園を見ていて、良いゲームはたくさんあったけど、自分たちの決勝が一番良い試合だった。悔いはありません。」

- 悔いの無い試合というのは、やりきった証拠。相手があっての野球だから勝ち負けはある。結果だけでしか見れないならこんなに辛いことは無いけど野球は、君たち高校球児はそうじゃない。自信を持って、次のステージに向かってほしいと願います。

[page_break:ギリギリの差。センバツへの切符がスルリと抜け落ちた筑陽学園戦 ]

ギリギリの差。センバツへの切符がスルリと抜け落ちた筑陽学園戦

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スラッガー・新垣和哉

―― では改めて、新チーム発足後から秋の大会、冬トレまでを振り返ってもらいましょう。 

新垣 「この中では自分だけが新人中央大会に出場してて。初戦勝って、甲子園組が居なくても以外とやれるんだなと(苦笑)。沖縄水産高校戦では負けたけど、絶対勝てないというのでもないぞと思った新人中央大会でした。」

金城 「このメンバーは、一つ上の代と甲子園に行ってる数が多くて。それなりに力はあるぞと周囲から大きく期待されていて。甲子園メンバーと比べると、場数が少なく経験がない自分がキャプテンになったのは戸惑ったけど。でもみんなが投票してくれたから頑張ろうと。それでも、先輩たちが築いてきたものを、自分たちの代では三日坊主でやってなかったりで、監督さんに怒られることからスタートしたチームだったな。チーム内での意識の高さも各々だった。」

遠矢 「仲村さんなど先輩たちがいた頃は自由に伸び伸びやらせてもらっていて。いざ自分たちの代になってみて。メンバーの者がしっかりやらないとついてこないという責任感が出て来た。監督さんからも、お前がしっかりバッテリーをまとめろと言われて。不安はあったけど、いざ秋の大会に入ると初戦からずっとコールド勝ち。」
(※)
1回戦 7-0(7) 沖縄工
2回戦 9-2(7) 知念
3回戦 9-2(7) 与勝
準々決勝 7-0(7) 宜野湾

遠矢 「準決勝も4対0(嘉手納)で勝ったけど、決勝は初めて追い掛けるゲームの中で焦りが出て負けた。大弥一人におんぶに抱っこというところもあったけど、やっぱり個々の力だけで戦っていたなと思います。」

勝連 「でも一番悔しかったのは、九州だよな。センバツを懸けたあのゲーム。(筑陽学園西館昂汰は)良いピッチャーだったね。」

金城 「リズムが凄く良いピッチャーだった。ポンポンとストライクを取られて。カウント悪くしちゃって。」

遠矢 「そして俺のタイブレーク。無死満塁で回ってきて。カウントは3Bー0S。良い当たりを打ったら一塁線ギリギリのファール。あれがフェアだったらなあと。その次も良い当たりだったけど、相手のショートがファインプレー。あれが一番悔しかった。」

―― 相手に失礼になることを承知で敢えて言わせてもらうと、日章学園さんは次の準決勝、4-10で明豊高校さんに大敗した。興南が惜敗した筑陽学園さんが優勝したこともあって、僕は絶対興南が選ばれると信じていた。

勝連 「自分たちも最後まで選ばれると信じていました。ディズニーランドで。」

―― ディズニーランドですか?

遠矢 「(笑)。ちょうど修学旅行期間中で。ディズニーランドに行った日が、選抜発表の日だったのです。だから、野球部みんなでディズニーランドの一箇所に集まって。」

勝連 「一気に盛り上がる準備をしていたのですが。」

遠矢 「日章学園さんって決まった瞬間、あぁ…しょうがないかぁ…な…みたいな感じになって(苦笑)。」

キツイ冬トレと思い出に残る練習

――あと一歩で手から抜け落ちた選抜切符。その悔しさを胸に迎えた冬トレ。今だから言える印象に残る練習を教えて下さい。

金城 「一年生の冬は自分がやりたい箇所を鍛えるという感じでしたが、二年の冬は内容が決まっていて。その中でも自分はランメニューがキツかった。」

―― 具体的に言うと? 

金城 「興南のグラウンドで、ホームからライト線、フェンス際を通りセンターを越してレフトフェンス際まで約200mあるということで。そこまでダッシュ。レフトフェンスからホームまでのラインをジョギングでホームを踏むと、休まず次の一本に進みます。」

遠矢 「これを全員が30秒台を守らねば叱咤が飛ぶ(苦笑)。最初の1,2本は出来ても疲れてくるし、一番キツかったよね。」

――十分想像出来ます(笑)

勝連 「自分は一つ上の代でやった真夏のカッパアップ。」

全員 「あれはヤバイ!(笑)」

勝連 「雨も降っていなくて太陽で暑い中雨具を着て。身体中、汗が滝のように流れてカッパの中に溜まっていた(笑)。痩せたいならガチで勧めるよね(笑)。」

遠矢 「それでも楽しい練習もありました。バッティング練習でホームランを狙って打つ練習があって。決勝の沖縄水産や九州大会で打てなかったので、打撃力を上げようと。元々パワーがある選手は楽しそうに打つけど、それ以外は飛ばないから苦しんでいましたね(笑)。でも冬トレの中で自分は一番楽しかった。」

――ちなみに、かっ飛ばすのは誰が一番上手だったのかな?

全員 「大弥!あいつだけ、投げても打っても別格!(笑)それと知念。」

遠矢 「あの頃、紅白ゲームも凄かったよなぁ。5本もホームランが飛び出して。俺と喜屋武と英佑と3者連続ホームランが出たりしてさ。」

全員 「うんうん。」

 敬語で親切丁寧な言葉で僕に対応してくれた興南ナイン。ですが座談会というテーマですので、その雰囲気になるように、互いに話しかけるような言葉にしていることは了解下さい。
次回は春の大会の話を中心に伺っていきます。お楽しみに。

(取材・写真・文/當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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