第646回 リベンジを果たさないと、高校野球は終われない 花咲徳栄女子硬式野球部【後編】2019年07月28日

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[1]最後の夢はみんなで日本一
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 第99回全国高校野球選手権大会で見事全国制覇を果たした花咲徳栄高校。その瞬間を、学校のパブリックビューイングで見守っていた同校の女子硬式野球部の選手たちが感じたことだ。誰もが、そう心に思いながらの練習が始まった。そうして今年、当時1年生だった選手たちが迎える最後の夏がやってきた。女子高校野球の歴史はまだまだ浅いが、彼女たちの野球への思いは熱い。そんな花咲徳栄女子硬式野球部を訪ねた。

夢と目標は大きく、目指すは男女そろっての日本一 花咲徳栄高校女子硬式野球部【前編】

最後の夢はみんなで日本一



花咲徳栄・前田侑里さん

 茨城県の土浦市から約2時間をかけて通学しているという前田侑里さんは捕手で副主将としてチームを引っ張る存在だ。

 小さい頃に、いつも通る道で野球をやっているのを見て、自分も野球をやってみたいというのが始めた切っ掛けだというが、その後はクラブチームに入団し男子とともにプレーしていた。中学に進んでからは、前田さんと同様に中学野球部と女子だけのクラブチームとの二足草鞋を経験し、ポジションも内野手をやったり捕手をやったりということだった。

 そして、高校進学の際には、「いくつかの体験入部を経験してみて、一番自分に雰囲気があっている」ということで、少し通学距離はあったが花咲徳栄を選択した。そして、実際に入学してみてからも、「明るくて、和気藹々としているけれども、しっかりとけじめは出来ている」というチームの雰囲気が好きだという。

 中学時代は内野手と捕手とをやっていた。高校では現在は捕手として頑張っているが、「自分で試合を動かせるので、やりがいがある」と、捕手というポジションに野球の面白さを見出している。

 そして、卒業後に関しても、前田さん同様に、「大学のチームかクラブチームになるのかはわからないけれども、野球は続けていきたい」という思いだ。



花咲徳栄投手陣、左から出路明日香、吉岡美咲、片野坂梨音

 3人の投手にも話を聞いてみた。

 3年生でエースとしてチームを引っ張る片野坂梨音(かたのさか りね)さんは、祖父が監督をやっていたという少年野球チームに誘われて小学校3年から参加したことが野球との出合った切っ掛けだった。小学生の時は投手と三塁手だったが、その後中学へ進んでそのまま中学の野球部に入部して投手を中心としながら、他のポジションもこなすという選手だったという。

「小中学校の時は男子の中に交じってやっていたのだけれども、高校に入って初めて女子だけのチームという形で最初は少し戸惑いというか、女子同士の独特の悩みみたいなのもありました。だけど、今は最後の夏に向けて悔いの内容にやっていきたい」

 その思いは強い。特に、春は2年生ばかりの新しいチームに敗れたということもあって、その悔しさは一入だ。

「やっぱり、リベンジを果たさなくては(高校野球を)終われません。そのためには、その相手と当るまでは負けるわけにはいかないんです」

 しなやかなオーバーハンドで、流れるようなフォームは、日々の練習でさらに精度を上げていっている。チームの柱として「頼れるエース」となっていくためにも、努力は怠らない。

「まずは、高校でやり切って、その先のことは、その後に考えたい」と言うが、「何らかの形でスポーツとは関わっていきたい」という将来も見据えている。

 2年生の吉岡美咲さんは、「姉が野球をやっていて、小学校1年の時に、その練習についていったのが切っ掛けで、いつの間にか始めていた」という。

 そんな野球だが、「アニメなどを見ているうちに、カッコいいなぁと思うようになって、本格的に始めていきたいと思った」という。そして、中学ではやっていたのだが、花咲徳栄へは実は当初はマネージャーとして入部している。

「中学の時に、正直、あんまり楽しいと思ったことがなかったので…。だけど、中学3年の時に花咲徳栄が甲子園で全国制覇して、ここに入りたいと思いました。そして、1年生の大会の後に、やはり選手としてやらせてもらいたいということを阿部先生にもお願いして、それで選手という形になりました」

 そんな経緯で現在は投手を務めている吉岡さんだが、「最後の夢は、みんなで日本一です」ときっぱりと言い切る。

 出路明日香(でじ あすか)さんは、「小学校1年の時に、何かスポーツを始めたいと思っていた時に、体験クラブチームで野球を経験して、面白いなと思ったので始めた」というのが切っ掛けだった。

 そして、中学では花咲徳栄のグラウンドを借りて練習することもあるという地元のクラブチームに所属していた。そんなこともあって、自然な形で花咲徳栄を選択した。たまたま、中学3年の時に花咲徳栄の全国制覇を見たということもあり、「身近にすごい選手がいるのは、とても刺激になるし楽しみ」という思いでもあった。

 投手としては、「今年のチームで優勝したいというのが今の目標」と言う。そして、自分自身に関しては、「将来的にはJAPANに選ばれるような選手になっていきたい。そのためには、自分のいいところは伸ばしていきながら、上の投手に追いついていかれるように頑張りたい」と、高い意識で前を向いている。

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
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