第645回 「私たちも続かなくては」男子の全国制覇を見届け、固めた決意 花咲徳栄高校女子硬式野球部【前編】2019年07月27日

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[1]一部活、一施設の恵まれた環境
[2]男子野球部の活躍が刺激に

「私たちも、それに続かなくては」

 第99回全国高校野球選手権大会で見事全国制覇を果たした花咲徳栄高校。その瞬間を、学校のパブリックビューイングで見守っていた同校の女子硬式野球部の選手たちが感じたことだ。誰もが、そう心に思いながらの練習が始まった。そうして今年、当時1年生だった選手たちが迎える最後の夏がやってきた。女子高校野球の歴史はまだまだ浅いが、彼女たちの野球への思いは熱い。そんな花咲徳栄女子硬式野球部を訪ねた。

一部活、一施設の恵まれた環境



ピッチング練習をする吉岡美咲さん

 埼玉県を中心として一大学園を築いている佐藤栄学園(さとえがくえん)。グループとしては、幾多のオリンピック選手などを輩出している埼玉栄はじめ、近年進学校としての実績も著しい栄東栄北、その上には関甲新学生野球連盟の中核として活躍している平成国際大もある。また、北海道にも甲子園出場実績もある北海道栄を有している。

 東武伊勢崎線の花崎駅から徒歩10分くらいのところに位置する花咲徳栄は、「一部活、一施設」ということをモットーとしている。だから、各部とも環境には恵まれているといえる。駅から学校へ向かっていくと、まずは広大な佐藤照子メモリアルスタジアムと称されている先代理事長の名を冠したグラウンドが目に入ってくる。そして、そのスタジアムを左手に見ながらさらに歩いていくと、花咲徳栄の校門にたどり着く。

 校門をくぐるとすぐに全国でも上位と言われている女子ソフトボール部の元気のいい掛け声が聞こえてくる。そのグラウンドを通り過ぎると「徳栄ドーム」と称する野球部の雨天練習場がある。そして、その向こうに、2017年夏に全国制覇を果たした野球部専用グラウンドがあるが、女子硬式野球部のグラウンドはその左翼後方、つまり徳栄ドームに隣接した形で設けられている。

 男子のそれに比べると広さもないし、いささか見劣りすることは否めないが、それでも校舎のあるキャンパスに専用グラウンドを有しているというだけでも、恵まれた環境と言っていいであろう。そこへ向かう間にも、すれ違った生徒たちが「こんにちは」と、歯切れよく挨拶の声をかけてくれる。そんな雰囲気も心地いいと思えるものだ。

 女子野球部専用球場では3年生26人とマネージャー2人、2年生13人、1年生8人とマネージャー2人という、合わせて51人の女子野球部員が練習に励んでいる。

 部員数が、学年で減少しているようだが、そのあたりに関して、女子野球部の創成期から指導している阿部清一監督は、「一つは3年生が多かったということで、野球をやりたいという女子生徒が、他へ流れたということがあったと思います。それに、ここへきて女子野球部を有するところが、全国的にも増えてきていますから、野球をやりたい女子生徒にとって選択肢が増えたということもあるのではないでしょうか」と分析していた。

 花咲徳栄としては、女子プロ野球の寺部歩美捕手(愛知フローラ主将)など、多くの女子プロ野球選手を輩出している。埼玉アストライヤの大山唯監督も地元の尚美学園大を経ているが花咲徳栄出身である。また、ヴィーナスリーグ1部所属のアサヒトラスト女子硬式野球部の姫野真由、落合彩伽などもいる。

 女子高校野球部を有する学校は、女子高校野球がスタートした2000年当初、鹿児島県の神村学園と東京都の蒲田女子と駒沢学園女子、そして埼玉県の埼玉栄と花咲徳栄の5校しか存在していなかった。そんな時代が久しく続いていたが、約20年を経て毎年のように創部する学校が増えてきて全国で30校を超えるようになってきた。

 高校で野球をやりたいという女子生徒たちは、そうした中で、学校のある場所を考慮したり体験入部などを経て学校を選んで入学してくるという。女子高校野球の老舗でもある花咲徳栄だけに、たまたま今年は新入生が少なかったとはいえ、野球をやれる環境を求めて全国から志望してくる生徒は少なくない。

 学校としては、特待生枠などを設けているわけではないので、あくまでも入学してきた生徒たちでチームを作っていくという方針だ。しかし、遠隔地の生徒たちを迎え入れる態勢は整えられている。現在も、北は青森や秋田から野球環境を求めて入学してきたという生徒が頑張っている。

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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