若いチームを3年生が引っ張る!昌平の上級生は何が凄い!?昌平(埼玉)【後編】
埼玉県北葛飾郡杉戸町に所在し、サッカー部が全国的な強豪として有名な昌平。
昨年の夏、第100回北埼玉県大会で春日部共栄を破ってから勢いに乗り、史上最高のベスト4入りを果たした。この春も県大会ベスト8入りし、絶対的な優勝候補がいない今年の埼玉県では優勝を狙える位置にある。
そのチームを率いる黒坂洋介監督はいかにして、優勝候補と呼ばれるチームに育て上げたのか。後編では、夏のキーマン2人にフォーカスを当てて進めていく。
前編はこちら!
◆知識と技術の引き出しを増やし、黒坂流で悲願の甲子園を目指す!昌平(埼玉)【前編】
主将・佐藤克樹が女房役としてまとめ上げる
主将・佐藤克樹
取材当日は生憎の天気。新設された室内練習場で、速めに設定されたマシンが目につく。まさに、「傾向と対策」に基づくもので行われていた。春季関東大会を懸けた準々決勝で浦和実に3対1で敗戦を喫した。相手先発の豆田泰志の力のあるストレートに打線が対応できずに、11奪三振を喰らった。あのストレートに対応できないと埼玉を制することは出来ないと肝に銘じ、浮き上がるほどのボールをマシンでセットして夏に向け対策を施していた。
夏のキーマンには、2人の名前を挙げた黒坂監督。
1人は主将を務める佐藤克樹捕手。そして、もう1人は背番号20番でベンチ入りした桜井健汰選手がこの夏を引っ張る。
エースである米山魁乙の誘いで昌平に入部した佐藤。米山との接点は、中学時代の選抜チームからの付き合い。下級生の時から期待をされ、旧チームではベンチ入りをしていたという。試合中は、黒坂監督の横に陣取り、呟きに常に耳を傾けていた。
「監督がボソッという言葉がとても勉強になりました。配球面や相手の傾向を中心に言ってくださるので、監督の頭の中というか考え方が理解できるのが楽しかったです」と有意義な時間をベンチ内で過ごし知識を増やしていった。。
たくさんの知識を身に着け、始まった新チームでは不安の方が大きかったという。
「まずは、米山のボールを捕ることに苦労しましたね。140㎞超えるストレートを捕るキャッチングやキレのある変化球が全然捕れず、迷惑を掛けてしまい大変でした」
日々、マシンを使った練習でキャッチング技術を磨き、ブロッキングに時間を費やしていゆく毎日。それが成果で、着実に技術が上がり堂々とサインを出し配球へと結び付けていった。
今年の昌平は、ポテンシャルの高い選手で役者が揃うが、佐藤はある悩みがあった。
それは、バッテリーを組む米山と一塁手の大澤歩以外は1・2年生と若いチームであり、まとめるのが大変であること。3年生は、スタメンに名を連ねることは少なく他の3年生のモチベーションを心配していた。
「実力至上主義なので、力が無いと試合には当然出れません。しかし、出られない3年生が腐ってしまうのを懸念していました」。
そこで冬には、ある工夫を佐藤が見せる。普段のノックで最初はレギュラーの選手が受けるのだが、控えの3年生に受けさせたのだ。3年生が積極的に練習を盛り上げ、下級生を鼓舞しチームに一体感を与えた。
町・学校・チームが認める人間性
桜井健汰
迎えた3月の関西遠征で、事態は起きる。遠征前、黒坂監督の口からは3年生にとって最後の見極めの練習試合とは口にしていなかった。
すると4月、遠征を終えた3年生10人が黒坂監督のもとを訪ねサポートに回らせてくださいと名乗りをあげた。4月で3年生がサポートに回るのは、異例の早さ。それでも、3年生みずから結果が出なかったらサポートに回ろうと決心しており、チームの為にと行動に出た。これがチームの分岐点となり、佐藤の心配は良い方向へと傾いた瞬間でもあった。
黒坂監督が絶大な信頼を置く佐藤は、チームを内外から引っ張り夏に向けてチームを一つにする。
もう一人のキーマンである桜井健汰を黒坂監督はこう評価する。
「チーム一の努力家。2年時は、応援団長を務め全校応援でも指揮をとりまとめ上げれるような選手なんです。負けているときでも雰囲気を変えれて、試合出れば何かを起こしてくれるミラクルボーイです(笑)」
桜井は何か人を惹きつける魅力のある選手。昨夏の応援を見た校長先生や杉戸町長から「あの子は元気があっていいね」と評価を受けるほどの人柄と性格。他の部活の壮行会では、是非とお呼びがかかり、昨年の全校応援の練習では放送室でマイクを握り、中高併せて1900人を一つにした。応援の大事さは、シダックス時代の都市対抗での経験が物語っていると黒坂監督。
今年の桜井は、役割が一味違う。高校生活2度目のベンチ入りを勝ち取った桜井は、三塁コーチャーやベンチでの雰囲気作りに徹している。
「監督さんからは、負けている時こそ勝っている雰囲気を作り出そうと常日頃言われています。その中に自分の役割を見出して仕事をすることが、自分の役割だと思います」
主役と脇役を両方を兼ね備えた今年の昌平。
悲願の甲子園初出場を目指して、戦い続ける昌平ナインから今夏は目が離せない。
(取材・編集部)
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