選抜大会後もなお続ける成長 横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)はこの夏、新たな歴史を刻む【後編】
昨夏の全国選手権大会で、チーム最高成績となる準優勝を成し遂げた横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)。あと一歩で届かなかった悲願の日本一へ向けて、練習を積み重ねてきたこの1年間の活動に迫った。
後編では、選抜大会後もなお成長を続けるチーム状況を追った。
◆経験不足を乗り越えて飛躍の春に 横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)の歩み【前編】
選抜の敗戦をきっかけに激化した競争
小宮主将のもとに集まる選手たち
続く2回戦は村田女子(東京)と対戦し、「練習試合をすることも多い相手だったのでイメージがしやすく、落ち着いてプレーできました」(小宮主将)と8対2で快勝。
しかし、準々決勝は至学館(愛知)に3対10で5回コールド負け。「ランナーを出してから余裕がなく、ストレート頼りになってしまった」(時田投手)と連投のエースが力尽きた形となり、投手層の薄さが露呈した結果となった。
だが、「この敗戦をきっかけに、『自分たちも頑張らなきゃ』と下級生たちが時田に続く2番手投手の座を競い合ってくれるようになった」と田村監督。
現在は、長身から投げ下ろす角度のある真っ直ぐで押していくピッチングが持ち味の西久保凛(2年)、間の取り方や駆け引きに長ける小安さくら(2年)、力強いストレートが武器の川本千絵(2年)、本格派の関澤侑茉(2年)に、1年生も加わり熾烈な競争を繰り広げている。
それでも時田投手は「後輩の心を強くするのは先輩次第だと思って、これまでよりも厳しい声を掛けるようにしていますし、2年生たちも技術的なことを質問するようになってきて、試合で活かしているように見えます。春は自分一人で戦おうとして負けてしまいましたが、夏は一人じゃなく、後輩に任せられるところは頼りにして戦っていきたい」と後輩の成長を歓迎しているようだ。
夏の初戦は福知山成美と再戦
選手にアドバイスを送る田村知佳監督
野手についても1年生が加入したことでポジションを一から組み直しているが、4番でチーム1の飛距離を持つ小宮主将を中心に、打っては切り込み役の1番打者、守っては内野のキーマンとしてショートを任される副主将の二宮奈々花(3年)。的確なバッティングができ、守備でも冷静さが光る福嶋清香(3年)。強肩でパンチ力があり、精神面でも成長が見られる立谷美澪(3年)らが主軸としてチームを引っ張る。
そして、キャッチャーには自分の考えを発言できる1年生の成田紫瑛を抜擢。今春の選抜大会後は、こうした選手の入れ替えやポジションチェンジにより、ヴィーナスリーグ(関東地区を中心に、学生チームから社会人チームまでが参加しているリーグ戦。横浜隼人は1部と3部に所属)でも苦戦が続いたが、6月には今季初勝利を挙げ「これまではやりたいプレーがあっても技術が付いてきていなかったが、ここに来てやっと野球になってきました」(田村監督)と上昇気配が漂っている。
ティーバッティングの様子
来る7月26日には夏の選手権大会が開幕。初戦の相手は春の選抜と同じ福知山成美に決まったが、「今のままでは勝てない」と田村監督。そこで、バントやスクイズ。右方向へのゴロなど小技の精度を高めつつ、ケガをしないようにコンディションを整えて大会を迎える心づもりだ。
また、小宮主将は「夏に向けて、守備位置が固まってきたので内外野の連携を高め、走塁をさらに極めていきたい」と話しており、特に走塁については「選手だけで話し合う機会があって、その時に『セーフティーリードの距離を知りたい』という声が上がったんです。それで、田村監督に時間をもらって『どうしたらピッチャーにプレッシャーをかけられるのか』を確認しました」と貪欲な姿勢は変わっていない。
そして、時田投手は「左投手なので牽制球を磨いて走者をアウトにしたり、エンドランのタイミングでスタートを遅らせたりしたい」と課題を挙げ、「目標は全国制覇」と野球部に新たな歴史を刻むことを誓った。
今季は苦しみながらも選抜で8強入りするなど、勝負強さを見せている横浜隼人。夏はさらに戦力を充実させて臨むことになりそうだ。
(取材・大平 明)
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