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経験不足を乗り越えて飛躍の春に 横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)の歩み【前編】

2019.07.25

 昨夏の全国選手権大会で、チーム最高成績となる準優勝を成し遂げた横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)。あと一歩で届かなかった悲願の日本一へ向けて、練習を積み重ねてきたこの1年間の活動に迫った。

結果を残せなかった新チーム

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ランニングの様子

 全国準Vを果たした昨年のチームは経験豊富で実力のある選手が揃っていたという横浜隼人。しかし、それゆえに今季のチームは最上級生となった3年生ですら試合経験の乏しい選手ばかりで、新チーム結成時からなかなか結果が残せなかったという。

 チームを率いる田村知佳監督も「スタメンが総入れ替えになったので、9つのポジションを埋めるのも苦労するような状況でしたから、最初は試合にならなかったですね」と振り返る。

 実際、昨年8月に行われた1、2年生大会を皮切りに、関東大会、1年生大会とすべて初戦敗退。「先輩たちのチームはあれだけ勝てていたのに自分たちは全然ダメで、どうしたらいいのかも分からずにかなり落ち込みました」と小宮春菜主将(3年)。エースの時田怜奈投手(3年)も「先輩たちの姿を間近で見ていたはずなのに、自分たちのプレーに活かすことができませんでした」と悔しさをにじませた。

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チームをまとめる小宮春菜主将(横浜隼人女子硬式野球部)

 そこで、冬のオフシーズンは基本的なトレーニングから始めた横浜隼人。
 「体作りの面では週1回、トレーナーの先生に来ていただいて、体の動かし方や走り方を指導してもらいながら走り込みをしました。ダッシュを中心に100m弱くらいの距離を10本。さらに坂道を駆け上がっている選手もいましたね。それからバットに振られてしまっている選手が多かったので、まずはしっかりとバットを振ることをテーマに掲げました」と田村監督。
 腕立て伏せやロープを波状に動かすバトルロープで上半身を強化しながら、素振りやロングティーで振り込んだ。

 また、昨年は重たいバットを使っていたが、今年はスイングの軌道を体得するため、逆に軽いバットを使用。こうした練習によりスイングスピードも向上し、飛距離もどんどんと伸びていったという。さらに守備練習では「手で転がしてもらったボールを捕って、ハンドリングを良くし、同時に足の使い方に気を配って正しいステップの仕方を身につけました」(小宮主将)と基本中の基本からやり直した。

[page_break:力を入れていた機動力をより強化]

力を入れていた機動力をより強化

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走塁練習を行う様子

 そして、今春の選抜大会で福知山成美(京都)と対戦することが決まった2月の半ば頃からは走塁練習に力を入れてきた。「正直なところ5回に1回勝てたら良いというくらいの強豪が相手だったので、その試合に勝つために走塁を鍛えようと考えました」(田村監督)。

 元々、横浜隼人は走塁に力を入れており、機動力で相手の守備をかき乱して得点を挙げるのが特長なのだが、「私たちの代は試合経験が少なく、足を使いたい場面でなかなかスタートを切ることができないこともあったので盗塁の練習をしました」と、小宮主将。さらには「経験が少ないので、実戦形式の練習を重ねてきました」(田村監督)とランナー付きのノックで状況判断を磨き、ベースランニングやオーバーランのとり方も練習してきた。

 一方で、エースの時田投手は「チームではあまり長い距離を走らないのでランニングの量を増やして下半身を強化し、ダッシュやロープを使ったトレーニングではチームメートの誰にも負けないように頑張りました」と地道なトレーニングに励んだ。その成果もあって「春は大事な場面でのストレートが良くなって、低めに投げても垂れないようになった」という。

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エースの時田怜奈(横浜隼人女子硬式野球部)

 こうして迎えた選抜大会では福知山成美に5対3で快勝。特に1回表は盗塁で二塁へ進んだ走者をバントで三塁に送り、小宮主将の犠牲フライで先制。目論見通りの足を使った攻撃で初回からリズムに乗った。

 「ベンチも盛り上がりましたし、その後、逆転されたのですが、ずっと良い流れで試合ができていました」(小宮主将)と、6回表には再逆転。先発の時田投手も直後の6回裏を3人でピシャリと抑えるなど、巧みな配球で打たせて取るピッチングが際立って完投。

 「試合前は緊張していたのですが、田村監督から『練習試合で社会人チームにも投げてきたのだから大丈夫』と声を掛けてもらいました」と不安をぬぐい去り、会心の勝利を挙げた。

前編はここまで!後編では、新戦力が加入してさらに上昇の気配を見せるチーム状況に迫っていきます!後編もお楽しみに。

【後編を読む】選抜大会後もなお続ける成長 横浜隼人女子硬式野球部(神奈川)はこの夏、新たな歴史を刻む【後編】

(取材・大平 明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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