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花巻東の伝統を守り、秋から磨いた強打で2年連続の聖地へ 花巻東(岩手)

2019.07.10

 2009年の躍進により、全国クラスの名門校へ成長した花巻東。その後も継続的に甲子園を狙えるチームに育っているのは強固な習慣だ。全力疾走、カバーリング、野球ノート、ベンチワーク、厳しい規律で、精神的に強い選手を育て上げ、さらに菊池雄星大谷翔平や、大学、社会人で活躍する選手を多く輩出しているように、個々の選手に合った技術指導により、毎年、甲子園を狙えるチームに育てあげている。
 今年のチームは秋の東北大会4強、春の東北大会出場を果たし、2年連続の夏の甲子園出場が狙えるチームとなっている。今年はどんなチームカラーで勝負しているのか。

理性が規律と伝統を守る心が生まれる

花巻東の伝統を守り、秋から磨いた強打で2年連続の聖地へ 花巻東(岩手) | 高校野球ドットコム
グラウンド整備をする選手たち

 無駄がない。それが花巻東の練習の雰囲気だ。3班に分かれて練習を行い、各自がそれぞれの課題に向き合い、実戦形式の練習となれば、1つのミス、精神的な緩みを逃さず、厳しい指摘が飛ぶ。そして練習中でもミーティングを行い、何が足りないのかと話し合う。
 選手はキビキビと動き、ボール拾いしている選手は見当たらない。選手がそれぞれの課題に向き合い、何かあれば、話し合う姿が見られる。
 花巻東の練習風景で特徴的なのは、グラウンド整備の頻度が多いこと。普通ならば、ある程度の練習の区切りがついたところでグラウンド整備をするチームが多いと思うが、花巻東の場合、少しでも荒れているように見えれば、実戦練習の合間にグラウンド整備する。花巻東の1年生に話を聞くと、
「自分たちの中学は人数が少ないので、比較するのが難しいのですが、それでもグラウンド整備することでイレギュラーが少なくなりますし、大事なことだと思います」
 と語るように、意義を理解している。

「今年のチームは僕を含めて4人が甲子園でベンチ入りを経験していますが、先輩たちが築き上げた一塁までの全力疾走、カバーリング、ベンチ内は元気ある雰囲気などを継続することを考えています」
 話すのが中心人物である主将・中村勇真は久慈中出身。花巻東の野球に憧れ、名門の門を叩いた。寮での点呼の時間、食べていいもの、飲んでいいものまで制限があり、ルールの厳しさを実感しているが、「甲子園まで応援していただいている学校の先生方、生徒の皆さんがいる中で、立ち居振る舞いというのは大事ですし、社会ではルールを守って行動することが当たり前なので」としっかりと受け止めている。また、厳しいルールを守る気持ち、理性を持った行動ができる理由は偉大な先輩たちが作り上げた伝統を守らない思いがある。
「何かあれば、大谷さんが母校の花巻東といわれますので、そういう先輩たちに泥を塗ってはいけない思いは持ち続けています」

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花巻東は坊主が強制されていない

 

 また、昨秋から花巻東は坊主強制がなくなり、髪を伸ばした選手も多く見られる。ただ長髪にならず、大学生らしい髪型である。主将の中村は髪を伸ばしたことで、身だしなみを気にするようになった。
「坊主ならば寝癖も立ちませんが、髪を伸ばしたことで、しっかりと髪型や身だしなみというのはより注意するようになりました」
 髪を伸ばすことは、選手たちにとってさらに選手の理性を鍛える改革となったのだ。

佐々木を攻略するには、まず自分に自信を持つしかない

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中村勇真主将(花巻東)

 そんな今年のチームについて、打撃のチームだと中村主将は語る。実際に秋の試合を振り返っても逆転勝ちが多かった。
 東北大会では、一昨年秋(2017年)の決勝戦で対決した聖光学院と対戦し、2回終わって、1対8と7点リードを許したが、じわじわ追い上げ、8回表に7点をあげて、逆転勝利を上げた。さらに仙台育英戦でも一時、0対5までリードを許す展開になったが、追いついて、延長10回裏にサヨナラ勝ちを決め、ベスト4進出を決めた。中村は「粘る姿は出せたと思いますし、今年のチームは甲子園に出場して、スタートが遅れたところもありますが、公式戦ではそれは言い訳にならないですし、強い気持ちを出すことができたと思います」
 準決勝で八戸学院光星に3対7で敗れ、センバツ出場はならなかった。東北大会では3試合で、21得点を記録したが、八戸学院光星打線の差を感じていた。
「全国レベルの打線はスイングスピードの速さは違うと思いましたし、自分たちはまだまだだと感じました。また投手陣も失点が多く、投手陣の底上げも春へ向けての課題となりました」

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エース・西舘勇陽(花巻東)

 この冬場、打者はスイングスピードを速くして、長打が出る確率を高めるために、筋力トレーニング、打撃練習に取り組み、また投手はウエイトトレーニングだけではなく、学校近くにある花巻球場の室内ブルペンで投球練習を行い、秋に出た課題に向き合った。エースの西舘勇陽は体重移動の改善を行い、最速147キロを計測するまでに速くなり、野手については例年よりも本塁打が出ており、手応えを感じている。

 春の大会では県大会優勝。中村は「苦しい試合もありましたが、エース・西舘が粘り強いピッチングを見せてくれました」とエースのピッチングをたたえた。

 夏の大会へ向けて、実戦形式の練習を中心に行い、細かな連携を確認。さらに、投手陣はウエイトトレーニングを行い、夏へ向けてパフォーマンスを発揮出来る準備を行っている。夏ではセンバツ出場の盛岡大附、163キロ右腕・佐々木朗希擁する大船渡は逆のブロックとなり、決勝戦に進めば、対戦する可能性がある。
 中村は「もし佐々木投手と当たったとすれば、速球にびびらず、自信を持って打席に入る。びびってしまえば、今まで2年半の練習は意味がないので。夏まで打撃も、投手陣の調子をあげて、自信を持って臨みたいと思います」
 夏になればどこも強敵ばかり。簡単に勝てる大会ではない。
 でも自分たちの積み重ねには大きな自信を持っている。あとは夏に最大限発揮するだけ。土壇場の勝負強さを見せ、令和初の岩手王者を勝ち取る。

(取材・河嶋 宗一

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第101回 全国高等学校野球選手権 岩手大会
花巻東、盛岡大附の2大勢力がリードか?佐々木朗希擁する大船渡にも注目!【岩手大会展望】
西舘 勇陽(花巻東)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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