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五感を研ぎ澄まし「第六感」は磨きあげる!全員が1つとなって甲子園を掴む!神村学園(鹿児島)【後編】

2019.07.03

 前編では春の鹿児島県大会王者であり、伝統的に攻撃的野球を展開する神村学園の現在について伺った。後編では今年1年間のチームの歩みについて迫っていく。

 全てを「やり切る!」 「守り勝つ野球」を目指す 神村学園(鹿児島)【前編】

もう1つ壁を越えなければならない

五感を研ぎ澄まし「第六感」は磨きあげる!全員が1つとなって甲子園を掴む!神村学園(鹿児島)【後編】 | 高校野球ドットコム
選手へ指導する小田監督

 昨夏、悔しい初戦敗退の後、新チーム最初の秋の鹿児島大会は決勝まで全6試合無失策というまさに「守り勝つ」野球をやっていた。決勝の鹿屋中央戦など、相手に傾きかけた流れを堅守で引き寄せた試合もあった。だが一冬越えた春、同じく鹿児島大会を制することはできたが、エラーはもちろん、記録に出ないミスも多く、不安定な内容の試合が多かった。前述したように、決勝戦の後の閉会式ではどこか気の抜けたような行進になっていた。

 「全てをやり切る」ことができるチームなら、どんな試合内容であっても気持ちを切り替え、きびきびと、堂々とした態度で閉会式に臨む。それが忙しい中、野球部のためにはるばる串木野から全校応援をやってくれた学校や保護者、自分たちを応援してくれた人に対する礼儀ではないか。

 そういったところに気持ちが回らず、終盤追い上げられた不安定な試合運びだったことに心を奪われ、今やるべきことに集中できていないところに、このチームがもう一つ壁を乗り越えられない現状を物語っているように小田監督は思われた。

 「冬のトレーニング期間をあまり良い雰囲気で過ごせなかった」と松尾主将。鹿児島を制し、神宮大会優勝、センバツ出場をかかげて九州大会に臨んだが、準々決勝で大分にコールド負けし、4年ぶりのセンバツ出場も果たせなかった。

 野球のトレーニングはそれなりに真剣に取り組んだつもりだが、集合時間に遅れる、開始時間を守れないなど野球も含めた日常生活の面で「甘さ」が出てはいなかったか。春の鹿児島大会、勝った試合でもミスが多く、スキの多かった内容に、小田監督が「今のチームの現状を物語っている」と再三話していたことを思い出した。

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五感を磨く

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神村学園のミーティングの様子

 4月以降、松尾主将の発案で起床時間をそれまでの午前6時から30分早めた。朝は全員でそろってグラウンドを歩くことから始めていたが、その前に5分から10分間、各自で思いのままに散歩することを取り入れた。

 散じて歩く。言葉通りに思いのまま寮やグラウンドの周辺を1人で歩く。季節の移ろい、風や草花の匂い、普段夢中になって野球をやっているだけでは気づかなかったことを感じる。

 ボールが落ちていたり、ネットが破れているのを気づくこともあるだろう。短い時間の中で「五感を研ぎ澄ます」(小田監督)感覚を身に着けるのが、散歩の狙いだ。携帯電話、スマートフォン、タブレット、PC…様々な情報機器に囲まれ、有象無象の情報が氾濫する中で育った現在の子供たちは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感が知らず知らずのうちに鈍ってはいないだろうか。ここぞという勝負をものにする「第六感」も五感を磨くところから土台にある。

 春の九州大会は初戦で興南(沖縄)にサヨナラ負け、5月の南日本招待は桐光学園(神奈川)に勝機をものにできず引き分け、NHK旗は準々決勝で鹿児島城西にサヨナラ負けを喫し、県内公式戦初黒星を喫した。

 この夏、第1シードであっても、甲子園をつかむことが険しい道であることは十分に身に染みている。夏は初戦から全員が一つにまとまり、惜しみなくやるべきことをやり切るつもりだ。

(取材・政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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