第629回 全てを「やり切る!」 「守り勝つ野球」を目指す 神村学園(鹿児島)【前編】2019年07月02日

印刷する このエントリーをはてなブックマークに追加   

【目次】
【神村学園の練習の模様をギャラリーで】
[1]先輩たちの分まで
[2]「守り勝つ」野球

 野球部が練習するグラウンドに足を運んで、まず目についたのは鮮やかな朱色の練習キャップだった。
 それまで青色だった練習キャップを「赤」に変えたのは4月に春の鹿児島大会が終わって、新1年生が合流した頃だという。

 「今のままでは甲子園は『赤信号』という意味ですよ」。
 小田大介監督が真剣な表情で教えてくれた。秋、春と鹿児島大会を制し、選手層の厚さ、目指す野球に対する妥協のない姿勢で、県内では頭一つ抜けている存在だと思っていたが、監督、選手の認識は全く違っていた。

先輩たちの分まで



ノックを受ける神村学園の選手たち

 4月5日にあった春決勝戦、連続優勝を決めて閉会式を終えた直後の光景を思い出した。
 「なんだ! あの行進は!」
 小田監督が開口一番に発したのは、優勝を称えることでも、野球の話でもなく、閉会式に臨む選手の姿勢がどこか気が抜けていたことへのカミナリだった。

 「全てのことをちゃんとやり切る。野球のことだけじゃなく、日常生活のことも含めて。中途半端でいい加減なことをしていると、絶対に結果はついてこない」信念がある。神村学園が2年ぶりに夏の甲子園への切符を手にし、目指す「全国制覇」を達成できるかどうかは「やり切る」姿勢を徹底できるかどうかがカギになりそうだ。

 「昨年のチームに比べると個の力はない」と小田監督。羽月 隆太郎が広島、渡邉 陸がソフトバンク育成、昨年の3年生は神村学園史上で初めて同学年で2人が同時にプロ入りするなど個の能力の高い選手がそろっていた。今年のチームにはドラフトで指名されるような特別に秀でた選手はいないが「選手層が厚く、まとまる力がある」のが特徴だ。

 3年生の中には「先輩たちの分まで頑張りたい」(松尾 将太主将)特別な想いがある。昨年のチームは17年秋の大会を制し、18年春も順当にベスト4まで勝ち進んでいたが、この時点で部内での暴力事件が発覚。準決勝以降の試合を出場辞退し、チームには夏の大会直前までの対外試合禁止処分が下された。夏の大会に出られない最悪の事態は免れたが、4月から7月に夏の大会が開幕するまでの期間、練習試合を含めた対外試合が全くできず、日々の練習と紅白戦だけで過ごす毎日だった。

 「相手のことが何も分からないまま、日々を過ごすのが何より辛かった」と現チームで4番に座る田本 涼(3年)は振り返る。春の大会以降、4月の九州大会、大型連休中の県外遠征、南日本招待野球、NHK旗と対外試合を重ねることで、自分たちが他のライバルチームに比べて何が勝っていて、何が足りていないか、「物差し」を持って夏に向けての準備をする。「物差し」がないまま、自分たちだけで準備を進める難しさを痛感したのがちょうど1年前のこの時期だった。

 チームは第4シードだったが加治木工に逆転負け。個の力はあってもそれを出し切ることができず初戦で姿を消した。その時に味わった悔しさは間違いなく今のチームのエネルギーになっている。

【次のページ】 「守り勝つ」野球

この記事についてTwitterでつぶやく この記事についてFacebbokに投稿する
【関連記事】
川内vs種子島中央【鹿児島県 2020年秋の大会 第147回九州地区高等学校野球大会鹿児島県予選】
枕崎vs川内商工【鹿児島県 2020年秋の大会 第147回九州地区高等学校野球大会鹿児島県予選】
神村学園vs錦江湾【鹿児島県 2020年秋の大会 第147回九州地区高等学校野球大会鹿児島県予選】
神村学園vs国分中央【鹿児島県 2020鹿児島県夏季高等学校野球大会】
神村学園vs樟南【鹿児島県 2020鹿児島県夏季高等学校野球大会】
第268回 夏の代替大会が開催されることを願って…。全国のドラフト・注目野手リスト一覧【ドラフト特集コラム】
第267回 夏の代替大会が開催されることを願って…。全国のドラフト・注目投手一覧【ドラフト特集コラム】
第68回 そのマネジメントはまるで社長。就任1年目で甲子園出場を経験した鬼塚佳幸監督(沖学園)の指導法とは【名将たちの言葉】
第1114回 「甲子園に行く」という強い信念が成功をもたらした 八方悠介(鹿児島城西)【後編】 【2020年インタビュー】
第1010回 「勝たなきゃ」より素直な「勝ちたい」気持ちを引き出す 鹿児島城西【後編】【野球部訪問】
第3回 名門、公立勢の巻き返しに注目!2020年の鹿児島県高校野球をズバリ占う【鹿児島の高校野球】
第1006回 「夢のままで終わらせず、現実に!」福重 圭誇(尚志館)【後編】 【2019年インタビュー】
第985回 ウィークポイントのある選手からチームの中心選手に成長!福重 圭誇(尚志館)【前編】 【2019年インタビュー】
第980回 「大人の打者」の意味を理解できるかが打撃開眼のカギ! 森口修矢(神村学園)【後編】 【2019年インタビュー】
第979回 人間的な成長を求めて兵庫を飛び出した強打の核弾頭・森口修矢(神村学園)【前編】 【2019年インタビュー】
田本 涼(神村学園) 【選手名鑑】
羽月 隆太郎(神村学園) 【選手名鑑】
加治木工 【高校別データ】
神村学園 【高校別データ】
神村学園伊賀 【高校別データ】
川内 【高校別データ】
川内 【高校別データ】
川内商工 【高校別データ】

コメントを投稿する

プロフィール

政純一郎
政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
  • 生年月日 1974年12月18日
  • 出身地 鹿児島市
  • ■ 経歴
    鶴丸高校―同志社大
  • ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
  • ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
  • ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
  • ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
  • ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
  • ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

スポーツかごんまNEWS
野球部訪問トップに戻る サイトトップに戻る

コラム