第629回 野球部は大きなファミリー!母校を率いる指揮官の熱い思い 益田東(島根)【前編】2019年07月15日

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【目次】
[1]恩師からの打診
[2]大敗後「整った」ことで掴んだ夏/再びの開星戦

 いわゆる「大所帯の私立強豪校」を想像していると、いい意味で“裏切られる”野球部だ。

 練習量は多いが、選手たちの表情は明るく、笑顔が見えることもめずらしくない。100人を超える部員が在籍しているが、“何もしていない”選手は皆無で、場所と時間を効率よく使いながら練習に励んでいる。

 「『ここに来なければよかった』とは絶対に思わせたくないし、思わせたらいけないと考えています」
 こう指導方針を語るのが、益田東を昨年夏の甲子園に導いた大庭敏文監督だ。大学卒業直後の2004年から、母校である益田東の監督を務めている。ここ数年は部員100人を超える大所帯が続いているが、部員間の繋がりを重視したファミリー感のあるチーム作りを徹底。そこには、大学卒業直後から母校を率いる指揮官の熱い思いがあった。

恩師からの打診



大庭敏文監督

 大阪体育大卒業直後から、益田東の指揮を執る大庭監督。大学進学時に教員を志し、野球部では学生コーチとして奮闘していた。大学3年の秋には、大阪府内の高校から教員としての採用の内定をもらっていた。しかし、大学4年の春、母校からの連絡で大きく人生が変わっていった。

 「当時の校長から『野球部の監督をやってみないか』という打診をいただきました。突然のことで、最初は驚きしかありませんでした」

 学生コーチとして野球を学んだとはいえ、高校野球での指導者経験は皆無。「ありがたい話だけど断ろう」と考えが固まりかけていたころ、高校時代の恩師である三上隆氏監督から連絡が入った。

 「三上先生から『自分の教え子に監督を引き継いでもらうことが夢なんだ』というお話をいただきました。そして、まだ歌えていない甲子園での校歌を聞かせてほしいという夢を教えていただいた。恩師からの言葉で覚悟が決まりました」

 内定先の高校に急いで辞退の連絡を入れ、打診を受諾。4年ぶりに母校に帰ってきたが、就任当初は“壁”だらけだった。
「指導者経験は、大学での学生コーチのみ。文字通り『右も左もわからない』状態で、当然上手くはいきませんでした」

 大学を出たばかりの23歳。「なんであんな若いヤツが」「もっと適役がいるだろう」と、厳しい言葉を投げかけるOBたちも少なくなかった。
 ただ、若さ故のエネルギーとあり余る情熱はあった。監督として、一教員として、四六時中選手たちのことを考え続けた。大庭監督の就任直後に入学し、最高学年時は主将も務めた中村太郎コーチは、当時をこう振り返る。

 「当時は監督も若くて、とにかくエネルギッシュ。今よりも練習は厳しかったんじゃないかなあ、と振り返ってみても思いますね(笑)。年齢も近くて、指導者でありながらも、選手たちの“兄”のような存在だと感じていました」

 熱意は徐々に実を結び始め、2008年夏の県大会で就任後初めての4強入り。さらに翌2009年夏も好左腕を擁して大会を勝ち進み、2年連続の4強進出を果たした。

 初めて県優勝のタイトルを手にしたのは、2016年の秋。そのチームで迎えた2017年夏に、就任後初めて夏の決勝まで駒を進めた。勝てば益田東にとって17年ぶりの甲子園出場が決まる大一番、開星との一戦は大庭監督にとって悔いの残るものとなった。
「この決勝戦、『落ち着かないといけない』と考えすぎてしまいました。監督の自分が平常心を装ったことで、その様子が選手たちにも伝わってしまったと思っています」

 試合は5対2で開星が勝利。ノーシードから逆転優勝を果たしたライバルの姿を見て、ひとつ気づいたことがあった。

 「開星の山内(弘和)監督を見ていると、山内監督も準決勝までと様子が違って見えました。これは私の推測でしかないんですが、山内監督も平常心ではなかったと思います。でも、私と違うのはそれを受け入れて、むしろ勢いに変えていた。決勝がどういうものかを理解して、ありのままの自分で勝負されていたと思うんです。完全に監督の差で負けた試合だと」

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