硬式に変わって僅か10年のチームが甲子園へ挑む!経験と自信を積んできた和歌山東(和歌山)【前編】
智辯和歌山と市立和歌山が力を見せている和歌山県において近年、存在感を示しているのが和歌山東だ。軟式野球部から硬式野球部に移って今年で10年目。今年はドラフト候補右腕の18133(3年)を擁して初の甲子園出場を狙っている。ここ数年で注目度を上げてきた和歌山東はどんなチームなのだろうか
軟式野球部から硬式野球部へ
キャッチボールをする和歌山東の選手たち
和歌山東に硬式野球部ができたのは2010年。それまでは軟式野球部があったが、当時の校長とPTA会長の方針で硬式野球部に移行することになった。それと同時に赴任したのが米原寿秀監督。2007年春に和歌山商を甲子園出場に導いた名監督だ。
しかし最初の3年間は退部者が相次ぎ、3年間で4人しか卒業生を送り出すことができなかった。それでも米原監督が和歌山商時代からの人脈を活かして集めてきた中学生が入学すると成績が上向き始める。2011年秋に公式戦初勝利を収めると、2013年夏には準決勝進出を果たした。
その後は県内で上位に顔を出すことも珍しくなくなり、2014年秋に近畿大会初出場。2016年秋には初めて県大会を制して近畿大会に出場した。卒業生には今年のドラフト候補に挙がっている津森宥紀(東北福祉大4年)がいて、現エースの落合とともに同校初のプロ入りが期待されている。
昨夏は準々決勝で和歌山向陽に1対2で惜敗。旧チームから1番を打つ岡野楓大(3年)が主将となり、新チームが始動した。最初の公式戦となる新人戦では準優勝に輝き、二次戦進出を決めた。その要因を「夏休みの過ごし方に手応えを持っていました。それが新人戦に上手く作用しているかなと思います」と米原監督は語る。
夏休みの中でも特に有意義だったのが九州遠征だ。九州国際大付、東海大福岡、飯塚、自由ケ丘といった福岡県の競合校と試合を行い、勝負に対する執着心や勝つために必要なヒントをこの遠征で養ってきた。
「個々の能力の差があって自分たちの思うようにいかない中でも、炎天下で試合をこなしていくことで勝負に対する気持ちなどが植えつけられるんですよね。帰ってからも練習試合をするんですけど、その時よりは少し余裕を持って詰め込んでやってきたことを出しながら練習試合を重ねて新人戦に向かっていきます」(米原監督)
新人戦で結果を出すことができたが、秋の二次戦では市立和歌山に1対2でサヨナラ負け。後に甲子園8強入りするチームと互角の戦いを繰り広げたが、あと一歩及ばなかった。敗因は経験値の差だと米原監督は言う。
「経験の差もありますし、勝負所で力を発揮するかしないかですね。上から見下ろされて試合をされてしまうところがありました。
[page_break:冬場は主力を別メニューで徹底的に鍛え上げる]冬場は主力を別メニューで徹底的に鍛え上げる
棒を使ってストレッチをする和歌山東の選手たち
和歌山東は中学時代に実績のある選手が少なく、勝負所でミスが出て勝ち切れないという課題があった。岡野こそ紀州ボーイズで智辯和歌山の東妻純平(3年)、根来塁(3年)とともに中軸を打つ選手だったが、落合はヤングリーグの和歌山ビクトリーズで控え。センバツに出場した2校と比べ、実績とそれに付随する自信がなかったのだ。
冬場は主力としての活躍を期待する8人を選抜。そのメンバーが大野鉄太、岡﨑陸人、岡野、窪園天輝、西山忠(以上3年)、江川日翔、玉置隼翔、長島成汰(以上2年)だ。彼らは他の選手と別メニューで練習を行い、徹底的に鍛え上げた。その狙いを米原監督はこう語る。
「全体で同じメニューをやっても意識の差がありますので、意識を上げてやっていかないといけない者を集めました。それで他の者の意識もちょっと上がればと思ったんです」
この冬では外野手の窪園が「一番身体的には良くなった」と米原監督は評価する。さらに1年生の佐々木惇斗が入学早々に3番二塁手の定位置を獲得。春になってチームの核が着々とできてきた。
春の初戦は強豪の箕島を相手に落合が好投を見せて4対3で勝利。続く3回戦は智辯和歌山と対戦することになったが、米原監督はこの試合で落合を登板させず身長185センチの大型右腕・野口聡大(3年)を先発させる。しかし、この試合では野口が誤算だった。初回に制球を乱して3失点。そのまま主導権を握ることができず、2対6で敗れた。
前編はここまで。後編では夏の大会へのチームの取り組みや、智辯和歌山と市立和歌山との意外な関係について迫っていきます。後編もお楽しみ!
【後編を読む】第3勢力として2強の壁に風穴を開けろ!初の甲子園への道を切り開く和歌山東(和歌山)【後編】
(取材・馬場 遼)