Column

判断力と決断力を磨く15分間!考えて選手を伸ばす 都立杉並(東京都)【前編】

2019.07.03

 去年の夏、甲子園ベスト4まで勝ち上がった日大三を、あわや大金星というところまで苦しめた都立杉並高校。この夏も躍進が期待される都立杉並の強さの秘密はどこなのか。前編では、その練習方法に迫ります。

短い時間で様々な練習をし、判断力や決断力を鍛える

判断力と決断力を磨く15分間!考えて選手を伸ばす 都立杉並(東京都)【前編】 | 高校野球ドットコム
練習中の都立杉並の選手たち

 練習のテンポが速い。
 これが都立杉並の第一印象だ。

 マネージャーが常に15分でタイムを計測し、時間になれば大きな声で合図を送る。この合図とともにメニューがどんどん進んでいく。目まぐるしく練習が変わる驚きの状況。

 都立杉並はレフト95m以上、センター100m、ライト80mのグラウンドで18時30分の完全下校までの3時間練習を行っている。都立杉並ではこの環境を最大限に活かすためにテンポを速くしているのかと思い、田北 和暁(たきた かずあき) 監督にテンポの速さの意図を聞いてみた。

 すると、田北監督はこう語る。

 「野球って間はあるんですけど、それは5分とか10分はないんです。いかに短い時間の中で考えて動いていけるのかが大事なんです。
 今日は15分でいろんな練習をやりましたが、こっちはある程度内容を選手に言っているだけで、順番はこっちでランダムに決めています。こうすることで少ない時間ですが、判断力や決断力を磨いています。」

 都立杉並では年間を通じて、様々な練習メニューをこなし、経験値を積んでいく。試合中の突然の出来事にも瞬時に対応するために、田北監督なりの判断力や決断力を磨く訓練を選手に課している。

 田北監督がそこで見たいのが、選手たちの対応だ。

 「予測困難な練習メニューに困惑することなく、スムーズに練習に打ち込める選手ほど、試合での突然の出来事に対応できている。逆にテンポよく変わる練習に対応が間に合わない選手は試合でもうまくいかないことが多いですが、やろうとする選手は成長しています」と田北監督は語る。

[page_break:考える力を養って能力を伸ばす]

考える力を養って能力を伸ばす

判断力と決断力を磨く15分間!考えて選手を伸ばす 都立杉並(東京都)【前編】 | 高校野球ドットコム
ノックを打つ田北和暁監督

 それができるのは判断力や決断力や優れているのはもちろんだが、その根底には考えてプレー出来ているからだと田北監督は考える。

 「できる選手は言われなくてもできるんですが、できない選手はずっと言われちゃうんです。こっちが指示を出し続けないとダメなので言いますが、本当は選手には言われなくてもできるかが鍵だと言っています。」

 どんどん次へ進んで行く野球だからこそ判断力や決断力が必要だが、それを支えるのが考える力なのだ。そして考える力さえあれば指導者が何も言わずとも選手は練習をやる。選手それぞれが自分の課題を見つけて、取り組んでいく。

 そうやって自分で考えて練習をする姿勢を持つ選手は成長する。逆に練習中に失敗を繰り返してしまう選手は、同じことを言われ続け伸びてこない。それは自分で考えていないからだと田北監督は語る。

 しかしそういった選手たちに考えるキッカケを与えているそうだ。
 普段の練習時間の中で数多くの練習メニューに取り組むことで、田北監督は考える力を付けるのにも効果的だと語る。なぜなら、色んな練習をすることで様々な角度から自身の課題を見つけることができるからだ。

 1つの方向だけではなく様々な視点から物事を見れば、本質が見えてくる。それと同じく、多くのメニューをこなすことで自分が抱える課題が見つかるというわけだ。考える力を養うだけではなく、ウィークポイントの発見にも田北監督は繋げていたのだ。

 こうして目まぐるしく変わる練習メニューを1つ1つ取り組むことで、選手たちの筋力や技術はもちろん、次の動きを予測するといった頭の部分も同時に鍛える田北監督。

 「身体もしんどいですが、頭や心もしんどい」と自負するほどだが、これが1つ形となったのが、昨夏の日大三戦だった。

 前編はここまで。後編では強豪・日大三との戦いで得たもの、夏に向けての目標などを語ってもらいました。

【後編を読む】まずは1勝を掴む!勝利に飢える都立杉並は夏の頂点へ猪突一進! 都立杉並(東京都)【後編】

(取材・編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】日本福祉大附が4点差をはね返して中部大一に逆転勝ち、ベスト8に進出

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!