Column

夏の全国連覇を目指して、大阪桐蔭の現在地【前編】

2019.06.17

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタート!17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。まずは今年の大阪桐蔭ナインに迫っていきます。

 昨年、史上初の二度目の春夏連覇を飾った大阪桐蔭。この夏も大きな注目を浴びて大会を迎えることになるだろう。
 今年は神宮大会以外の主要大会を制した昨年と違い、秋は近畿大会ベスト8、春は大阪大会ベスト16と思うような結果を残すことができていない。常に多大な注目をされてきた昨年のチームとは違い、今年の選手はどう過ごしてきたのかは、あまり知られていない。

 激戦区の大阪を制するために、着々と足場を固めてきている今年の大阪桐蔭ナインを追った。

日本一を目指しているからこそ成り立つ走攻守のレベルの高さ

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ランニングを行う大阪桐蔭の選手たち

 どんな世代になっても大阪桐蔭に失われていないものがある。それがパワーとスピードを兼ね備えた切れのある動きだ。それは練習する姿を見て、実感した。

 まずキャッチボールではどの選手も長い距離をライナー性のボールを投げ込み、シートノックに入ればスピーディな動きでボールをさばいて、鋭い送球を見せる。
 実戦打撃練習でマウンドに上がる投手は、ベンチ入り経験が少ない。それでも投げ込む速球は他校ならばエース格を張れるものがある。それでもレギュラー陣の打者たちは、右打者ならば右中間、左打者ならば、左中間へ鋭い打球を次々と打ち返す。また、ブルペンに目を移すと、主力投手陣が投げ込んでおり、そのボールは昨年よりも進化した姿が伺える。

 ボール拾いや、ランナー役をやっている1年生を見ると、中学時代に日本代表入りしている選手がずらり。これが大阪桐蔭か…と圧倒される要素が今年も満載だった。
 そういうレベルを保つことができるのは、もちろん全国レベルを基準において練習をしているから。

 昨秋は、近畿大会準々決勝で敗退した。
 まだセンバツ出場の可能性が残されているということもあり、西谷浩一監督は「センバツ出場発表日の1月25日までは出るつもりで準備をしていました。出られるか出られないかという作り方ではセンバツで勝てないので。25日、選考から漏れて、補欠校になりました。我々は夏一本でということで切り替えましたが、そこまではセンバツがある時と同じスケジュールで進めていました。」

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選手たちに話をする西谷監督(大阪桐蔭)

 近畿大会終了後は練習試合、Bチームの選手を目的とした育成試合などの対外試合期間が終わると、西谷監督は選手たちと面談を行い、それぞれの課題を明確にして、個人練習期間の12月に突入した。
 惜しくもセンバツ出場は叶わなかったが、すぐに夏へ向けた練習に切り替えた。

 その成果について西谷監督はこう語る。
 「センバツはありませんでしたので、練習試合もいっぱいできましたし、トレーニングもずっと引っ張って夏一本に持っていけたので、時間的にはじっくりやれたと思います」

 手応えを感じている。秋、打撃面で不調に終わった主将の中野は、打撃に対する考え方ともう一度向き合い、少しずつ打撃フォームを改善させてきた。

[page_break:余裕のない戦いとなってしまった春の大阪大会]

余裕のない戦いとなってしまった春の大阪大会

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主将の中野波来(大阪桐蔭)

 その成果は春先の招待試合で大きく発揮される。
 まず岐阜県で開催された高校野球フェアで4戦全勝。さらに4試合で7本塁打33得点と強打を発揮。中野は「シンプルにボールに向き合ってボールを捉えることができた」と、この高校野球フェアで3本塁打を記録した。
 さらに石川県の小松市招待試合でも2連勝と、招待試合では持ち味の強打を発揮した。

 そして春季大阪大会では個人の力をつける意味で、ほとんどサインを出さずに戦った。

 「戦術的なことはやっておらず、『個人の力をつけてチームを勝たせよう』ということをテーマにしていたので、送りバントで送ったりというよりも、打って、走って、繋ぐというイメージですかね。それをずっとするんじゃなくて、そういう時期かなと思って、春はやりました。それは春の大会を軽視しているというのではなくて、夏に向けて何か武器を作るというか、自分たちの特徴を出すために行いました」

 もちろん夏ではサインプレーなど戦術的な戦い方をする。今年のチームはまず公式戦を重ねながら、個々のの力、特徴を見出すことを優先させた。そういう中で、上位を目指した春季大阪大会だったが、5回戦で近大附に敗れ、ベスト16で終わる。
 5回戦について「前半、2年生左腕の藤江(星河)がしっかり投げてましたけど、1本ホームランを打たれてからガタガタッといきましたので、技術的な部分も、うまくいかない時にどうするかというメンタルの部分も、まだまだ夏を勝ち抜く力がついてないなということがはっきり分かりました」

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マウンドに集まる大阪桐蔭の選手たち

 また、良い時は招待試合のように打線が爆発するが、苦しい時に思うような打撃ができず、打破できないのが今年のチームの課題だと分かった。
 主将の中野は「相手の梅元投手は、球速はとても速いわけではなかったと思います。ただ自分たちの技術よりも気持ちの方で、球を絞りきれなかったり、ボール球を振らされてしまったり。一番の打撃の反省は、球種を絞ることができなかった事だと思います。僕としては狙い球をしぼっていたのですが、絞ろうとしているのですが、『打たないといけない』と考えて気持ち的に余裕が無くなっていました」
 改めて精神面が課題となった。

 思うような打撃ができない。思うような試合運びができない。そういう試合は今年のチームに限らず、昨年のチームにもあった。しかし昨年のチームはそれを打破して、接戦をモノにできる力があった。
 では何が違ったのか。西谷監督の見解はこうだ。
 「いろんな引き出しがあったと思います。選手たち自身も持っていましたし、我々も戦術的な引き出しもあります。ただ、先ほども話したように春の段階では指導者側が指示を出すことはなかったです」

 まだ指導者が乗り出す時期ではない。選手たちが自分たちで考えて、引き出しを増やすべきと考えたのだ。

 日本一を狙うために、大阪桐蔭はただ勝つことを目指すのではなく、1大会ごと、時期ごとにテーマを与えながら、チーム作りを進めていたのだ。

大阪桐蔭特集がスタート!!

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタートしています。17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。
6月17日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【前編】「夏の全国連覇を目指して、大阪桐蔭の現在地」
6月18日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【後編】「どんな結果でも日本一を追求しつづける毎日は変わりない」
6月19日12時 中野波来主将 インタビュー【前編】「偉大な先輩たちの背中を追ってきた下級生時代」
6月20日12時 中野波来主将 インタビュー【後編】「知られざる主将としての重圧。すべてを乗り越え、夏は大爆発を」
6月21日12時 宮本涼太選手 インタビュー【前編】 名門の道を歩んできた野球人生 転機となった台湾遠征
6月22日12時 宮本涼太選手 インタビュー【後編】 そして憧れる強打の二塁手へ 宮本涼太(大阪桐蔭)【後編】
6月23日12時 西野力矢選手 インタビュー 憧れは中田翔!2年生4番・西野力矢(大阪桐蔭)はチームの勝利の為に打ち続ける
6月24日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【前編】 大阪桐蔭最強世代の2番になるまでの軌跡
6月25日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【後編】史上初2度目の春夏連覇を達成の影に高校生活で最も厳しい練習があった
6月26日12時 OB 道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【前編】 センバツ連覇で喜ぶ同級生たちをスタンドから見守った
6月27日12時 OB道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【後編】「野球は高校野球だけじゃない」恩師の言葉を胸に
6月28日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【前編】「自分の生きる道を考え続けた3年間 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月29日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【後編】「自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月30日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【前編】「甲子園で活躍するための練習、生活を送ってきた 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」
7月1日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【後編】「4年後はメンタリティも、技術もプロに進むのに相応しい選手へ 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」

7月2日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【前編】「コントロールで生きる!自身のスタイルを確立させた大阪桐蔭時代 田中誠也(立教大)」


7月3日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【後編】「研究を重ねてどり着いた回転数の高いストレートと決め球・チェンジアップ」

(取材・河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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