上尾の歴史を背負う選手たちが語る、今すべきこと【中編】
かつて、昭和時代の後期、埼玉県の高校野球を引っ張り続けた上尾。1958(昭和33)年に学校創立と同時に創部し、5年後に甲子園初出場。75年夏には東海大相模を下してのベスト4進出も果たしているが、その実績以上にひたむきな戦いぶりが全国の高校野球ファンを魅了した。
しかし、84年夏を最後に甲子園から遠ざかっている。それでも、昨夏の北埼玉大会では決勝進出。昨秋の県大会もベスト8と着実に古豪復活の兆候を示している。そんな上尾のグラウンドを訪ねた。
前編では髙野和樹監督に話を聞きながらチームの姿を紐解いてきた。今回は選手たちの声を集めながら、よりチームの姿を明らかにしていく。
令和の新時代に昭和の匂いを漂わせつつも、新生上尾は意気高らか【前編】
主力選手が語る、上尾のユニフォームを背負う覚悟
守備練習から打撃練習へ、準備時間は5分
兄は群馬県の強豪桐生一で甲子園にも出場したという齋藤麗(らい)君は、
「母親が兄の試合を見に、上尾に来た時に(上尾の雰囲気が)気に入ったので、母親に薦められて夏休みの練習会に参加してみました。そうしたら、その雰囲気がとてもよかったので、頑張って入学しました。中学の指導者の縁で下宿を見つけてもらい、そこから通っている」と言う。
食事は朝と夜は賄付きで、昼の弁当は週末に母親が来てくれて、おかずを作ってくれているので、米を炊いてそれを詰めて通っているという。
「一人ひとりがそれぞれに伝えあって注意したり、励ましたりできているので、練習の雰囲気はとてもいい。それに、野球部は周囲の人など多くの人に見られているし支えられているので、上尾高校のユニフォームという看板を背負っていると感じている」と、自覚している。
そのためには、高校生として学校行事などにも率先して参加していくことも心掛けているという。自分自身が実家を離れて自分のやりたいところで野球をやっているということもあり、「自分一人でもやるという覚悟を持ってはいってきた時の気持ちを忘れないようにしたい」という思いは強い。
背負っているプレッシャーは大きいけれども、それを背負っていかれることを誇りにしたいという思いは、他の選手も同じだ。昨夏の準優勝のチームの時も2年生ながら捕手として出場していた小林陸人君もこう言う。
「中学の時に、何度か練習を見に来ていて、とても雰囲気がよかったので、どうしてもここで野球をやりたいと思った。重い歴史を背負っているというのは、プレッシャーにもなるけれども、誇りに替えてやっていかれれば、他の学校でやるのとは違うものを得られると思う。野球で勝つとか強いということだけではなくて、プレーヤーとして大事なことが学べて成長できると感じたので上尾を選んで決めました」
誇りを持って、埼玉の頂点を目指す
冷静な7リードで投手陣を引っ張る小林君
小林君自身は、1年生の5月に「上尾高校」の伝統のユニフォームを与えられている。そして、その時に先輩に言われた、「このユニフォームを着る意味をしっかりと考えてほしい」という言葉を重く受け止めている。と、同時にそのユニフォームに袖を通すことに誇りを持っている。
そんな小林君が、今のチームについての課題を挙げてくれた。
「守備面で言えば、アウトを確実に獲れること。普通に併殺を獲れること、きちんとバントを刺せること、当たり前のプレーを当たり前にできることが大事。そういうチームになっていかないといけない」
また、自分自身については、「打撃で言えば、打率よりもチャンスに確実に打てる選手になっていかなくてはいけない。とくに、二塁に走者がいる時は一本で帰せるようにということは、練習試合でも徹底して意識している。昨年から経験させてもらっているので、自分がチームを引っ張っていく存在にならなければいけないけれども、まだまだです」と、厳しく見つめている。
小林君とともに、昨夏の大会からレギュラーとして試合に出場していた二階堂北斗君は、
「先輩たちがものすごく練習をしてきていたのを見ていましたし、その厳しさを感じていました。それでも、あと一つが勝てなかったので、自分たちはそれ以上のことをやっていかなくてはいけない」と感じている。それは、秋の大会でも、「自分は1番を打っていたのだけれども、ここというところで打てなかった」という反省にもなった。
だから、冬の練習では、「勝負強い選手になっていかなくてはいけないと思った」と身体作りはもちろんだが、1日1500本くらいのスイングをこなして、パワーをつけるというよりも、左手だけで手首を起こしてのスイングや、右手だけでバドミントンのスマッシュのように叩くスイングなどをして、その感覚をもって両手でスイングして、ライナーの打球を打てるようにと言うことを心がけていった。
「長打というよりも、確実に打てる打者を目指していきたい」というのが目指すところだ。
今回はここまで!次回はエースに話を聞きながら、夏に向けて抱える課題を伺いました。次回もお楽しみに!
(取材・手束 仁)