Column

令和の新時代に昭和の匂いを漂わせつつも、新生上尾は意気高らか【前編】

2019.06.06

 かつて、昭和時代の後期、埼玉県の高校野球を引っ張り続けた上尾。1958(昭和33)年に学校創立と同時に創部し、5年後に甲子園初出場。75年夏には東海大相模を下してのベスト4進出も果たしているが、その実績以上にひたむきな戦いぶりが全国の高校野球ファンを魅了した。

 しかし、84年夏を最後に甲子園から遠ざかっている。それでも、昨夏の北埼玉大会では決勝進出。昨秋の県大会もベスト8と着実に古豪復活の兆候を示している。そんな上尾のグラウンドを訪ねた。

一時代を築いてきた伝統校

令和の新時代に昭和の匂いを漂わせつつも、新生上尾は意気高らか【前編】 | 高校野球ドットコム
実践練習を行う上尾

 JR高崎線の北上尾駅のホームに降りると、そこに隣接するかのように上尾高校の校舎とグラウンドがある。何面かあるテニスコートからは32年連続でインターハイ出場を続けているソフトテニス部の元気な掛け声が聞こえてくる。そして、その奥に高いネットが建てられた両翼93~94mを有する野球部のグラウンドがある。

 その深緑色のダッグアウトは歴史を感じさせるものだが、一塁側の壁には「東京オリオンズ入団記念 一九六五年 山﨑裕之」と示されたプレートがある。ドラフト制度発足以前の最後の超大物新人とも言われ、その争奪合戦の過熱ぶりが、ドラフト制度発足への引き金にもなったと言われている伝説の選手でもある。

 閑話休題、過去にそんな選手を輩出している上尾
 その後、74、75年夏と連続出場。79年夏には牛島―香川のバッテリーを擁する浪商(現大体大浪商)と緊迫の延長戦を演じるなど、昭和時代の甲子園では幾多の名勝負を演じてきた。確実に埼玉県の高校野球で一時代を構築した伝統校である。しかし、84年夏を最後に甲子園から遠ざかっている。

 とはいえ、伝統を守りつつ、私学優勢となっている今の埼玉県高校野球の中で着実に存在感を示している。図らずも、チームを率いるのは最後の甲子園出場の際に2年生ながらベンチ入りしていた髙野(こうの)和樹監督である。

 「昨年夏もそうでしたけれども、何とかもう一歩というところまでは来ていると思います。ミーティングなどでも、あえて昔の話をするようにもしています。そういうプレッシャーや周囲の期待を感じながら、野球が出来るのもこの学校へ来たからです。それはここでないと感じられないことですから、そのことは伝えなくてはいけません」

[page_break:不易流行こそ上尾のスタイル]

不易流行こそ上尾のスタイル

令和の新時代に昭和の匂いを漂わせつつも、新生上尾は意気高らか【前編】 | 高校野球ドットコム
選手へ指導する髙野和樹監督

 伝統を背負う学校らしい、力強い言葉である。令和という新しい時代になっても、昭和の時代に築いた伝統をしっかりと根付かせている。そういう意味で言えば、練習着も今流行りのベースボールTシャツや、ツートンカラーだったりのセカンドユニフォームという類のものではない。

 オーソドックスな無地の白地で黒色のマジックインキなどで漢字で名前が書いてあり、帽子もストッキングも白というクラッシックなスタイルだ。実は、そのことに髙野監督もこだわっているのだ。
 「やはり、練習着はこのスタイルがいいですね。スパイクも、今年から白もOKということになりましたが、私は今のままで黒にこだわりたいんですよ」
 と、苦笑しながらも、こういうスタイルに対しての思い入れは強い。

 「古いと言えば古いのかもしれませんが、それでも、時代が移り変わっていく中でも、守っていかなくてはいけない伝統や、変えたくないこともあります。それでも、練習スタイルなどは、昔とはずいぶん変わってきて、頭ごなしではなく常に選手たちに考えさせながら、ということも考えています。やらされる野球の練習ではなく、やりたくなる練習という意識を作っていっています」

 それが高野監督の基本的な考え方だ。まさに、今の上尾には「不易流行」という言葉が当てはまるともいえよう。そして、それこそが新しい令和時代の上尾のスタイルと言っていいのではないだろうか。

 実は、そんなスタイルに今の選手たちも気持ちが動いて、それで入学してきているのだ。

 今回はここまで!次回は選手たちに取材をしながら、上尾高校をさらに深堀していきます。次回もお楽しみに!

(取材・手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

「無欲すぎて就職希望だったところを……」紅林弘太郎(オリックス)、恩師が明かす高校3年間

2024.04.23

【熊本】城南地区では小川工が優勝、城北地区では有明と城北が決勝へ<各地区春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!