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北海道オホーツクの町・遠軽町。人口約2万(平成31年4月)の町にある遠軽高校は唯一の高校だ。2013年には21世紀枠として選抜出場を果たし、1勝を上げ、近年では2016年秋全道ベスト4に入るなど上位躍進も多い。初の夏の甲子園を目指す同校の取り組みに迫る。
一体感を求めるチーム作りを
長く北北海道の道立の強豪校として君臨していた遠軽だが、昨秋の新チーム時から体制が一新した。これまで部長だった阿波克典先生が監督に就任した。昨秋はなかなかチームが一枚岩にならずに苦しんだ。秋季大会では初戦で北見工に敗戦。その内容は阿波監督曰く「ほぼ自滅」だったようで、7回まで2対1でリードだったが、8回表に失策が重なり、4点をとられ、2対5で敗れた。
大会後、選手たちはミーティングを重ね、また選手同士で役職を決めた。内野リーダー、外野リーダー、整備リーダーなど役職は様々で、その役職に関しては阿波監督はタッチしておらず、選手同士で決めあった。
阿波監督がテーマにしていたのは一体感だ。
「古くさい話かもしれませんが、1つになること、1つで行動することを求めました。今年のチームにはそれを求める必要があったんです」
古典的かもしれない。オフシーズンでは週1回に12キロ走、また50分間走も行った。長距離走を行うと、どうしても遅れてしまう選手がいる。そこで、マネージャーは伴走しながら、なるべく1人にさせないようにした。遅れた選手に話を聞くと、「心の支えになりました」と感謝し、マネージャーも「選手の大変さが分かりました」と語る。
選手はそれぞれの欠点を克服するために練習を重ねた。主将で強肩強打の捕手として注目される浅野駿吾は打撃ではタイミングの取り方を見直し、キャッチング、スローイング、ストッピングの練習を繰り返した。またセカンドの間村 湧介はフルスイングを信条とする強打のセカンドだが、振り幅が大きいスイングでもインコースを打つための練習を行った。その成果は発揮できており、浅野はオープン戦で打撃好調。間村もオープン戦期間で3本塁打を放ち、他の選手も大きく伸びて、
[page_break:この春、1年前に敗れた相手にコールド勝ち!]この春、1年前に敗れた相手にコールド勝ち!
阿波監督は「今年は初めて沖縄遠征を行ったのですが、そこから非常にまとまりが出てきたように感じました」と手ごたえを感じている。
充実したチーム状況は取材日の練習を見れば、よくわかる。
選手同士で話し合い、活気ある雰囲気となっている。その中で、しっかりと締めるのが浅野だ。マネージャーによると、「学校では面白い子なのですが、グラウンドに入ると、しっかりと締めることができていて、キャプテンシーがある選手です」と評価も高い。
そして、北海道北見支部予選。初戦の相手は最速144キロ左腕・石澤大和擁する網走南ヶ丘だった。石澤は速球だけではなく、130キロを超える高速スライダーを投げ込む投手だ。
遠軽は昨夏の北見支部予選で網走南ヶ丘に0対1で敗れている。9年連続で北北海道大会に進んでいた遠軽にとっては屈辱的な結果で、何としてもリベンジしたい相手だった。
遠軽の打者は打席位置を工夫しながら、狙い球を絞り、石澤を攻略。
なんと21安打16得点の猛攻。8回コールド勝ちで勝利を決めた
試合後の選手たちの表情はとても充実したものだった。浅野は一体感になって戦えたと語る。
「ベンチ内でもずっと声を出して、戦うことができましたし、何よりスタンドの応援もすごくて、励みになりましたし、本当にチームが一体となって戦うことができたと思います」
阿波監督にとっても会心の勝利となった。
「やはり昨夏、網走南ヶ丘に負けていたので、良い形で勝つことができて良かったです」と振り返った。
この春、上々の滑り出しを切った遠軽。そして遠軽は遠軽町から大きな期待を背負ってプレーをしている。それについては後編で迫っていきたい。
(取材・栗崎祐太朗)