第612回 23対20という敗戦がチームのエネルギーとなった 西尾東(愛知)【前編】2019年05月12日

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【目次】
[1]延長12回23対20の敗戦が転機に
[2]メンタル面の成長が著しいバッテリー

 圧倒的に私学有利と言われている愛知県の高校野球構図。そんな中で、2012(平成24)年以降、夏の愛知大会はベスト4以上を3度経験している西尾東。記念大会の昨夏は、東愛知大会決勝まで進出。「甲子園出場」その夢が、本気で手の届くところにまで来ているという実感もある。県内では、公立の雄という位置付けを確実に築いてくるようになった。どこにでもある地域の普通の公立校が躍進していった背景は何か…。グラウンドを訪ねて探ってみた。

延長12回23対20の敗戦が転機に



3年生集合写真(西尾東)

 あと一つ勝てば、学校始まって以来の東海地区大会進出がかかった昨年の秋季愛知県大会3位決定戦。記念大会だった夏の東愛知大会では決勝進出を果たしており、甲子園出場を語っても、誰もが本気だと感じてくれて、「それは、見果てぬ夢だ」などとは言わなくなっていた。まして、秋は21世紀枠という選択肢も視野に入れて、「甲子園へ行くぞ」という思いは高まっていた。そんな思いで挑んだ3位決定戦だった。

 その試合は史上まれに見る大乱戦となり、16対16で延長にもつれ込んで、10回にはお互いに3点ずつ取り合って、さらに延長は続いて12回、春日丘に4点を奪われ、その裏1点を返すにとどまり、ついに死闘は幕を閉じた。9回には4点リードを満塁本塁打で追いつかれた。そして延長10回は3点をリードされた。しかし、その裏、4番の加藤 健輔君が「ここは本塁打しかない」という場面で、左中間に3ランを放り込んで同点に追いついたというドラマチックな展開でもあった。

 指の故障もあって前日の準決勝で打ち込まれ、気持ちを切り替えて臨んでいたエースの山田 紘太郎君。しかし、やはり傷が癒えず、味方のリードにもかかわらずそれを徐々に返されてマウンドを降りていた。

 「言い訳になるかもしれませんが、万全ではなかったというのも確かです。周囲からは、21世紀枠でのセンバツ出場も期待されると言われましたが、自分としては東海大会に出場して勝ち上がっていくことを目標としていたので、県ベスト4は、それはそれでチームの今の結果としては素直に嬉しかったけれども、悔しい思いの方が強かった」
そう秋を振り返る。

 悔しい思いで見つめていた相手の満塁本塁打で追いつかれた。さらに延長で逆転される悔しい場面を見させられながらも、加藤君の同点3ランで追いついた。

 「(加藤君が)ベース回っている姿を見ているうちに涙が出てきました」
と、その時の思いを語る。結局は、延長12回で23対20と敗れてしまうが、「あんな経験はなかった」と、よきにつけ、悪しきにつけ、この試合がこのチームのエネルギーとなっていることも確かである。

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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