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目指せ夏の全国制覇 周到なチーム作りを進めた東海大菅生【前編】

2019.04.20

 春と夏の高校野球では勢力図が一気に変わる。この夏、全国に出てくれば一気にリードしそうな勢いがあるのが東海大菅生だ。

 2017年、投打ともに技量が高い選手をそろえ、準決勝までの3試合を圧倒しベスト4まで勝ち上がると、準決勝では花咲徳栄と激闘を演じた(試合レポート)。今年のチームはそのレベルに近い強さがあるという。

 そんな東海大菅生はどんなチーム作りをしてきたのかについて迫っていきたい。

中村晃太朗に頼らない投手陣整備

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ダッシュをする東海大菅生の選手たち

 今年の東海大菅生は若林監督も「打線や守備については甲子園ベスト4に進んだチームよりも強くなるかもしれない。秋の時点であれば、2017年より上だと思います」と自信を持つ。

 エース・中村晃太朗、正捕手・小山 翔暉、遊撃手・成瀬脩人、2年生スラッガー・杉崎成、強肩巧打のセンター・今江康介のような全国レベルの選手もいるが、それだけではないというのが今年の東海大菅生の凄さだ。

 それは練習試合や公式戦のシートノックを見るとよくわかる。内野手の動きは素早く、外野手はAチームに入っている野手全員が強肩で、返球はほぼワンバウンドからライナー性のノーバウンド返球。いわゆるシートノックで圧倒できるチームである。

 高校生ではなかなか到達できないスキルを持った選手が多い東海大菅生は、熾烈な競争から選ばれた選手たちだ。

 とりわけ、今年の夏にかける思いは強い。昨秋は東京都準優勝に終わった。関東・東京5枠目を争ったが、惜しくも落選となった。悔しい気持ちを隠し切れない中、若林監督は選手たちに「臥薪嘗胆」という言葉を送った。苦心・苦労を重ねた先に栄光が見えると若林監督、選手たちは考えている。

 主将・石田 隆成は「臥薪嘗胆という言葉はあの時の自分たちにとってぴったりな言葉だと思いましたし、気持ちを切り替えて取り組むことができました」と振り返る。

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若林弘泰監督

 東海大菅生はオフ期間、トレーニングと並行しながら、紅白戦を行ってきた。そこでの目的は
・エース・中村晃太朗以外の投手の台頭
・成瀬、杉崎、小山以外の野手の底上げ
の2つだ。まずエース・中村以外の投手は目途が立ってきた。新2年生左腕・新倉寛之、144キロ右腕の藤井 翔の2人が台頭した。新倉は130キロ中盤の速球、スライダー、チェンジアップを武器にする好左腕で、若林監督も「晃太朗(中村)以外では一番バランスが取れている」と評する。

 また藤井は168センチながら、50メートル5秒8、遠投100メートル超の抜群の身体能力を誇る。真っ向から振り下ろす右のオーバーハンドから繰り出す140キロ中盤の速球は回転数が高く、決め球となる120キロ後半の縦スライダーは高回転で鋭く落ちる。

 エースの中村も「あのスライダーは僕にはない切れ味」と評し、捕手の小山も「スピンがかかって鋭く落ちます」と絶賛する。さらなるステップアップとして「スプリットなど抜けるボールがあり、さらにまとまってくれれば」と期待を込める。

 2人の成長について若林監督は「夏は晃太朗1人では勝てないですから、紅白戦や練習試合ではそういう投手を見出すことがテーマで、あとは実際に春の公式戦で使って自信をつけさせてあげたい」と話していたように、実際にその舞台が訪れた。

 春の都大会の3回戦、明大中野八王子戦(試合レポート)で先発のマウンドに登ったのは新倉。打力がある明大中野八王子打線相手に好投。7回途中まで投げて1失点の好投を見せた。藤井も自慢の速球で無失点の好投、成長した姿を見せた。

[page_break:主力野手以外が次々と活躍!]

主力野手以外が次々と活躍!

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ペットボトルを使ってトレーニングをする選手たち

 また主力打者以外の台頭は若林監督も大きな課題にしていたところで、万が一故障者が出たときに戦力に穴が出ないよう、底上げを求めてきた。若林監督からの期待も高かったのが秋、ケガのためベンチを外れた外岡空也だ。左投げ左打ちの強打の外野手である外岡は「悔しい気持ちをバネにしてバットを振り込んできた」と話す。

 その取り組みの成果は生きて、紅白戦でも快打を連発。今年初めの対外試合となった暁星国際戦(試合レポート)では勝ち越し本塁打を放った。この本塁打について、
 「この試合は初球からどんどん打っていこうと思いましたので、本塁打の場面は狙い通りのストレートが打てて良かったです」と喜んだ。

 さらに外岡はライトからの強肩が光る。入学当時は今ほど肩が強いわけではなかった。それでも肩を強くすることができたのは、スローイングフォームの見直しだった。
 「もちろんトレーニングもありますけど、東海大菅生に入って縦回転のフォームで投げることを教わりました。それから強いスローイングができるようになったと思います」

 また、練習試合から猛アピールを見せてきた西垣大輝は、明大中野八王子戦(試合レポート)で本塁打含む3安打の活躍。若林監督は「一番努力して、チームで一番練習する子なんですよ。ただ緊張すぎるところがあったので、何とかしたいなと思っていました。そういう選手が頑張ってくれるのは嬉しい」と喜びのコメント。

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ケガの悔しさをバネに活躍する外岡空也

 また控え選手中心の試合で出場していた大里大也の成長も著しい。暁星国際との練習試合で本塁打を放った左の巧打者は、練習試合後、
「自分は打撃が持ち味なのでしっかりとアピールができてよかった」と振り返る。さらに大里は都大会に入っても活躍を見せた。

 まず明大中野八王子戦で本塁打を放つと、注目の二松学舎大附戦(試合レポート)は西垣、大里の2人がそれぞれ活躍を見せた。まず西垣が7回裏、満塁のチャンスから2点二塁打を放つと、最後は大里がコールドを決める2点適時打と、主力以外の選手が活躍を見せて二松学舎大附を圧倒したのは大きな試合だった。

 若林監督は大会前、「これまで出ていなかった選手が試合に出場して活躍して、どれだけ自信をつけてくれるかが大事です」と語っていたが、中村以外の投手陣の活躍、主力野手以外の活躍と、ここまで課題がありながらも、大会前の構想通りの活躍を見せている東海大菅生であった。

(文・河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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