なぜ光泉(滋賀)は最新器具とSNSを積極活用するのか?【後編】
前編では光泉がミズノ社の「MA-Q」を練習に取り入れ始めた背景に迫った。後編では計測結果に基づきどういった練習をしているのか。さらにはTwitterのアカウントを開設している理由や理想のチーム像について語ってもらった
最新技術が選手たちに試行錯誤をさせ、正しい練習に導く!光泉(滋賀)【前編】
MA-Q × Twitterで成長をしていく選手たち
取材当日に計測した伊藤有哉投手
現在は試合が続く時期を除いて、週に1回のペースで計測を続けている光泉。吉田力聖は2月の計測で最速を144㎞に更新した。
今回の取材で計測に協力してくれたのが伊藤有哉(3年)。吉田に次ぐ2番手投手で、公式戦の経験も豊富な右腕だ。
これまでの最速は134㎞だったが、今回の計測でそれを大幅に上回る141.9㎞を記録。教え子の急成長に古澤和樹監督も驚きの表情を見せた。
伊藤は自身初の140㎞超えに「素直に嬉しいですね」と笑顔を見せた。「MA-Q」を使うようになってからは「回転数を意識するようになり、回転数が200上がりました。また、体が開く癖があるので、工夫するようになりました」と自身の変化を語る。
この日、伊藤投手が計測した自己最速141.9キロ
そんな伊藤が取り組んできたのがオリックスの山岡泰輔が行っている、チューブを使った肩関節の可動域を広げるトレーニングだ。このトレーニングは古澤監督が運営している部のTwitterアカウントがリツイートしているのを見たことで知ったという。
古澤監督は昨年末に「光泉高校硬式野球部」(@Z4bD95sLqU7EXBo)というアカウント名でTwitterアカウントを立ち上げた。試合結果の報告や練習の動画や画像の投稿に加えて、一流選手の動画をリツイートして選手の目に入るように工夫をしている。
県内の野球部でTwitterアカウントを持っているのは光泉のみ。他の学校がやっていなかったことも始めた理由の一つだが、本当の狙いは選手たちに自分の想いを伝えることだったという。
光泉らしい練習で滋賀の頂点を目指す!
古澤和樹監督
「言いたいことが文字で残るので、意図が汲み取りやすくなったと思います」と古澤監督はTwitterの効果を実感している。Twitterをしている選手も多いため、監督のツイートは選手の目にも当然入ってくる。監督のツイートを見て刺激を受ける選手もいれば、リツイートした動画を見て練習に取り入れる選手がいるのも光泉の特徴だ。不適切投稿の防止などでSNSを禁止している野球部は少なくないが、古澤監督は選手たちにSNSなどの活用を推奨している。
「TwitterやYouTubeはどんどん使いなさいと言っています。携帯やSNS禁止のところもありますけど、もったいないですよね。問題を起こさないように使わせないのは楽ですけど、それって教育じゃないと思うんです。上手く使わせたらいいと思います」
実際に「MA-Q」を導入してからも、回転軸や回転数について「興味があるので、自分たちで調べるんです」(古澤監督)と現代の機器を上手く活用しているようだ。
常識にとらわれないチームが甲子園を目指す!
新しいものを活用しながら強化を進めている古澤監督が目指すチーム像について聞いてみた。
「野球界の昔の常識にとらわれないようにしようと思っています。古くて良いものは残しつつ、実は野球界で当たり前と言われていることで、本当に当たり前なんか?と思うことは辞めていく。それで結果が出るとカッコいいですよね」
滋賀県には昨夏甲子園8強の近江と秋に敗れた滋賀学園が立ちはだかっているが、「今年のチームは勝ってもおかしくない力はある」と古澤監督は自信をのぞかせる。独自の取り組みで甲子園を目指す光泉が、令和最初の滋賀代表として名を刻むことができるだろうか。
(文・馬場 遼)