目次

[1]楽しいだけではない。選手の思考力を鍛えた野球ノート
[2]押しつけがないことが選手の自主性を育ませる

 八王子市に所在する都立片倉。昨夏はベスト8まで勝ち進み、準々決勝では日大三と大接戦を演じた。今春もベスト16入りを果たし、夏のシード権を獲得した。今年の都立片倉は指導方針、選手ともに面白いチームであること。選手の個性を大きく伸ばす都立片倉の方針に惹かれる方も多くなるはずだ。

楽しいだけではない。選手の思考力を鍛えた野球ノート


 練習では笑顔が見られ、指導者の罵声もほとんどない。試合になれば、得点や好プレーが出れば、一気に盛り上がる。そんな都立片倉の練習や試合を見ると、「本当に楽しそうに野球をやっているなあ...」という印象を受ける。楽しそうというというのはただ笑顔で適当にプレーしているのではなく、真剣に走り、点を取れば、どこのチームよりも喜び、ピッチング、バッティング、フィールディングを見ると、1人1人が自分の技術を追求している様子が見られるからである。

 たとえば打撃練習。遊撃手・柳本 康希がしっかりとステップしたり、ノーステップで打ったりしている。なぜなのか聞くと、「投手によってクイックで投げたりする投手もいますので、それに合わせて練習をしています」としっかりと意図を答える。

 さらに高校通算12本塁打を誇る上田一成は打撃練習で意図的に一本足で上げて、独特のタイミングを計りながら行っている。その意図について聞くと、「体重移動を意識してやっています」という。これは宮本監督の指示ではなく、全部、選手自ら行っている。この思考力の高さや自ら考える習慣を生み出しているツールがあるという。それが野球ノートである。

 野球ノートは昨秋のチームスタート時から始めた。必ず書かなければならないものなど、特にルールはない。宮本監督が求めているのは自分のためにやることだ。



高校通算12本塁打を誇る上田一成(都立片倉)

 「指導者に見せるためのノートにならないこと。つまり背伸びしている感じなんですよね。お前のためだろ!と叱りますね。だから素っ気なく書いてあっても、自分のために書いてあるんだというのが分かればよいと思います」

 たとえば上田は日々の打撃練習から自分の状態を書く。その時、好調時、不調時の内容を記述することで、いざ大会や練習試合が近づくと、自分の状態に立ち返ることができるのだ。上田はノートのおかげで打撃をより深く考えられている。
 「ノートをとったことで自分の打撃を立ち返ることができる。技術的にも追求することができるようになりました」

 また、新チームから公式戦・練習試合を通じて9本塁打を放っている清水謙伍(2年)はノートによって、しっかりと考えを整理して、打席に向かうことができている。
 「去年の秋は1年生ながら公式戦を経験させてもらったのですが、本当に緊張していました。今は慣れて緊張せず打席に向かうことができていますが、ノートがあることで自分の打席を振り返り、しっかりと準備して立ち向かえることになるようになりました」

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