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長距離走はほとんどしない。速さとコントロールを兼ね備えた投手を育成しつづける大分舞鶴!

2019.04.05

 大分県屈指の進学校として知られる大分舞鶴。このチームは好投手育成に長けたチームとしてしられている。左腕・益川和馬(法政大)を筆頭に、今年のエース・常廣羽也斗(つねひろ・はやと)も最速142キロを誇る好投手。またほかにも130キロ台の投手を多く揃える大分舞鶴。そんな大分舞鶴の投手育成メソッドを探ると、常識にとらわれない指導法であった。

投手育成で気を付けるべきこと

長距離走はほとんどしない。速さとコントロールを兼ね備えた投手を育成しつづける大分舞鶴! | 高校野球ドットコム
大分舞鶴を引っ張るエースの常廣羽也斗と主将の安部亮佑

 その好投手育成に携わったのが花田修監督だ。花田監督は大分舞鶴出身で、自身も投手としてプレーしていたため、主に投手を指導する。花田監督が常に意識しているのは勉強しつづけること。自分の経験談ではなく、多くの指導者から勉強する姿勢を持ち続け、同世代の指導者との勉強会を開催するほどだ。

 花田監督が投手育成で気を付けていることは以下の2点だ。
・コントロール重視であること
・無理に最高球速を求めすぎないこと

 まず試合を作るには最低限のコントロールがないと信頼は得られないというのが花田監督の考え。花田監督自身、コントロールが良かった投手ということもあって、「ただ球が速いだけの投手はあまり好きではないんです」と断言する。

 また、高校生投手は球速更新にこだわりがち。スピードアップは必要な姿勢。だが、それにこだわりすぎるとリスクがあると花田監督は説明する。

 「その選手の肉体に耐えられる球速というのがあると思います。あまりにも球速が出すぎてしまうと、故障をしてしまう傾向がある。だから8割程度の力でコントロールすることが大事だと思っています。徐々に出力を上げるのは大学生になってからでも遅くはないと思います。2年前のエースだった益川もそういう方針のもと、育てました」

 球速を求めない大分舞鶴だが、実は投手として球速を高める、出力を高める練習法が確立しているとのこと。その中でほとんどやらない投手メニューがある。それは長距離走だ。

[page_break:技術練習優先だから走り込みの優先順位は低くなる]

技術練習優先だから走り込みの優先順位は低くなる

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最速142キロを誇るエースの常廣羽也斗(大分舞鶴)

 エース・常廣は入学当初、走り込みがないことに驚いた。
 「中学時代、当たり前にやっていたメニューなので、やらんで大丈夫なのかなと思うことがありました」

 これは大分舞鶴の練習環境が大きく関係している。大分舞鶴は練習時間が2時間~2時間半ほどしかない。少ない練習時間を最大効果を発揮するには何かを重視して、捨てなければならない。
 大分舞鶴が選択したのは技術重視でスキルを伸ばすことを優先すること。投手であれば、球速、コントロール、野手でいえば、飛距離、守備、走塁となる。

 投手の練習メニューはウォーターバッグを使った自重トレーニング、跳躍力を鍛えるジャンプのトレーニング、ウエイトトレーニング、短ダッシュなど球速アップに相関するトレーニングを行う。投球練習では花田監督から技術指導をしてもらい、合理的な投球フォームを習得していく。なかには長距離走も必要という考えもあるだろう。高校野球に限らず、何かを上達させる、何かを達成するためにはどの行動を最優先させるべきか。それを明確にすることは大切な考えだ。

 また打撃練習でも工夫を凝らしており、大分舞鶴は練習試合ができるほどのグラウンドを有するが、ボールを集める時間を短縮するためにバックネットに向かってフリーバッティングを行う。
 最初は驚きを見せた常廣も大分舞鶴のカラーに染まり、最速は入学から20キロほど伸び、2年秋には柳ヶ浦との練習試合では最速142キロを計測し、さらに完封勝利を挙げるなど、順調に成長を遂げた。

 常廣は「うちは時間が少ないので技術重視の練習なのですが、僕は良かったと思っています。だから球速を伸ばすことができたと思います」

 常廣以外にも130キロ越えの投手も増えてきたという。
 うまくなるためにベターな選択をし続け、短い時間でも着実にスキルを伸ばしてきた大分舞鶴。花田監督の指導、大分舞鶴の環境を知って、実力が高い中学生が入学することも増えてきた。

 今年の選抜では明豊がベスト4、大分も初戦突破と非常に勢いのある大分県。舞鶴メソッドで、成長し続ける投手陣は夏にはこの2校の脅威となってもおかしくない。

(文・河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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