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部員45名の想いを1つに!甲子園で旋風を巻き起こす熊本西【後編】

2019.03.28

 春のセンバツに21世枠で出場する、県立熊本西高校。いわゆる強豪私立のような野球推薦は無く、部員は全員が軟式出身で硬式野球は高校に入学してから。地元の中学から普通に進学してきた部員ばかりで、全員が自転車で通学をしている。また、農地に囲まれている立地のため、ナイター設備は作物に影響を及ぼすため付けられない。

 そんな一般入試を経て入学した「普通の高校生」たちが、秋季九州大会でベスト8と快進撃。見事に甲子園の切符を手繰り寄せた。今年の躍進は何があったのか。前編では新チーム発足時のことを伺ってきた。後編では秋季大会を中心に話を進めていく。

 昨夏の悔しさ糧に大躍進!主体性を持たせて磨き上げた一体感と責任感 熊本西【前編】

素直さや吸収力がチームを強くした

部員45名の想いを1つに!甲子園で旋風を巻き起こす熊本西【後編】 | 高校野球ドットコム
横手文彦監督の話を聴く熊本西の選手達

 迎えた秋の県大会。1回戦から3回戦まで7対0(牛深)、11対1(阿蘇中央)、5対1(南稜)と、安定した戦いを披露。エースの霜上幸太郎を中心とした、守り勝つ野球で着実に勝利を収めた。準々決勝で菊池に4対2で競り勝つと、にわかに部内の雰囲気が変わった。

 全校応援の前で勝てたことで、チームも勢いがついたという。そして迎えた準決勝は強豪の熊本工業戦。6対5で見事に逃げ切り、初の九州大会出場を決めたのだ。(決勝は熊本国府に9対11で敗戦)

 九州大会では佐賀学園に3対2で勝利。これで九州大会ベスト8。チームの始動時を考えるとまさかの躍進だ。横手文彦監督は「秋は、気付いたら勝っていたようなところもあって。素直さや吸収力があったから、選手たちが日を追うごとに成長してくれました」と話す。

 しかし、新チームの中心打者である堺祐太は「でも、正直なところ、甲子園なんてずっと遠い世界だった。具体的な目標としては、考えていませんでした。行けたらいいなとはずっと思っていたけれど…」と笑みを見せる。

 九州大会の2回戦で日章学園(宮崎)に1対8で負けてしまったが、21世紀枠での出場が、にわかに現実味を帯びてきた。

[page_break: 全員が一丸となって甲子園で旋風を起こす!]

全員が一丸となって甲子園で旋風を起こす!

部員45名の想いを1つに!甲子園で旋風を巻き起こす熊本西【後編】 | 高校野球ドットコム
チーム一丸となって全国の舞台で勝つ!

 ところが、そんな熊本西に悲しい事故が起きる。多くのニュースでも既報の通り、11月の練習試合で頭部に死球を受けた部員が亡くなってしまったのだ。突然の悲報の前にチームは、事故後の2週間は練習も中止した。

 21世紀枠の推薦辞退も考えたが、亡くなった部員の親から「仮に21世紀枠で選出されても辞退しないでほしい」との声を掛けられ、チームは再始動。そして、21世紀枠で選出との吉報が届けられた。

 霜上主将は「甲子園に行きたかったあいつのぶんまで、全員で頑張る。甲子園では、落ち着いて自分本来の投球をしたい」と決意を胸にする。堺選手は「普段通りのプレイを心掛けて、野手の間を抜くバッティングをしたい」と大舞台を前に目標を話す。

 部長の上田謙吾教諭は「普通の高校生たちが、頑張って練習して、ここまで来れたことが感激ですね」と話す。横手監督は「21世紀枠に選んでいただいた。多くの人に支えてもらったので、はつらつと、そして泥臭く、フレッシュな戦いぶりを見せたいですね」と抱負を述べる。

平成28年4月の熊本地震では、自宅が大規模半壊に遭った選手や、車中泊や避難所生活を経験した選手もいる。部員45人は、亡くなった生徒を含めた数だ。45人が一丸となり、亡くなった仲間のため、地震で傷ついた故郷のため、甲子園で旋風を巻き起こしてくれることだろう

(文・いとう りょう/writer])

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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