意識と思いを実現させ続けた先に待つ甲子園!海津明誠(岐阜県)【後編】
前編では昨秋の県大会ベスト8の海津明誠の練習環境や注目されるまでの軌跡について迫ってきた。後編では現在のチーム状況などを中心に話を進めていく。
名門校にコールド勝利!1つの勝利がチームを飛躍させた 海津明誠(岐阜県)【前編】
意識を具体的に形として表す
丸刈りにして試合に挑む海津明誠の選手たち
「人数もそれほどいないし、選手の能力としてもやれることは限られています」と岩橋浩二監督は言うが、選手たちには複数のポジションを守れるように指導している。
「チームで核になっていかれる選手が何人かはいますから、そこが引っ張っていってくれる形になれば、面白いかなとは思っています」
と、選手たちのモチベーションをあげていくことも大切にしている。
意識を具体的に形として表すということで言えば、いつしか海津明誠野球部の伝統として定着しているのが、「毎週金曜日には、頭を丸刈りにする」ということだ。
「特別に私が強制しているというわけではないんです。むしろ、選手たちが自主的にやっていることなんですよ。ただ、そんなに持続力や継続力があるという子たちではないんですけれども、これだけは不思議と続いているんですね」
岩橋監督は、そんな生徒たちの様子を苦笑しながら伝えてくれた。
いつも自分で頭を刈るようにしているという青木秀斗君は、「これで、『よし、やるぞ』という気持ちになれるような気がします」と言う。基本的には週末が試合となることが多いので、そこへ向けての意識を高めていく要素としても意味があるようだ。
もちろん、丸刈りにするということで、自然とクラスの中や学校生活では目立つ存在となっていくことも確かである。
青木君は、「周囲の人に見られているなという意識はあります」と正直な感想だ。だから、河口君も「学校でも、日常生活でも、責任を持った行動をしなくてはいけないと思います」という自覚は芽生えている。
1番打者としてもチームを引っ張る存在の森郁人君は、「周囲の人への挨拶や感謝しなくてはいけないという気持ちは、強く持っています」という意識だ。森君は現在は主に二塁手と三塁手をやっているが、「自分としては守備練習が好きなので、二塁手としてランニングスローやカッコいいプレーもしてみたい」という意識も持っている。こうして、自分を目立たせていきながら、チームにも貢献していきたいという姿勢である。
強豪校から学ぶ強さの秘訣を吸収して
ベスト8以上の成績を目指す海津明誠の選手たち
昨年秋は背番号1だったが、秋季大会後に捕手としての練習も重ねて、今ではすっかり捕手として定着してきたのが岩橋球斗君だ。
父親でもある監督から、「チーム事情で、オマエが捕手をやるのが一番いい」ということで、捕手にコンバートとなったが、「試合では投げることもあります」と、投手としての立ち位置も意識はしている。
そんな岩橋君は、「捕手になった最初は、二塁に送球して走者を刺せたら、面白かったし気持ちよかった。だから、それでいいかというようなところがあった」と言う。しかし、捕手として本格的に練習を取り組んでいくに従って、「最近は、難しいポジションだなと思えるようになった」と言う。
つまり、それだけ捕手というポジションの役割を認識してきたということでもあるのだ。だから、「やっていて、別の面白さや、楽しさも感じられるようになってきた」と、意識は明らかに成長している。
そうした中で、実戦を経験していきながら、リード面や配球、間の取り方などを学習していくことであろう。エース格となっている河口善光君とのバッテリーとしても、経験を重ねていきながらどんどんと呼吸が合ってきているようだ。
これまで、チームとしてはベスト8までは何とか進出できるようになってきた。
しかし、そこから先がもう一つの壁になっているというのも現実だ。その壁を破るために何をしていくのかということが、この冬から春にかけての最大のテーマでもあった。
岩橋監督は、関西の強豪校の金光大阪はじめ、健大高崎や至学館など甲子園出場の実績があるところとも積極的に試合を組んでもらうことをお願いしている。強いチームの佇まいや練習姿勢を見ることで、学べる要素も多いからだ。
森君は、「最初練習を見たときに、いい雰囲気を感じられたので、このチームで頑張りたい」という思いで入学してきた。河口君も、「ここで自分が成長できるだろうと思いました」という思いを今、着実に実現していっている。
こうした選手個々の思いが一つずつ実現していくことで、海津明誠の次のステップアップしたステージが訪れてくるはずである。そんな匂いを感じさせてくれるチームの雰囲気が漂っていた。
(文・手束 仁)