長所を伸ばして成長させる!夢と充実感を持った選手たちとともに甲子園へ!石岡一(茨城)【後編】
学校創立は1910(明治43)年、創部1914(大正3)年という歴史を誇る石岡一野球部。今春の第91回選抜高校野球大会に、21世紀枠代表校として選出されて、春夏通じて初めての甲子園出場を果たすこととなった。後編では守備力強化に取り組む理由や秋季大会の振り返り、そして選抜への意気込みを伺った
創部105年目に「春が来た」! 新たな一歩に地元の期待も高まる 石岡一(茨城)【前編】
パワーアップと堅守、そしてメンタルの強化で全国へ
ウエイトトレーニングで身体を鍛える選手たち
チームとしては、目標体重を掲げており、それをベンチにも掲示してある。飯岡大政君自身は秋季大会後から5.8kg増えている。4番打者としてはパワーアップも目指すところだ。
目標体重に届かない選手は、卵かけご飯をメインとした補食で増やしていく。新3年生となる金子さくらさんをはじめとして下級生の阿部千夏さんと鈴木咲依さんの3人の女子マネージャーたちは、夕方になるとすぐに補食の準備に取り掛かり、毎日4升分のご飯を用意するのも大事な仕事となっている。
チームとしては秋季公式戦で、5試合16犠打を記録しているように、手堅く走者を進めていきながら、少ないチャンスを生かしていくというスタイルだ。そのためには、バントの精度を上げていくなど、確実に走者を進めていかれる攻撃をしていくこともテーマとしている。
当然ながら、少ない得点をしっかりと守っていくことが勝利への近道でもある。ことに、守りのミスから崩れていくということだけは避けたいところである。それだけに、守備力強化は最も重要な強化ポイントである。華麗で派手なプレーである必要はないが、確実にアウトを取っていかれる守りを求めている。
塚本圭一郎君と滑川孝之介君の二遊間の守りは公式戦5試合では無失策だったと言うように、堅実ではある。しかし、甲子園ではより強い打球、より難しい打球が来ることは当然であろう。それだけに、そんな打球の強さに負けない守りの強化はさらに進めていくところである。
捕食の卵かけごはんを準備するマネージャーたち
一塁手の干場聖斗君と4番を任せられるであろう三塁手の飯岡君も含めて、内野陣は全員新2年生で組まれそうだ。他にも、レギュラーのうち6人が下級生となりそうなだけに、精神面の強化もより大切になってくる。
川井政平監督は、「今年のメンバーは、たまたま下級生が多くなった」と言うが、秋季大会にでの県ベスト4という結果については、「攻守ともに最大限の力が出せた大会だった。長所を伸ばしていこうという指導が少しは生きたかな」と感じている。
ただ一方では、「心配していた守りでミスが出て、結果としてはそれで負けてしまったことが課題となった」と反省している。
[page_break:責任と感謝をもってまずは1勝を掴み取る!]責任と感謝をもってまずは1勝を掴み取る!
石岡一の選手たち
それだけに、日々の練習の中では陽が落ちてからでも、照明の下で、丁寧に守りの練習を反復している。そして、少しでもぎこちない動きや間違った動きがあると、川井監督自身もノックを止めて、すぐに足の運びやグラブの持って行き方、ボールへの入り方などをアドバイスしていく。
こうした地味な練習を繰り返していきながら、「全員が必ず同じ練習が出来るようにしていきたい」という思いである。そこには、指導者としてのこだわりもある。
「全員が夢を持ち、充実感を持てる野球部を目指している。指導者という立場としては、生徒の野球や人生を手助けしていくこと」
これが、最も大切にしている指導理念でもあるのだ。そして、その成果として今回の21世紀枠で推薦されて出場が得られたということである。
98年から務めていた前任の波崎柳川時代にも04年秋季関東大会に進出し、05年夏には準優勝という実績もある。また、09年に赴任し翌年夏から監督就任した石岡一でも15年、16年と春季関東大会に進出。
ことに、16年のチームは、「監督生活20年の中でも、もっとも手ごたえがあったし、一番力のあるチームだと思っていた」というくらいに仕上げてきたこともあった。しかし、シード校で挑んだその年の夏は初戦で、その後にDeNA入りする細川成也を擁する明秀日立に惜敗。悲願達成は成らなかった。
ユニフォームを一新して聖地へ挑む
そのチームに比べると、「あの年のチームが10だとすると、今のチームはまだ6か7くらいの力しかありません。試合運びも、守備力もまだまだです」と厳しく見つめている。
しかし、「21世紀枠で選んでいただいた以上は、その責任があります。感謝の気持ちをもって、その責任を果たしていかせる戦いをします。まずは1勝したい」と思いを述べていた。そして、そのためにも時間の取れる時には実戦練習を多めにやって、1カ所バッティングなども増やしている。
また、昨年から公式戦のユニフォームのデザインを変えた。「17年は今までになく結果を出せなかったので、そんな流れを変えたいなということで、新たな一歩を踏み出そう」という気持ちで、母校の國學院大に似た、襟からフロントラインの入ったものになった。
その矢先の朗報にもなったので縁起がいい。創部105年目、新たな歴史を刻んだ石岡一。地域の大きな後押しも力に、檜舞台での活躍を期待したい。
(文・手束仁)