第590回 緻密な「ノーサイン野球」で古豪復活の狼煙をあげる 小倉工(福岡)2019年03月10日

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【目次】
【小倉工の練習の様子をギャラリーでチェック!】
[1]選手自身が状況判断を行う「ノーサイン野球」を実践
[2]駆け引きがあって見応えのある野球を子どもたちに見せたい

 春夏合わせて17度の甲子園出場を誇る小倉工。福岡県内でも指折りの古豪は、6年前に若干24歳だった牧島健監督が就任して以来、年々成績は上がっており、昨年の秋季福岡県大会では2年ぶりにベスト4進出を果たした。

 だが、そんな小倉工の練習環境は決して恵まれている訳ではない。グラウンドは他の部活と共用のため、普段はフリーバッティングすら行うことが出来ず、実践練習も限られた中での練習となる。
 そんな中で小倉工は、いかにして力をつけていったのか。その根底には青年監督が編み出した大胆かつ、緻密な戦略があった。

選手自身が状況判断を行う「ノーサイン野球」を実践



タイヤを叩く打撃練習を行う小倉工の選手

 今年の小倉工の特徴は、間違いなく打撃力だ。俊足巧打の1、2番コンビ、木村一翔と本木優翔がチャンスメイクし、1年生ながら高校通算11本塁打を放つ長距離砲・久木田和志へと繋がっていく打線は県内でもトップレベルの得点力を誇り、新チーム結成直後の北九州市内新人野球大会では4試合で35得点、秋季福岡県大会でも6試合で47得点を叩き出した。

 だが小倉工を率いる牧島健監督は、打撃力には一定の自信を持っていることを認める一方で、それだけでは強豪がひしめく福岡県を勝ち抜くのは難しいと語る。

 「バッティングに自信はありますが、打てない投手と対戦したら結局、終わりです。ここ数年でも、そのようなことが何回かありました。もうそんな負けはしたくないと思っています」

 そこで牧島監督が2年前から実践しているのが、選手自身が状況判断を行なってプレーしていく「ノーサイン野球」だ。「ノーサイン野球」と言えば、昨年の第100回選手権大会で常葉菊川が実践していたことでも話題になったが、フルスイングを信条としていた常葉菊川の「ノーサイン野球」とは、真逆の道を小倉工は行っている。



フリーバッティングが出来ないためバックネットに向かって打撃練習を行っている

 ゲームプラン、相手投手の出来、試合展開など、その時の状況を選手全員が読み切り、考えてプレーする「ノーサイン野球」を牧島監督は求めたのだ。

 「ゲームプランは先に言いますし、責任を持つために勝負どころではサインは出します。でも、あまりこっちが言い過ぎると考えることを止めてしまします。かなり高いこと求めていると思いますが、この環境の中でできることは何かを考えたときに、選手自身が考えてプレーことが重要だと思いました。そしてそれは、人間力の向上にも繋がります」

 牧島監督が目指す「ノーサイン野球」は、昨年の秋季大会で真価を見せた。準々決勝の九産大九産戦で、小倉工は2点のビハインドを背負った状態で最終回を迎える。連続でヒットで無死一、二塁のチャンスを作ると、打席に迎えるのは6番の常軒。バントも考えられる場面であったが、相手投手の球威が落ちていることを感じ取った常軒は、強行策に出て中前タイムリーを放つ。1点差に迫った小倉工は、その後同点に追いついて、延長で一気に逆転。「ノーサイン野球」ががっちりとハマり、ベスト4進出を決めたのだった。

 牧島監督の高い要求に対して、選手たちは苦労を見せる一方で、今の自分たちにとって大事なことであると前向きに捉えている。主将の本木優翔は、牧島監督の厳しい指導を次のように語る。

 「求めるものも高いですし、牧島監督のような厳しい先生は今あまりいないと思います。ですが、逆に自分たちにとってはそういう先生がいた方が強くなると思っています」

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