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監督就任1年目の中村監督が掲げるのは「コミュニケーション力」久留米商(福岡)【中編】

2019.04.03

 中村 祐太監督(久留米商)は、11月に久留米商の監督に就任したばかりである。まさに今年の春が監督師としての初陣であり、監督元年と言っていいだろう。そんな中村監督はどのようなチームを作り上げようと考えているのか?中村監督を知る上でキーワードになるだろう「コミュニケーション」を軸に、指導者としての一歩目を踏み出した中村監督のマインドに迫りたい。

前編:小屋松を中心としたバッテリーが飛躍への鍵を握る 久留米商(福岡)

地域に根ざしたチームを!

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素振り中の久留米商の選手たち

 「皆から応援されるチーム」、これが中村監督が掲げるチームの目標になる。皆と言っても、チーム内だけではない、学校全体、更には地域全体に応援されるチームを目指している。地域に根ざし、地域から応援されるチーム。創部が1900年と、地域とともに120年近い歴史を歩んできたチームにふさわしい目標である。

「野球だけ頑張ればいいというところあると思うんですよ。それではいかんぞと。みんなから応援されるような野球部になって行こう」

 中村監督は、授業態度や日頃の挨拶など日常からの変化を求めている。また、学内の授業態度や提出物などは、チーム全体でお互いに気を付けあってチェックしあっている。これは、野球部の生徒各人が野球部の顔であることをきちんと理解させるためである。

「1人出来てなかったら、野球部みんなできてないことなるんで」

 これも、最終的には「みんなから応援されるチーム」というコンセプトが背景にある。この考えは、「挨拶」においても同じになる。

 「例えば遠くから挨拶しても分からないから、ちゃんと近くに行って目を見て頭を下げるなど、基本的な事なんですけども、雑になってるところがあったんで、一番最初のミーティングした時も挨拶をしっかりしろと。僕に対してもそうですけども、僕と他の先生達にする態度が違ったりするとおかしいので、やっぱりみんなに応援してもらえるようになってほしいので、ちゃんと挨拶しようぜ」

 目的を持ったコミュニケーションを取ることで「皆に応援されるチーム」になる。これこそが、中村監督が久留米商の選手に求める姿だ。

[page_break:1人ではない!広い視野で周りを巻き込む]

1人ではない!広い視野で周りを巻き込む

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選手に指導する中村 祐太監督

 中村が久留米商の監督に就任して4ヶ月が過ぎた。この期間を中村監督はどのように感じていたのだろうか?

 「することがたくさんだな、という思いです。後は難しい時は、僕は自分だけで考えないで相談します。(檜谷武)副部長先生にも「どうしたらいいですか」と聞きますし、選手達とも「どういう練習しようかね」と話します。だから話はするようにしてますね。いろんな人と話をするようにはしていますね」

 コミュニケーションを大事にして、素直に人の意見に耳を傾けることが出来ることこそ、中村監督の武器ではないだろうか。

 「自分の考えだけでは、全部はうまくいかないと思うんですね。昔、僕は人の話があまり聞けなかった。あまり人の話を聞き入れない人間だったと思ってるんです。だから、まずは聞こうと自分に言い聞かせています。色々と受け入れようと思ってます。必要ないことも言われることもあるんですけども、それも受け入れようと」

 この器の大きさに、中村監督の指導者としてのポテンシャルを感じる。コミュニケーションを通して相手の意見も一度取り入れる。その後、咀嚼、理解をしてアウトプットしようと考えているのである。この考え方を、監督自身だけでなくチーム全体にも求めている。

 「僕は話す時は先に『どう思っている?』と聞くようにしています。『なんでそういう配球にしたの?』『どんな感じで打ってるの』など聞いて。聞けば答えてくれるし、それがコミュニケーション繋がりますし、こういう風に考えてるんだと理解も出来ます」

 この中村監督のコメントにあるように、コミュニケーションを通して選手にアウトプットさせるようにしている。また、アウトプット出来る力がつくように、自分で考えさせるための1つの我慢もしている。

 「あんまり、『こうせい!』ということは言わないように意識して気をつけています。時間はかかるんですけども、結局自分で体を操ったり、自分で考えたり、こういう攻撃きそうだなというのを、自分で考えないといけないです。そういう力を養っていければなとおもいます」

 自分の意見を一度飲み込むことで、押し付けずに自分自身で考えさせる力を伸ばそうとしている。まさに一貫した、最終的には円滑な「コミュニケーション」を取るためのスキルを身につけさせる指導方法なのである。

 最後に、中村監督の指導者としての武器は何か?という質問に回答したい。

 それは、相手の意見を受け入れることの出来る許容力とコミュニケーション力に違いない。

「僕自身も(他の人の意見を)聞けるようになりたいですし、生徒達にも僕が言ったこと、色んな先生が言ったことを聞き入れるようになって欲しいですね。だから、まずは僕から意見を聞けるようにやって行こうと、選手と共に成長しようと思っています」

 この言葉に中村監督の素晴らしさがすべて詰まっている。

(文・田中 実

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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