考えながら強く振れ!1日1000スイングで埼玉ビッグ4を打ち崩す! 浦和実業(埼玉)【前編】
埼玉といえば17年夏に花咲徳栄が、13年春は浦和学院が甲子園で優勝を果たすなど強豪校が集う地域だが、その埼玉で上位に食い込む奮闘を見せているのが浦和実業だ。昨秋も準々決勝で埼玉栄を破って4強に進出して実力の高さを誇示したが、今季のチームについて辻川 正彦総監督に振り返ってもらった。
秋の悔しさをバネに投手陣が奮闘
ノックを受ける選手たち
昨夏はドラフト候補にも名前が挙げられた140キロ左腕の英 真太郎を擁していたものの、初戦敗退(2回戦)の憂き目にあった浦和実業。
現在、チームの主将を務める竹内 琉生は「レギュラーに2年生が多かったのですが早々に負けてしまい、英さんのプロ入りを後押しすることができませんでした。だから、秋は3年生に対して胸を張れるような結果を残したいと思っていたんです」と、新チーム結成当初を振り返る。
また、辻川総監督も「3年生には良い思いをさせてあげられませんでした。だからこそ、その分、『秋は絶対に勝つんだ』という執念を持って臨みました」と話しており、チーム全体が強い思いを胸に抱いてスタートを切ることとなった。
そんな今季のチームの自慢は投手陣。「1年生の豆田泰志はボールのスピンが優れていて、打者の手元でギュンと伸びてくる。まだまだ好不調の波があるのですが、良い時は手がつけられないほどです。2年生の三田隼輔は逆に安定感があって、140キロを超えるストレートが武器。そして、久野遥都は昨夏の二番手投手で、球速は130キロ前半ですがキレのあるボールが特長です。秋は先発の豆田が4~5イニング。久野が1~2イニングをつないで、最後の3イニングを三田で締めるという継投を考えていました」と、辻川総監督。
また、「各投手に力があるので普通に投げてくれれば、そこまで打たれることはない」と分析していたこともあり、7月から8月にかけての練習では焦ることなく、とにかく基本を繰り返した。
「守備面では『捕れる打球をきちんと処理してアウトにすること』をテーマに、ひたすらボール回しとシートノック。選手やコーチは試合形式のゲームノックをやりたがるのですが、まずはちゃんと捕って、ちゃんと投げることを大切にし、夏の暑いなかで休憩を取りながら2~3時間はやっていました。
応用については、ほぼ一日おきに行っていた練習試合のなかでやって、失敗したら次の練習で確認するという形をとっていました」。
ビック4を打ち崩す力強いスイングを
竹内琉生主将
バッティングでは毎試合3~4点を取ることを目指し、一日1000スイングを目標にして振り込んだ。
「重たいバットを使って『数を振ろう』と。そして、『本気になって、思い切り振れ』と指示しました。正直なところ、埼玉のビッグ4(花咲徳栄、浦和学院、春日部共栄、聖望学園)に比べるとウチは力が格段に落ちますから、その差を埋めるために、まずは量をこなさなければいけない。数をこなすのも能力の一つだとは思いますが、そうやって振り込んだ分、ある程度の投手なら打つことができるようになりました」。
竹内主将も「考えながら、強く振れと言われていて、インコースのボールに詰まったら、『なぜ、詰まってしまったのか。詰まらずに打つためにはどうしたらよいのか』を考えて、一球を大事にしながらスイングをしています」と、技量の向上に余念がないようだ。
こうして新チームが始動した浦和実業は、8月の練習試合で連戦連勝。今春のセンバツ出場を決めている国士舘や全国制覇の経験を持つ桜美林といった強豪校も倒し、「自信が付いた」と竹内主将。また、この好結果がさらなるモチベーションを生み「スイング練習への意欲が高まり、おのずとスイングの回数も増えていった」(辻川総監督)という。
新人戦でも埼玉栄を6対0で下し、秋季大会のシードを獲得。「久野は肩やヒジに不安が出たので投げさせられなかったのですが、起用した豆田と三田が好投して勝つことができ、『関東大会に行くぞ』という機運が高まりました」(辻川総監督)とチームは勢いをつけていった。
前編はここまで。後編では、秋季大会の戦いぶりを振り返ってもらいながら春への意気込みを伺いました。後編もお楽しみに!
(文・大平 明)