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元プロ監督が浸透させた「グランドに出たくなる野球」 啓明学園(東京)【前編】

2019.03.03

  2015年4月に、元プロ野球選手の芦沢真矢氏が監督に就任した啓明学園。就任以来、着実にチーム力を伸ばしていき、昨秋は遂に都大会本戦への出場も果たした。

 今回は、そんな啓明学園に訪問し、チーム力向上の裏側や今年のチームの躍進の理由について迫った。

野球を楽しむチームカラーが浸透し都大会へ進出

元プロ監督が浸透させた「グランドに出たくなる野球」   啓明学園(東京)【前編】 | 高校野球ドットコム
ノックを受ける選手たち

 「選手みんなが底抜けに明るく、笑顔がイキイキとしている」
 それが啓明学園に訪れたときの第一印象だ。元気が良く、ノリの良いチームは他にも多く見てきたが、啓明学園の選手達は明らかにひと味違う。野球という枠を飛び越え、人生そのものを楽しんでいるように感じるのだ。

 「見てもらってわかるように、本当に明るいチームです。従来の厳しい高校野球ではなく、のびのびと野球をやらせたいのが根底にあって、放課後にグランドに出たくなる環境作りが僕の仕事だと思っています。これが僕が目指した野球です」

 そう語るのは、啓明学園を率いる芦沢真矢監督だ。就任した当初は部員数も少なかった啓明学園だったが、野球をのびのびと楽しむ芦沢監督の指導方針に惹かれて、部員数も年々増加。チーム力も着実に高まっていき、昨年の秋季大会は、遂にブロック予選を勝ち抜いて都大会への進出を果たしたのだ。

 実際に選手に話を伺っても、底抜けに明るい返答が返ってくる。チームを引っ張る佐々木陽平主将は、笑いを交えつつ、啓明学園のセールスポイントを次のように紹介する。

 「学校に専用グランドもあって、芦沢監督にも不自由なく練習をさせて頂いています。チームも仲が良く、とにかく元気が良いチームで、副主将の石川大樹を筆頭に部員の57人全員がイケメンです!」

[page_break:経験者が多く残り、打力も高かった新チーム]

経験者が多く残り、打力も高かった新チーム

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体幹トレーニングをする啓明学園の選手たち

 そんな明るさを持つ啓明学園だが、実は新チームは屈辱のコールド負けからのスタートだった。第100回選手権西東京大会で、啓明学園は2回戦で都立国立と対戦。2年生から主力を務める選手も多く、若くて勢いのあるチームだったが、結果は3対17と大敗。
 佐々木主将は新チーム結成当初を「最弱からのスタート」と表現し、当時の様子を振り返る。

 「主将を任されたときは、周りにどう思われても良いから、強くなることだけを考えようと決意しました。不安は全く無かったです」

 佐々木が不安は全く無かったと語るのにも、もちろん理由があった。現在の主力選手の多くが1年時から試合に出場しており、中でも打撃力に関しては一定の手応えを感じることができていたからだ。
 芦沢監督は、新チーム結成当初の打撃力を次のように振り返る。

 「打力は良いピッチャーが来たらそうそう打てるモノではないので、計算は出来ません。ですが、スイングスピードや振る姿を見て、相手チームが驚異に感じるということがありました。それはそれでいいなと」

 だが、その一方で投手力においては課題が浮き彫りとなった。本来であればチームを牽引するべきエースの二宮悠河が、いまいちピリッとしない投球が続いたのだ。

 顧問を務める高野教諭は、当時の二宮の投球を次のように振り返る。
 「立ち上がりに不安があって、競った試合でも最後粘り切れないところがありました。一回気持ちが切れちゃうと、ズルズルいってしまうところもありましたね」

 投低打高の構図が、浮き彫りとなる中で秋季大会を迎えた啓明学園ナイン。

 この時はまだ、そんな二宮がチームを都大会へ押し上げる、獅子奮迅の大活躍を見せることなど、誰も知る由もなかった。

 前編はここまで。後編では、秋季東京都大会で大きな存在感を見せた二宮悠河の成長の裏側、そして夏の大会に向けたチームの取り組みについて迫っていきます。

 

(文・栗崎祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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