関西中央(奈良)奈良の勢力図に風穴を!【後編】
前編では、全部員がアルバイトを通して社会勉強をすることや強豪校にも対等に戦うため伸びしろをいかに伸ばすのかということについて触れた。後編では高校卒業後にも活躍が目立つ秘訣、そして今後の関西中央野球部の目指すものについて語りたいと思う。
関西中央(奈良)様々な経験を通して伸びしろを伸ばす!【前編】
高校野球はあくまでも通過点
大谷丈瑠
また、甲子園未経験校ながら卒業後も大学で野球を続け、活躍する選手が多いのが関西中央の特徴だ。例年では約半数が大学野球に進んでおり、今年の3年生も9名中6名が大学で野球を続ける予定だという。
近年では毎年のように卒業生が全国大会に出場している。一昨年は日本体育大の小口丞太郎(2年)が関西中央の卒業生として初めて神宮大会の優勝メンバーとなった。
大学で野球を続ける選手が多い理由として「先輩から大学での話を聞いて自分もできるんじゃないかと流れがずっとある」と話す松田全史監督。歴代の先輩が大学で活躍することで現役の選手にも上で野球を続ける意欲を駆り立てている。さらに3月頃に大学の練習会に参加させることで大学野球を身近に感じさせる機会もある。
「ウチは高校野球で終わりじゃないというスタンスなので甲子園を目指していますが、上でやりたい子もいます。自分の技量を上げることで未来を切り開いてほしい」と話す松田監督。より野球を極めたい球児にとっては最適な環境といえるだろう。
現チームに目を転じてみると、昨夏は2回戦で敗退したが、3年生でレギュラーだったのは2名のみ。主力の大半が残っていた新チームは躍進が期待されていた。チームを束ねるのは「人間的には本当にできた子です。部員から一番信頼されていますね」と松田監督から人間性を絶賛されている大谷丈瑠(2年)だ。
「夏は悔しい思いをしたので、先輩方の気持ちを背負って自分たちは絶対勝つ」と始動した新チーム。この年から始まった秋のシード権を決める大会を順調に勝ち進み、難なくシード権を獲得した。
伸びしろではどこにも負けない!
タイヤを必死に押す選手
しかし、秋の奈良大会で思わぬ落とし穴が待っていた。初戦の平城戦で1番遊撃手とチームの中心選手であった巽琉馬(2年)が右膝に自打球を受けて骨挫傷となり戦線離脱。松田監督が「チ―ムで一番いい選手」と認める選手が起用できなくなり、戦力的なハンデを抱えることになった。
何とか8強までに勝ち進んだが、準々決勝で近畿大会に出場した橿原に1対5で敗戦。「本当に狙っていました」(松田監督)とこの秋に懸けていただけにチーム内のショックは大きかった。敗戦翌日は練習前に部室で全員が無言になるほど落ち込んでいたという。
松田監督はチームの課題は打撃だと分析する。「秋は経験を活かして優位に戦える試合が多かったと思うんですけど、課題は打てなかったのが一番大きいですね。今後の課題は色んな投手に対応することだと思います。バッティングは対処対応ですから」。春以降は秋よりも打高投低になると予想しており、得点力向上を目標に現在は練習に取り組んでいる。
その一環として取り組んでいるのが、体作りだ。関西中央では当番制で練習前にご飯を炊く準備をし、それを練習の合間に食べるなどして精力的に体重増加に励んでいる。こうして体を大きくすることでエンジンを大きくし、選手のポテンシャルを引き出すのが狙いだ。
打力強化で春に向かう
春、夏に向けて松田監督は新戦力の台頭に期待している。「春、夏は戦力になれなかった子たちに出てきて欲しいですね。ウチはこの子が出れるの?という子が出てきた時に活躍するんですよ」と松田監督は話す。
選手のレベルに関係なく同じ練習を行う関西中央では冬を超えて急成長する選手が出てくるのだという。公式戦の経験が豊富な選手が多い現チームだが、これまで出番に恵まれなかった選手が出てくればチーム力はさらにアップするだろう。
「春はベスト8以上の結果を残して夏に甲子園を獲りに行きます」と宣言した大谷。奈良県を勝ち進むためには智辯学園と天理の壁が待ち受けているが、「高い壁だと思っているんですけど、そこで自分たちが倒してやろうという気持ちがあります」と頼もしい。
昨夏は奈良大付が決勝で天理を倒して甲子園出場。甲子園でも初勝利を挙げたことはチームの刺激にもなっている。彼らの戦いぶりを見て「チャンスはある」と大谷は感じたという。
「本気で甲子園を狙えるチームになるために練習をやっています」と決意を語る松田監督。悲願の甲子園初出場に向けて今年は勝負の年となる。有力校を打ち破って奈良県の勢力図に風穴を開けることができるだろうか。
(文・馬場 遼)