佐倉(千葉)信念を貫き、出来上がった堅守!【前編】
2018年、千葉県の21世紀枠推薦校に選出された県立佐倉高校。昨年は県大会で千葉経大附を破り、ベスト16へ進出するなど、健闘を見せた。佐倉はミスターこと長嶋茂雄氏の母校としても知られるが、学校の創立は江戸時代の寛政4年(1792)まで遡る。その後、長い歴史を経て、現在の校名となったのは1948年。一度、佐倉第一となったが、1961年には現校名となっている。
文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)に認定され、現役で東京大、難関私大の合格者を輩出するなど、県内屈指の進学校と知られる佐倉。
今回は秋の大会の軌跡と勉強と部活の両立を2点に分けて佐倉を紹介していきたい。前編では秋の大会を振り返る。
守備を重視する理由
守備練習中の様子
現在、フライボール革命など最新の理論を駆使して、打撃強化するチームが多くなっているが、佐倉はその逆を行く守備力重視のチームカラーだ。
「私はもう昔ながらの指導者なので、ピッチャーを中心とした守りが根本となります。」と説明するのが堀内 幹仁監督だ。
堀内監督は長野県の伊那北出身で、順天堂大学に進み、卒業後は千葉南で教員としてスタート。その後、千葉商、検見川、若松と千葉市の県立校で指導者を務め、5年前から佐倉の監督に就任した。
堀内監督は長い指導者生活で千葉の高校野球を長く見てきた。また、1月に逝去された小枝守氏(元拓大紅陵)から練習試合で交流して、多くのことを学んできた。
堀内監督が大事にするには「反復練習」だ。
「昔から変わらないのは『基本』ですね。基本の反復といいますか、要は当たり前のアウトを当たり前に取り続けるというのが一番です。ただそれだけではなく、ファインプレーや頭脳的プレーを織り交ぜていくのも大切ですし、捕るのが難しいと思う打球に対してもアウトにしなければなりません。
そういうプレーはまず基本ができて挑戦できるプレーであり、うちでは基本の反復は重視しています」
まず守備ができて、強豪校と渡り合えるというのが佐倉の考え方なのである。実際に取材日の練習は守備練習が中心。シートノック、状況付きのノックなど捕球だけではなく、連携プレーも重視して練習を行う。特に連携プレーはスムーズだ。平日の練習時間は1時間半と練習時間が限られている中、意識高く取り組んでいる様子が見られた。
昨秋の県大会では選手がカバーし合いベスト16入り!
主将でキャッチャーの和田宗矩選手
今年の佐倉野球のまとめ役となっているのが主将で捕手の和田宗矩だ。堀内監督から「男気がある選手ですね。いつもなら先輩から聞いたりしてキャプテンを決めるんですが、彼の場合は入学時に(もう将来はキャプテン)という感じの子でした。」と信頼される和田。練習中からも選手を集めては和田主導でミーティングを行い、緩んだ様子があれば、和田から厳しい指摘が入る。
和田は守備力重視の野球についてこんな見解を述べた。
「守備力の高さは相手の力の差を縮めるものだと思っています。今年のエース齋藤正貴は強豪校でも対抗できる投手だと思いますが、齋藤の実力でロースコアに持ち込みます。ずっと守り続けていけば、最初は非常に高い差でも徐々に縮まって、気が付けばあまり差がなくなる。そういうレベルにもっていくことが大事だと思います」
また和田は守備力を重視する野球について強い信念がある。
「今『フライボール革命』とか巷でいろいろ言われているんですが、やはり日本の野球は“守り”じゃないですか。“ベースボール”ではなく、“野球”をやりたいので。それならやっぱり守備からだと思います。時代に逆行していると思うのですが、僕は守備が大事だと思います」
このぶれない考えが今年の佐倉の粘り強さを生んでいるのだろう。
昨秋のベスト16。堀内監督からすれば、エース・齋藤や夏を経験している選手も多く、それ以上を目指していたので、結果だけ見れば満足いくものではない。ただ勝ち上がりの内容については、堀内監督が高く評価できるものだった。
というのもエース・齋藤が大会直前に腰を痛めてしまい、緊急事態に。そこで踏ん張ったのが1年生投手陣である。左腕・吉岡大翔、捕手を兼任する東海林隼人の2人が力投を見せたのである。吉岡、東海林ともに120キロ前後の直球、緩い変化球でかわす技巧派だ。
千葉経大附に勝った佐倉の選手たち
まず松戸国際戦では齋藤は5回で降板。その後、左腕・吉岡が大ピンチを切り抜ける。続く千葉経大附戦(試合レポート)。まず先発の東海林が力投を見せると、その後、吉岡が抑え、4対3で1点差をものし、見事にベスト16入りを決めた。和田主将も「出来過ぎ」と呼べるほどの試合内容だったが、その中でも堀内監督は吉岡のピッチングを称えた。
「球速は速くないのですが、秋の段階でうまく交わせる左腕は活躍しやすいです。とはいえ、活躍できるのは短いイニングぐらいだと想定していましたが、私の想像以上に頑張ってくれました」
この試合では千葉経大附の打者が打ち返す鋭い打球に対しても無難に処理。普段の練習の成果を発揮し、2人の1年生投手をしっかりと盛り立てていた。
「良く守ってくれましたし、故障する選手がいながら、他の選手がカバ—して結果を残せたのは素晴らしいことです」と強豪を破った選手たちを称えた。
しかし3回戦では習志野にコールド負け。和田主将は大きな目標が出来たと振り返る。
「守備について習志野レベルまでもっていかないといけないと思いました。非常に難しい目標だと思いますが、実際に戦ってみて学ぶものが多くありました」と振り返る。
秋季大会後は練習、練習試合のサイクルとなった。佐倉の平日時間はシーズン中は2時間〜2時間半、日の入りが早いオフ期間は1時間〜1時間半で、19時には最終下校をしなければならない。難関私学や国公立大学合格を目指して、ほぼ全員が塾通いしている佐倉の選手たち。いかにして野球と勉強を両立しているのかは、後編で迫っていきたい。
(文・河嶋 宗一)