山梨学院 vol3「甲子園までの課題。甲子園からの課題。」
5年ぶり3回目の選抜出場を決めた山梨学院。第1回は長崎合宿の真意、第2回は小倉清一郎コーチ就任によってチームが変わったことを述べてきた。そして第3回では選抜へ向けて攻守の課題に迫り、センバツでの目標と抱負を語ってもらった。
vol.1 山梨学院「心身を急成長させる長崎合宿はいかにして成り立つのか?」
vol.2 2019年の山梨学院は小倉清一郎氏の指導でどう進化していったのか?
背番号1は主将・相澤。それ以外は流動的
背番号1で主将・相澤 利俊(山梨学院)
山梨学院の課題は絶対的な投手がいないこと。吉田監督は主将の相澤 利俊に背番号1を託すことを決めているが、それ以外は流動的だ。まず相澤が背番号1な理由について「やはりボールは速くないのですが、変化球の切れが優れコントロールも優れていて安定感がある点も考えれば、主将の相澤に託そうと思いました」と語る。相澤は「今の球速のままでは打たれるので、135キロ前後まで速くしたい」とスピードアップを期待している。それ以外の投手は秋、ベンチ外だった投手もチャンスはある。
中央学院戦で好投を見せた技巧派右腕・佐藤裕士、最速142キロ左腕・駒井祐亮、県大会5試合で防御率1.99の成績を残した右腕・中込 陽翔がいるが、吉田監督は大きく入れ替わる可能性があると話す。秋と同じく主力投手として活躍したいと意気込む駒井は「変化球でストライクが取れるようになっていきたいと思います」と変化球の精度向上を目指している。
吉田監督は全投手が競い合ってレベルアップすることを待ち望んでいる。
どの選手も強打・軽打を兼ね備えた選手になれるか?
吉田選手は今年の打線の軸は、2番菅野秀斗、3番相澤、4番野村健太が中心。吉田監督は3人をつなぐために他の野手たちに犠打、エンドランなど細かい技術ができてほしいと願う。
実はこの3人、打撃力が高いだけではなく、吉田監督が求める小技もうまい選手なのだ。菅野は逆方向への打撃が優れ、打率.478と高打率。相澤は吉田監督も認める右方向へ打つ技術の巧さがあり、相澤自身も「右打ちは得意です」と語る。そして高校通算34本塁打を放ち、「山梨のデスパイネ」と呼ばれる野村。スクイズが上手い選手で、実際に試合でも仕掛けたことがある。4番がスクイズを仕掛ける姿にスタンドは驚きを見せたが、吉田監督は「作戦通りです」と平然と言い切る。野村も「自分は打球を転がすのが得意なので、サインが出ればやっていきます」と4番打者でもチームの勝利のためならば自己犠牲もいとわない方針だ。
選抜では力を出し切った戦いを
ストレッチをする山梨学院の選手たち
吉田監督が目指すのは選抜2勝以上。山梨学院は春夏合わせて10回出場して、まだベスト8どころか2勝以上もない。吉田監督に言わせれば、「甲子園に行くチームは根拠があります。絶対的なエース、タレントなど。今年はそれがない状態でスタートでした」
だが小倉清一郎氏のコーチ就任で急激に総合力をアップさせ、特に守備については「地味でも接戦で勝ち抜ける程の守備力を身につけた」と自信を持つほど。長崎合宿を経て、心身共に成長し、高いモチベーションで選抜へ向かっている。
センバツへ向けて吉田監督が選手たちに求めるのは充実としたコンディショニングで力を出し切ること。
昨夏の甲子園はエース垣越建伸(現・中日)のコンディション調整に失敗してしまい、打撃戦の末、敗れた。吉田監督自身、「力を出し切れず悔いがあります」と振り返る。
選手たちは甲子園で活躍するために日々の練習で技術を磨き、吉田監督を含めたスタッフは選手の力を出し切るために戦略・調整法を考え尽くす。それがうまく融合したとき、「山学旋風」を平成最後の甲子園で巻き起こすはずだ。
(文・河嶋 宗一)