Column

「ストップ・ザ・作新」に向けた佐野日大のマインドセットに迫る【後編】

2019.03.31

 佐野日大高校へ訪れたのは、選抜甲子園の出場校が発表される2日前。選抜への出場は当落線上と見られていただけに、落ち着かない気持ちがチームに流れてるのではないかと予想していた。
 しかし実際に訪問すると、意外にも吹っ切れたような表情で練習に打ち込む選手の姿があり、筆者の予想は見事に外れた。

 結果的に選抜甲子園への出場はならなかったが、佐野日大を率いる麦倉洋一監督を始め、選手たちは皆口を揃えてこう話していた。
 「選抜はないものと思ってやっています」
 前編では、秋季栃木県大会を勝ち抜いていった裏側に迫ったが、後編ではこの冬場の取り組みや夏に向けた意気込みについて迫っていく。

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】

走り込みのメリットはたくさんある

「ストップ・ザ・作新」に向けた佐野日大のマインドセットに迫る【後編】 | 高校野球ドットコム
佐野日大のエース・松倉亮太

 固い守備力を武器に、秋は秋季栃木県大会で優勝を果たし、秋季関東地区大会に出場を果たした佐野日大。安定した戦いが目についた秋だったが、もちろん課題が無いわけではない。
 麦倉監督が課題として挙げたのが、「松倉以外の投手の成長」と「長打力」だ。

 「ピッチャーも一人だけではダメなので、もう一人二人出てこないといけません。打つのもヒットは出るのですが、長打が出ないのが課題です。うちのチームぐらいじゃないですか、ホームラン0本で県大会を優勝したのは」

 この二つの課題を克服するため、現在は冬のトレーニングに励んでいる訳だが、ウエイトトレーニングに加えて麦倉監督が非常に重要視しているのが「走り込み」だ。
 昨今の野球界では、「走り込みの是非」について様々な議論が交わされているが、プロ野球選手としての経験もある麦倉監督は「走り込み」には多くのメリットがあると語る。

「ストップ・ザ・作新」に向けた佐野日大のマインドセットに迫る【後編】 | 高校野球ドットコム
守備練習の様子

 「足腰を鍛えるとなったら、ウエイトトレーニングが一番手っ取り早いと思います。でも走って鍛えられる部分は、他にもたくさんあると思います。
 体幹や体のバランスもそうですし、外野の方は地面がボコボコしているところもあるので足首のバランスを養うこともできます。
 そして一番は精神的なバランスですね。投手はマウンドに行ったら誰も助けてくれませんし、きつい中でも力を出せるかどうかが大事です。そういう部分が一番必要じゃないかなと思いますね」

 麦倉監督は、投手陣の練習の姿勢に関しては一定の評価を与える。少しずつ麦倉監督が求めているような練習を、自ら進んで行うようになり、走り込みの量も増えてきている。

 「投手陣はだんだん自分たちで走る量を増やしたり、こっちがやってほしい練習を自分たちでやるようになりました。やっぱりピッチャーは、とにかく走らないといけません」

[page_break:選抜はないものと考え関西遠征を計画]

選抜はないものと考え関西遠征を計画

「ストップ・ザ・作新」に向けた佐野日大のマインドセットに迫る【後編】 | 高校野球ドットコム
室内練習場での打撃練習の様子

 1月25日、選抜甲子園大会への出場校が発表されたが、そこに佐野日大の名前はなかった。落選が悔しくないチームなど無いだろうが、佐野日大ナインの気持ちはすでに夏の甲子園へと向かっている。

 「現段階ではシーズンに向けたトレーニングをしているところです。みんな体は大きくなってくると思いますが、それが実践でどこまで生きてくるかですね」

 そんな中で麦倉監督が、夏に向けた強化の一つとして計画したのが関西遠征だ。3月に遠征を行うことで、良い形でシーズンに入ることができればという狙いがある。
 「2年は18人なので1年から2人借りて遠征に行くのですが、関西の力のあるチームと戦って、少しでもプラスにして欲しいと思っています」

 また、主将の八ツ代敢大も気合十分だ。普段は、麦倉監督からは技術よりも精神的な心構えを学んでいるという八ツ代は、チームの精神力の向上に意欲を燃やす。

「ストップ・ザ・作新」に向けた佐野日大のマインドセットに迫る【後編】 | 高校野球ドットコム
室内練習場でのウエイトトレーニングの様子

 「秋は大事な場面で1本が打てずに、選手一人ひとりの精神力の弱さが出ました。夏の大会では、技術でも精神力でも相手を上回って、隙の無い野球が出来るように今から練習に取り組みたいと思います」

 そして最後に、麦倉監督に夏の大会に向けての意気込みを伺うと、八ツ代と声を揃えるように精神面の重要性を交えて、意気込みを語った。

 「冬のトレーニングの時期に頑張った選手が春先に少し芽が出て、夏はもうそれを自信にして向かうしかないです。夏は気持ちしかない。技術云々言ってる場合ではなく、いかに勝ちたいと思えるか、それが夏に勝つために必要なことです」

 この8年間、栃木県の夏の選手権大会は作新学院が連続で優勝し続けている。麦倉監督も自負するように、現時点で作新学院の連覇を止めることができるチームと言えば、佐野日大が最右翼の一つと言えるだろう。
 「ストップ・ザ・作新」を果たすべく、佐野日大は虎視眈々(こしたんたん)と夏の栃木の頂点を狙う。

(文・栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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