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理論と根拠で築き上げる!中国準V・米子東の強打 ~鍵を握る胸郭の使い方~【後編】

2019.01.28

 前編では、部員自らが野球を研究し練習に生かしていることを紹介した。後編ではその研究結果が体の使い方やトレーニングの効率性アップなどとのつながり、さらには、ある道具を活用した練習方法から打撃を武器に秋の中国大会を準優勝できた理由が見えてきた。

理論と根拠で築き上げる!中国準V・米子東の強打 ~力強い打球を飛ばす源は重心移動にあり~【前編】

多角的なトレーニングで“胸郭”の動きを引き出す

理論と根拠で築き上げる!中国準V・米子東の強打 ~鍵を握る胸郭の使い方~【後編】 | 高校野球ドットコム
回転動作を取り入れながら懸垂を行うのが米子東流

 打つも投げるも重要なのは“下半身”。これも野球界でよく耳にするフレーズのひとつだが、米子東の指導では上半身も軽視していない。特に重視しているのが、“胸郭”の柔らかさと動かし方だ。胸郭は、肋骨、胸椎、胸骨で形成される胸部周辺の骨格で、打撃、投球において重要な役割を果たすという。紙本監督は言う。

 「打撃、投球の両方で胸郭の使い方は重要になってきます。ここを上手く使うことができれば、投打両方のトップが深く取れるようになる。打撃ではインサイドアウトの軌道かつ回転速度も速いスイング、投球では腕の加速距離を長く取れる“しなり”のあるフォームの習得に繋がります」

 柔軟性向上のために、専門のトレーナーのアドバイスを基に構成したストレッチメニューを導入。また、柔らかくするだけでなく、動きのなかで“上手く使う”ためのメニューも充実させている。紙本監督が続ける。

 「グラウンドのバックネットに単管パイプを利用してつくった懸垂のスペースがあり、チームで取り組んでいます。以前は一般的な形で行っていましたが、現在は吊り下げた柔道の帯を握って、“回旋動作”を入れながらやるように変更しました。ウエイトトレーニングのベンチプレスも通常のバーではなく、持ち手が回転するタイプのもので行っています」

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2017年にブレイクしたカチカチバットを米子東は2015年から導入

 加えて、「中村奨成(広島広陵→広島)を支えたカチカチバット」として2017年にブレイクした“カウンタースイング”も、大ブームが沸き起こる前の2014年12月から取り入れている。さらに、前任校時代からカウンタースイングを指導に用いていた田中コーチが2015年度から米子東に赴任したことで、チーム内での理解、習得がよりスムーズなものとなった。カウンタースイングについて、田中コーチはこう語る。

 「(前任の)米子西の監督時代にお世話になっていたトレーナーさんを通じてカウンタースイングを知りました。使い方が難しい練習用具ではありますが、胸郭、肩甲骨を上手く利用してスイングする感覚を掴める物だと感じています」

 下半身の体重移動と、それを最大限に生かす上体の回転。これらの動作を、多角的なアプローチで身体に染み込ませることが、試合での強打に繋がっていたのだ。

[page_break:「中国大会で浮かび上がった課題と目指す“これから”]

中国大会で浮かび上がった課題と目指す“これから”

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さらにレベルアップした部員16名で春に挑む!

 準優勝を果たした中国大会では4試合で合計23得点。安打数も38と、各試合で見せた高い対応力が印象的だった。敗れた決勝でも、広島広陵を相手に「2対6」の惜敗。しかしながら、「大きな力の差を感じた」と紙本監督は語る。

 「ワンプレーの精度、各選手の対応力など『ウチはまだまだだな』と痛感しました。エースが投げなかったとはいえ、実力差を考えると広島広陵は10戦で10敗する相手。その10敗のなかでも『一番耐えることができた1敗』が中国大会決勝だったと思います。

 中国大会を通じて、後半勝負に持ち込む粘り、2巡目以降で相手投手を捉える対応力に自信を持つことができましたが、1巡目から合わせていけるように打力を向上させていきたい。選手たちにも話していますが、今の実力を考えると『必死でやって、春に間に合うかどうか』。限られた時間を無駄にすることなく日々を過ごさなければいけないと思っています」

 部員16人という選手層の薄さを感じさせない強打で秋を彩った米子東。指揮官の下、理論に裏打ちされたトレーニングに励み、レベルアップした打撃で春を盛りあげてほしい。

(文・井上幸太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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