爆発力で勝ち取ったベスト8!チームの意識を変えて挑んだ岩倉(東京)【前編】
岩倉(東京)といえば、84年春のセンバツでKKコンビと呼ばれた桑田真澄、清原和博(共に元巨人など)を擁するPL学園(大阪)を決勝戦で下して全国優勝。97年夏にも甲子園に出場するなど輝かしい実績を誇っている。今秋の東京大会では、近年、なかなか破れていなかったベスト16の壁を突破して準々決勝まで勝ち上がったが、その新チームについてのお話を伺った。
爆発力をテーマにビックイニングを作れる打線へ
円陣の輪を崩した岩倉の選手たち
主将でキャッチャーの荻野 魁也(2年)をはじめ、エースの宮里 優吾(2年)、セカンドの岡根 秀(2年)とセンターラインに1年夏からの経験者が残った今季の岩倉。それだけに、チームを率いる豊田 浩之監督も「ある程度、高いチーム力を持って、この秋のシーズンに入れる」と感じていたという。
そんななかでチームを強化するうえでのテーマとして掲げたのが「爆発力」だ。
「ここ数年は『どうやって1点を防ぐか。どうやって1点を奪うか』にこだわりを持ってやってきましたが、今夏の修徳戦(2回戦)は初回に四球絡みで3点を奪われてしまうと、そのまま追いつくことができずに敗れてしまいました(3対7)。この試合を通じて、1点を取るための術は持っていても、1イニングに2点、3点と一気に大量点を取る力がないと痛感したので、ビッグイニングを作れるように『爆発力』をキーワードにしたんです」(豊田監督)
コーチの話を聞く岩倉の選手たち
この「爆発力」を手にするために、まずは意識を変えるところから取り組んだ。「これまではケースバッティングを徹底していて、右方向やゴロといった条件を付けて練習をしていました。例えば、一死一塁の場面ならライト方向を狙って打つのがセオリーだと思いますが、無理に右方向へ流そうとして弱い打球になってしまい4-6-3の併殺を喫するのも、思い切り引っ張って6-4-3のダブルプレーになるのも結果としては一緒。それならばと、新チームでは粗さや雑なところには目をつむり、『とにかく強く。そして遠くへ飛ばせ』という指導をして、選手の意識改革を行いました」(豊田監督)。
この改革を選手たちも受け入れており、荻野主将は「これまでと違って自分の100%のスイングができるし、今の考え方のほうが合っている」と歓迎。豊田監督も「ボールが遠くまで飛べば、どのバッターだって嬉しいですから、みんな目の色を変えて練習しています」と話す。
秋季大会で成果を実感
豊田浩之監督
また、夏期休暇中には20試合ほどの練習試合を組み、実際のゲームのなかで強く振っていくことを意識付け。これまでならバントのサインを出していた場面でも強攻策をとるなど、采配をバッティング重視に変えたことで2桁得点を記録する試合も増え、例年に比べて勝率も上がった。
「今チームは元々、パンチ力を持っている世代ですし、グラウンドが狭いこともあって練習試合ではホームランがよく出ました。そんな長打力がある選手につられるように打線全体が打っていたので、選手は手応えを感じて自信を付けたと思います」(豊田監督)。
ところが、秋季大会では一転して打線が不調に陥った。「攻撃が良くなってきたなと思っていたのですが、8月が終わった頃から調子が落ちてきて、選手も『あれ?』という感じだったと思います」(豊田監督)。
八王子戦後の岩倉の選手たち
その後もずっと下降線を辿った打線は一次予選の初戦こそ34得点と大量点を挙げたものの、以降の5試合はすべて4点以内に抑えられるなど苦しんだ。ただ、東京大会1回戦の立志舎戦ではホームラン2本が効果的に出て4対2で勝利。「相手打線よりも安打数は少なかったのですが長打の違いで勝つことができ、これまでやってきた方向性は間違っていなかったと感じました」(豊田監督)。
2回戦の八王子戦ではチーム力が向上していることを確認できた。「昨秋も2回戦で八王子さんと戦ったのですが、その時は9回表に長打を浴びて逆転されたものの、9回裏に相手のミスがあってサヨナラ勝ちをしました。今秋は9回表にこちらが勝ち越し、その裏にエラーが出てピンチを迎えたのですが最後はセンターの好守があって逃げ切り。強豪の八王子を相手に、同じ勝利でも1年前と比べると内容が良くなっていたので自力が付いてきたと思います」(豊田監督)。
前編はここまで。次回は東海大菅生との一戦を振り返りつつ、岩倉が取り組む課題とは何なのか、語ってもらいました。後編もお楽しみに!
(文・大平明)