意識から改善しセンバツで勝利を目指す!国士舘【後編】
秋の東京都を制し、3月23日より開幕する第91回選抜高等学校野球大会に出場する国士舘。前編では新チーム発足時から秋季大会のブロック予選までを永田昌弘監督に振り返ってもらった。
後編では本大会で激突した強豪校との激戦を語っていただきながら優勝までの軌跡。そして明治神宮大会で得られた収穫と反省。最後に選抜に向けての話を語ってもらった。
「長所」を上げられたことが覚醒の口火 秋の東京王者・国士舘(東京)【前編】
投打がかみ合い勝ち上がった秋季大会
東海大菅生との激戦を制して選抜の切符を掴んだ国士舘ナイン
こうして元々、実力があった打力に調子を上げた投手陣がかみ合いトーナメントを勝ち進んでいった国士舘。3回戦では「この大会のポイントだった」という強豪・関東一との対戦となったが「スクイズを空振りしたのですが、走者がアウトにならずに三塁に残り、その直後にタイムリーヒットが出るなどツキがあった」と永田昌弘監督。
松室直樹主将も「谷(幸之助、2年)投手が先発してくるのを予想し、1週間前からバッティングピッチャーを前に出して打撃練習をして速球対策をしていたのですが、初回から連打が出て先制し、追加点も奪えたので自信になりました」と5対1で快勝。その後も「関東一に勝てたので、もしかしたら……と思いましたが、とにかく次の試合だけを考えて、試合前の選手だけのミーティングでは『相手チームの方が実力は上だと思って、油断せずに戦おう』と話していました」という松室主将の言葉で気を引き締めながら勝ち星を並べていった。
そして、決勝では東海大菅生と対戦。好左腕・中村 晃太朗(2年)に対し、永田監督は「初回の立ち上がりが不安定なので、甘く入ってくる変化球を打て」と指示。
すると、狙い通りに1回表の攻撃で黒澤孟朗が先制打。さらに満塁のチャンスから鎌田 州真(1年)が甘いスライダーを捉えて走者一掃の三塁打を放ち、一挙に4得点。投げては白須仁久が6回まで2失点の粘投。残る3イニングは山崎晟弥が1失点に凌いでリードを守り切り、10年ぶり6度目となる優勝を果たした。
「白須は安定感を買って先発させました。決してベストの投球ではありませんでしたが、なんとか相手打線を抑えてくれたと思います。打線は黒澤が大会途中から調子を落としていたのですが、周りがカバーしてくれました。優勝した後は、初めてこのチームを褒めてやりました」と永田監督。選手も「固くならずに、自分たちの野球ができれば勝てるんだ」(松室主将)と自信を深めることができ、実りの多い大会となった。
[page_break:センバツに向け意識を見つめ直す]センバツに向け意識を見つめ直す
選手たちに胴上げをされる永田昌弘監督
しかし、続く明治神宮大会では初戦で札幌大谷(北海道)に3対7で敗戦。先発の白須が2回途中でノックアウトされると二番手の石橋大心も悪い流れを止められず3回までに6点を奪われてしまった。
永田監督は「白須は東京大会で投げていたボールが投げられず、球速も120キロ台しか出なかった。ただ、状態が良くない時でもそれなりの投球ができるような投球術を身につけることがこれからの課題です。打線は初回のチャンスで黒澤が打てなかったのが最後まで響きました。
ただ、大会前日には開会式に参加するなど良い経験が得られました。一度、経験しておけば、次に同じ場面が訪れた時にどのように行動するべきかが分かるはずなので、このように良い経験を積み重ねていきたいです」と収穫と課題を口にした。
現在は永田監督らしい、ピッチャーを中心とした守りの野球に機動力を絡めた緻密な野球を目指して練習を続けている国士舘。ランナー付きのシートノックや、一死一三塁からのダブルスチールに対する守備の連係プレーなどを繰り返して行っているが、時には選手だけを集めさせてプレーの確認をさせている。「教えるのは簡単ですけれど、選手自身に考えさせないといけない。選手に頭を使わせて、体に覚え込ませることが大事」と、練習でも実戦に近い経験をさせることで試合に活かそうとしている。
センバツ旗を受け取った松室直樹主将
そして、出場が確定した今春のセンバツに向けて、この冬の過ごし方は大切になってくるが、投手陣に対しては「どのピッチャーも先発ができるようになってほしいし、中継ぎや抑えでも2イニングくらいは投げられるような対応力を付けさせたい」と永田監督。
攻撃面については「走塁は足の速さだけではないので、隙のない走塁を覚えてほしい」と要求し、「打力を上げるためにスイング数も増やしたいので、100mを10本、50mを10本、30mを10本、それぞれ1本走るごとにスイングを20回させれば、それだけで600スイングになるので、バッティングと走力を絡めた練習で力を付けていきたい」と話した。
また、松室主将は「自分たちは強くないので、センバツに出場できたとしても今のままでは気持ちが浮ついてしまって簡単に負けてしまう。だから、もう一度、練習に対する意識から見つめ直し、東京代表として恥ずかしくない戦いができるように準備しておきたい」と抱負を語った。
かつては「春の国士舘」と名を馳せた強豪が、今春、どのような戦いぶりを見せてくれるか楽しみだ。
(文・大平明)