「新生・沖縄水産」は競争と心の成長で甲子園まで駆け上がる!沖縄水産(沖縄)【後編】
前編では秋の沖縄県覇者・沖縄水産の監督、上原忠氏がいかにして選手たちを指導しているのか、その指導方法や原点に迫った。今回はチームの現在の状況を中心に沖縄水産に迫っていく。
上原流の柔軟な指導方針がチームに変革をもたらす!沖縄水産(沖縄)【前編】
古豪復活でなく、新生・沖縄水産
沖縄水産の練習の様子
上原監督の指導に柔軟性と深みがあるのは、中学生への指導経験が基となっていることを頭に入れた上で、話を沖縄水産に戻したい。
沖縄水産といえば、「古豪復活」というワードが浮かぶかもしれない。ある一面では確かその通りである。歴史をたどると沖縄水産には故・栽 弘義監督というカリスマ性のある神様のような指導者がいた。その頃の沖縄水産が復活という意味では、間違えていない。
ただ、あえて「新生・沖縄水産」と言うワードを使いたい。
それはまさに上原監督の柔軟性にある。上原監督は過去の指導方法や価値観に囚われていない。今の沖縄水産をみて、最善のやり方を考える柔軟性がある。この点において、まったく新しい沖縄水産を作っているからである。
そんな沖縄水産にふさわしいワードは、「古豪復活」でなく、「新生・沖縄水産」に違いない。
[page_break:沖縄水産の現在地]沖縄水産の現在地
上原一帆投手(左)と國吉吹投手(左)のWエース
「中部商と糸満では、結構機動力をつかって野球をやっていたんですけども、秋の大会はそこまで至ってなくて実は、ぶっつけ本番、突貫工事みたいな感じでした。たくさんのことは欲張らずにシンプルにバッテリーを中心にオーソドックスに今持っている力で守れて、しっかり送って、バッターの力でタイムリーで返すという基本に忠実な野球です」
沖縄の頂点まで上り詰めた秋の大会までのチームをこのように評した。そして、夏に向けて上原監督は、「投手陣の競争」と「各選手の心の成長」をポイントに上げた。
「これから夏に向けて二人のエース、上原一帆・國吉吹が、中心になって、それに続くピッチャーが追い越そうとして頑張っていく、その競争になればと思っています」
「意欲的に強い気持ちで黙々と野球に取り組むという形が身についていけば、[stadium]甲子園[/stadium]に近づける、化ける可能性があると思います 。あとは心だと思います」
上原監督が、夏までに求めるのは、もっと多くの戦術の引き出しを作り安定したチームづくりだ。そのためには、投手陣のレベルアップと各選手の心の成長が必要不可欠の要素である。
100年という区切りを終えた高校野球、次の1世紀に向かった高校野球元年に、新生・沖縄水産がどのような船出を見せるのか?上原監督の考える夏までの課題は明確だ。2019年の沖縄水産から目が離せない。
(文・田中 実)