第529回  ハングリー精神でさらなるチーム強化目指す 昭和第一学園(東京)【前編】2018年12月27日

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【目次】
[1]環境ハンデに負けずハングリー精神で戦う
[2]投手軸に・守り勝つチーム作り

 今秋の東京都大会は国士舘が10年ぶりの優勝を果たした。その国士舘が、決勝戦東海大菅生戦と共に苦戦したのが二回戦昭和一学園だった。高校野球としてはまだあまり知られていない存在かもしれないが、近年着実に力をつけてきており、強豪校にとっても油断ならない存在となっている。
 高校時代には甲子園出場経験もあり、東京六大学、社会人野球と高いレベルの野球を経験してきている。社会人のシダックス時代には元ヤクルト、楽天などを率いた名将野村克也元監督の薫陶も受けている。そうした野球が徐々に選手たちに浸透してきた成果でもあろう。そんな昭和一学園を訪ねてみた。

環境ハンデに負けずハングリー精神で戦う



昭和第一学園野球部

 東京都の西、多摩地区の大都市立川市。そのメイン繁華街となる立川駅の北口からバスで10分ほど、あるいは多摩都市モノレールで二駅の立飛駅から徒歩で10分ほどの住宅街の一角に、昭和一学園の校舎がある。そして、校舎に隣接し2018年2月に張り替えられたばかりだという人工芝が敷き詰められたグラウンドがある。左翼は70m弱で左中間の膨らみはないが中堅は120m、右翼線は96mとることが出来る。

 とは言え、グラウンドそのものは野球部専用とはなっていない。通常は授業が終了して、15時30分から練習開始となるが、平日は最初の2時間は全体の4分の1面くらいしか使用出来ない。つまり、ダイヤモンドの内野部分のみが使用可能ということになる。従ってその時間はマシンを使ってのバント練習や倉庫前での筋力トレーニング、使用可能なグラウンドの隙間を見つけてのティーバッティングや素振りがメインとなってしまう。

 そして、17時30分からは火曜と金曜が半面、水曜と木曜は全面使用できるので、その時に走者をつけてのシートノックや連携プレーなどを、完全下校となる20時まで、みっちりやるという方針だ。

 こうした必ずしも恵まれているというわけではない環境だ。それでも、2014年に就任した田中善則監督は、「都内では、校舎に隣接してグララウンドがあるということだけでも、授業が終了してすぐに、移動時間なしで練習に取り組めるのはいい方」と、環境に対しては嘆くというよりも、積極的に受け入れていこうという姿勢だ。

 田中監督は1984年に法政一(現法政大高)で春夏の甲子園を経験し法政大を経て、その後は社会人野球の名門たくぎんに進んだ。しかし、時代の流れでたくぎん野球部が休部したことで、新たにスタートを切ったシダックスに移籍した。後発のシダックスは企業チームで都市対抗本大会出場を目指してはいたがグラウンドは都内に専用球場を持っていなかった。だから、少年野球などが使用している飛田給の関東村グラウンドを間借りしながら練習に取り組んできていた。それでも、並み居る強豪に伍してきたという自負もある。

 「専用球場を有している、大きな企業チームのグラウンドでオープン戦などをさせていただいた時には、こういう環境のところに負けないぞという意識は、逆にむしろ芽生えていった」という。だから現在も選手たちには、この環境のハンデをバネにしていくことを説いている。

 「遠征などで、専用球場のある所へ窺わせていただいた時は、『ああ、いいグラウンドだなぁ。こんなところでやれたらいいなぁ』と思うだけではなくて、こういう環境でやれているところに、自分たちは負けてはいけない、こういう環境の恵まれているところに勝って行かなくては、甲子園へは行けないんだ」そんな意識を強く持つことで、選手たちのハングリー精神を刺激している。

 「すべてに恵まれているというのではなく、何かが足りない方が、むしろ向上心を刺激していくという意味ではちょうどいいんですよ」と、シダックス時代に自身も体感したことをベースとした考え方でもある。今、与えられている環境で精いっぱい努力していこうという姿勢を浸透させている。

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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