打力に優れたチームで3度目の全国への切符を掴む!京都翔英(京都)【前編】
2013年春と2016年夏に甲子園に出場している京都翔英。近年では石原彪(楽天)、山本祐大(DeNA)といったプロ野球選手も輩出しており、着々と強豪校としての地位を築きつつある。
2度の甲子園出場も甲子園での勝利はまだない。前編の今回は悲願の甲子園初勝利を目指す同校の今秋の歩みを見ていく。
岡本翼を中心に新チーム発足
ランニングの様子
京都翔英のグラウンドは学校から車で15分ほど離れた宇治市の高台にあり、両翼が95m、中堅が122mと十分な広さを誇っている。選手たちは授業を終えてからバスでグラウンドまで移動する。現在の部員は58名だが、来春に新入部員が加わると100名前後になる予定だという。部員増に伴って今後は隣にあるサブグラウンドも活用していく方針だ。
旧チームの京都翔英は秋2位、春3位と好成績を残していたが、夏の大会は4回戦で塔南に0対1で敗戦。その後、部内による指導者の配置転換で山下勝弘監督が就任。センバツ出場を目指して主将の岡本翼(2年)を中心に新チームがスタートした。
岡本は「真面目で誰よりも熱い選手。チームのために頑張れる」という理由から指導陣の話し合いで主将に指名された。岡本はこのチームの特徴を「投手を中心に長打よりヒットで繋いで点を取っていくチーム」と分析する。
新チームでは最速145㎞の遠藤慎也(2年)を筆頭に今井大志(2年)、岩井俊介(2年)と投手陣の主力が残っていた。野手でも昨秋から中軸を打っていた山本仁(2年)や鈴木遼(2年)に「野球を一番知っている」と山下監督が評価する遊撃手の梧桐大真(2年)などがおり、戦力的には充実している。
センバツ出場のためにも「京都大会を圧倒的に勝とう」と意気込んでいた山下監督。夏休みは実践力を付けるために実践練習を多く取り入れた。そうして練習を重ねていく中で打力が弱いという弱点が目についた。
打撃中心の練習、理想のチーム作りへ
山下勝弘監督
バッテリーに自信があるだけに山下監督は3点以上取ることを課題としていた。「どんなに良い投手でも3点取られるのは仕方がない」と山下監督は考えているからだ。しかし、秋季大会でその課題を克服することができなかった。
2次戦準々決勝までの6試合を全て1失点以内に抑えていた一方で、夏に敗れた塔南に1次戦の決勝でまたしても0対1で敗戦。敗者復活戦で勝利し、2次戦へ進むことはできたが、改めて打力のなさを痛感した
準々決勝の京都外大西戦では2回表に遠藤の本塁打で先制点を挙げたが、その裏に集中打を浴びて3失点。何とか打線の力で反撃したかったが、4安打2得点に抑え込まれて2対3で敗れ、センバツ出場の夢が断たれた。
この試合では打撃だけでなく、守備面でも悔いが残る試合だった。得点力向上のために打力重視でオーダーを組んだが、そのために守備の隙を突かれてしまい、2回裏の失点に繋がった。その結果を踏まえて「センバツで戦うにはピッチャーと守備だった」と山下監督は振り返る。
この負けをきっかけに山下監督は「何とか打ち勝ちたい」と秋を終えてから打撃中心の練習メニューを組むことを決意。この2ヶ月間はオフの月曜日を除いた平日4日間のうち、3日は打撃中心の内容となっている。
京都外大西戦でのベンチ前の様子
山下監督が「ああいうチームを作りたい」と理想に掲げるチームがある。それが夏の甲子園に初出場した2016年度の京都翔英だ。当時のチームは石原や山本を中心に打力に優れたチームだった。夏の京都大会では6試合で60得点を奪う圧勝ぶりを見せている。充実した投手陣に石原世代並みの打力が備われば全国でも通用するチームとなるだろう。
打線のキーマンとなりそうなのが、1年秋から3番を打つ山本だ。山本祐大の弟である仁の身体能力は兄以上と指導陣も能力の高さを認める。これまでは思い通りの結果が出ないと、落ち込んでしまうことが多かったが、「秋が終わってから成長した」(山下監督)と主力としての自覚が芽生えてきた。彼が3番として安定した打撃を見せれば得点力も上がってくるはずだ。
秋季大会後の練習試合では創志学園の西純矢(2年)や近江の林優樹(2年)といった高校球界を代表する投手と対戦した。創志学園には3対4で惜しくも敗戦、近江とは遠藤と林の投げ合いで0対0の引き分けだったという。彼らと対峙することで「少しずつ自信は付けてきたかなと思います。振る力も付いてきたので、最近の紅白戦でも長打が出てきました」と山下監督も手応えを感じている。
前編はここまで。後編ではこのオフシーズンにどういった意識でトレーニングに励んでいるのか。また秋の近畿大会を制した龍谷大平安から学んだもの。そして甲子園にどうしても行きたい隠された想いに迫ります。お楽しみ!
(文・写真=馬場 遼)