目次

[1]恩師が自分にしてくれたことを生徒にも実践
[2]全員力と人間としての「バランス」を重視

 10月8日、小野路球場でそれは起きた。
 今夏の甲子園でベスト4進出。強打で知られる全国屈指の強豪・日大三が東京都大会1回戦で敗れた(スコアは5対7)。

 日大三を破る大金星を挙げたのが、2009年創部の目白研心である。日大三が新鋭チームに敗れた衝撃は大きく、そのニュースは全国の高校野球ファンの間で瞬く間に広がった。当の目白研心の選手たちもこの大金星に驚きを隠せない様子だった。6打点の活躍を見せ、勝利の立役者となったキャッチャーの山田 瑞記は「勝った後は、本当なのか?という感じでした。実感が薄かったです」と当時を振り返る。

 この試合を指揮した鈴木淳史監督は冷静にこの試合を振り返った。
 「たまたま今回のような結果が出ただけです。今まで10年の積み重ねがあってこういう結果だと思っているので、先輩方へ感謝をしなさいと選手に言いました」と、あくまで創部10年間、地道に続けてきたことの積み重ねだという姿勢を崩さない。

 さて、創部わずか10年の若いチームが超名門を倒せたのはなぜなのか。そして地道に積み上げてきた土台とは何なのか。

恩師が自分にしてくれたことを生徒にも実践


 2011年夏に迎えた初めての公式戦。まだ当時は他部活から助っ人を借りての出場だった。翌2012年、1年生9名が入部し、12人となり単独で公式戦に出場できることに、「高校野球が本当に始まる」と鈴木監督は気持ちを高めていた。

 それでも人数の多さに関わらず、鈴木監督が10年間ぶらさなかった方針がある。「人間がやることなのでどんなプレーをするのかは、気持ちで全部決まる」という持論の下、人を育てることを重視してきた。

 鈴木監督は野球エリートの道を辿っている。新潟明訓では甲子園出場経験を持ち、中央大学では読売ジャイアンツの亀井善行と共にプレー。大学卒業後は日本航空でコーチ経験を積んだのち、目白研心の監督に就任。これまでのキャリアで培ってきた技術を惜しみなく伝えるのではとイメージしてしまうが、技術論については細かく言わない。
 むしろ人として大事な気遣いについては選手に厳しく指導する。取材日も監督と筆者が話している近くで集合をかけた選手たちに対して、厳しく指導をしていた。

 

 ここに鈴木監督のこだわりがあった。
 「上手になりたいと思うのは高校球児全員が同じだと思うので、選手は上手くなるための方法を探っていくはずです。上手くなろうとしている、楽しくやっているときこそ、手助けや邪魔をしないようにしています。」

 選手たちの姿勢を大事にする鈴木監督。この指導方針にこそ自身の経験が活かされていた。
 「自分の現役時代がそうだからこそ行き着いたと思いますが、それぞれのいいところを今の選手をつぶさず、削らずやることが力を一番発揮できると思っています。」

 監督自身は高校時代、あまり監督の指示を聞かなかったと振り返るが、当時の佐藤和也監督からは強制されるどころか活かしてもらえた。そんな環境の元、甲子園出場を果たし、本塁打を放つなど成果を発揮した。
 こうしたところに高校野球の面白さを感じたからこそ、鈴木監督は恩師が自分にしてくれたことを今の教え子たちにも実践している。

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